146 / 323
第5章 ストラトス帝国編
隠された思惑
しおりを挟む「セナ様!」
戦いが終わりリネアとジルネイの兵により帝国の兵士、神皇国の神官騎士たちが拘束、連行され死者たちも運び出される中、セナを呼ぶ声が聞こえセナが振り返った。
「エリスさん、みんなも無事なようでよかった!」
声のほうを見たセナが柔らかな満面の笑みでエリス達を迎えた。
「セナ様もお怪我がなくよかったです」
「疲れましたぁ~」
「し…死ねます…」
「マインさん ありがとうございます。コニーさん、メディーもお疲れさまです」
それぞれがセナへ声をかけセナが笑顔で答えていた。
「セナ様…今回は私のせいで…」
「エリスさん?怪我がなくて良かったです。それに悪いのはエリスさんじゃないですよ?」
神妙な顔で謝罪を口にしようとしたエリスを遮りセナが優しい目で顔を横に振り言った。
「セナぁ!!」
「ん?アリ…ふげっぐふぅ!」
神妙な雰囲気をぶち壊すかのように、セナの名をさけびながらアリアが強力なタックルをして、セナの身体がコの字に吹っ飛び変な息の吐き方をして倒れこんだ。
「セナ様!?」
倒れこんだセナへヤオとタオが焦りながら近寄った。
「んー!セナ!本当に助けに来てくれたのね!」
「……おっふぅ…」
馬乗りになり感極まりセナの胸にぐりぐりと顔をうずめた後、目に感動の涙をうかべ満面の笑みでセナへ思いをつたえるアリアに対しセナは未だに悶絶していた。
「アリア!落ち着いて!セナ様が!セナ様がぁ!」
「歌姫様?セナ様の口から出てはいけない物がでて天へ召されそうになっておりますよ?」
エリスが焦りながらアリアの肩をつかみとめ、アリアと一緒に会場へとおりてきたであろうリレイが苦笑気味にいった。
「へ?えぇっ!?セナ?大丈夫!?セナぁー!!」
「へぐぅっ!?」
周りからの声に我に返ったアリアがセナをみると、青白い顔をしたセナが力なく横たわっていて、焦ったアリアはさらにきつくセナに抱き着いた。
「えぇい!我が主から離れろ!小娘がっ!」
「うふっうふふふふ…おいたがすぎますわね…お仕置きが必要なのかしら」
めずらしく怒りをあらわにしたヤオと、どす黒いオーラを身にまとったタオがアリアに威圧を放ちながら言った。
「ひぃ!」
二人を見たアリアが短い悲鳴をあげセナから離れ直立不動で固まった。
「セナ様ぁ~ん 大丈夫ですかぁ~?」
「ゲホゲホゲホ…ん?メディー?大丈夫だよ…ありがとう」
アリアが離れるとすかさずメディーがセナの腕に抱き着き胸に顔をよせ、見上げる様に上目遣いで、甘えるような声をかけ、意識と呼吸を持ち直したセナと目が合うとセナは、にっこり優しそうな笑顔をメディーに向けた。
「あざといっ!メディー!あざといよっ!」
「ふっふっふ、これもジルネイでの修行のせいかっ…いたっ!?」
「そんなこと教えてません!」
コニーが驚愕の表情を浮かべ恐れおののいているなか、ドヤ顔を決めたメディーにため息交じりにリレイが拳骨を落とした。
「はっはっは…にぎやかだな…」
「うふふっほんとですわね」
「ブルルル」
「ゲオルグ陛下まだ危険ですよ!」
王妃を支える様に迅風にまたがったゲオルグが近寄り苦笑気味に声をかけ、それをみたリレイが驚いた。
「さっさと歩け」
「ぐっ!糞がっ!」
「あははははっ!素が出すぎだよ?もはや一国の宰相たるものの言い草じゃないね」
そこへサイとアディオンの後ろを兵士に引っ張られながらストラトス帝国宰相アドルフ、エターニャ神皇国教皇アガンテ、エターニャの歌姫フローディアが拘束されながら歩いてきた。
「おのれ…ゲオルグ!まだ我が国には戦力がある!貴様ら無事に国境を越えれると思うな!」
「あぁ…ごめんごめん。今頃連絡を受け取ったランスロット領が動き出してる頃だと思うから…あはっ」
「あなたたちが動いた時点でアディオンの小型飛竜で知らせを飛ばしてあるわ?」
「どこまでも邪魔をしおってこの糞どもがぁっ!」
後ろ手に縛られ膝まづかされてもなお、ゲオルグを睨みつけ言ったアドルフの言葉に、アディオンとリレイが涼しい顔で返すとアドルフは二人を呪い殺しそうな目で睨みつけ罵倒した。
「兄上は今どこにおりますの!?」
「はっ!裏切り者の尻軽女に言うと思うかっ!この売女がっ!」
「なっ!貴様!」
アレストラが迅風の上から興奮気味に尋ねるとアドルフは鼻で笑い飛ばし罵倒した、それを聞いたゲオルグが剣を抜きまさに今にも切りかかろうとした。
「お待ちくだされ…リネア国王様」
「ん!?なんだっ!」
「我らにお任せを…」
「必ずや口を割らせて見せますわ」
剣を振り上げたゲオルグにヤオとタオが深々と一礼し進言するとゲオルグは深く深呼吸をし剣を収めた。
「わかった…ドラゴニアの双爪の力みせてもらおう」
「はっ、おまかせあれ」
「我が主の顔に泥を塗るような真似はいたしませぬ」
落ち着きを取り戻したゲオルグが品定めするように見ながらいうとヤオとタオは深々と一礼したのちセナへと向きを変えた。
「ヤオさんタオさん よろしくお願いします」
「御意…お任せくださいませ…」
「お任せくださいセナ様?それよりも…うふふふふっ…小娘ども…そろそろ我が主より離れねば…そなたたちにも災いが飛び火するやもしれませんわ…よ?…うふふふっ」
「ひぃっ!」
「離れましたっ!!」
セナが二人に頭を下げると二人は柔らかな笑顔を浮かべたのち、ヤオは気を引き締めた目をし、タオは未だセナの腕をとりあうアリア、メディー、コニーを右手で口元を隠し冷ややかに見つめながら笑いを浮かべると、見られた三人は、ぱっとセナから離れ直立不動になった。
「はっ!何をされようが俺は何も言わんぞ!」
「ふっ…そなたは何もしなくてもよい…」
3人がセナから離れるのを見届け満足げにうなずいたヤオとタオがアドルフの前に立つとアドルフは二人を睨みつけたが、二人は意に返さずアドルフへ両手をむけた。
ボトボトボト
「ひぃっ!蛇!?」
アドルフに向けられた二人の手から黒と白の小さな蛇が無数に湧き出る様にでて地面に落ちると、近くで見ていたメディーが顔を真っ青にし悲鳴をあげた。
「くっ!このようなものでっ!…やっ!やめろぉーー!!」
無限かのように湧き出す蛇にアドルフが強がりを言ったが蛇たちはアドルフの身体を這い上がり服へ入り込んだりしはじめ、しまいに耳の穴、口など体中の侵入できそうな穴へとどんどん体をくねらせながら入っていった。
「うっぷ…もうだめ…」
「わたし…も…」
その異様な光景を目にしたメディーとコニーが口を押さえ顔を蒼くし倒れてしまい、同じように顔を蒼くしながらもなんとか耐えていたエリスとマインに支えられ、距離をとった。
「あが…ががががが…」
「よいようだな」
「えぇ…では、皇帝様はいずこにおられるのですか?」
いまだ無数の蛇に体を覆われ顔だけみえる程度になり、白目をむきよだれを垂らしたアドルフをみたヤオが頃合いだというと、タオが質問をした。
「あがが…城の地下の…秘密の牢の中…あが…」
タオの質問に操られているかのように無感情にアドルフが答え始めた。
「その詳しい場所を」
「地下牢の最奥の右壁に…封印された秘密通路…あがっ!」
「急いで兵を編成し向え!」
質問に答えたアドルフの言葉をきいたゲオルグが兵に命令した。
「わたくしも!!」
「ダメだ!危険すぎる!」
「しかし!お兄様がっ!」
ゲオルグにアレストラが興奮し焦ったようにいうががっしり身体をおさえられ引き留められた。
「サイ!エイケンと!」
「ちっ…しかたない…よかろう」
「リレイ様!?」
ゲオルグとアレストラのやり取りを見たリレイがサイを見ながらいうとサイは嫌そうな顔をしながらも城の方へ走り出した。
「サイとエイケンに先行させます。アレストラ様は危険が排除されたあとリネアの兵に護衛してもらい向かってください」
「あぁ~…リレイ様!ありがとうございます!!」
「この者どもを連れリネア王もリレイ殿も城へ向かう方がよろしいかと」
「えぇそうね…我らも向かいましょう」
「あぁ!行こう!」
リレイの言葉に感極まったアレストラに困ったような顔をしてみていたゲオルグへヤオが進言するとリレイとともに気合を入れた。
「それでは…このままこの者も移動させますわ」
「ちょっと待ってください!僕も訪ねていいですか?」
「セナ様?なにかお気になるようなことでも?」
「はい、いいですか?」
「もちろん構いませんわ」
タオが蛇をつかいアドルフを動かそうとしたのをセナが声をかけとめた。そしてアドルフに近づき話しかけた。
「あの…あなたの後ろ立てをした方は?」
「え!?」
「あがが…シ…シルティア神皇…国…あがぁ…」
「なにっ!?」
セナの質問にリレイをはじめ全員が驚きの声をあげたがアドルフの答えを聞き、ゲオルグをはじめとした者たちがさらに驚愕の表情をうかべた。
「目的は?」
「大陸…統一…ドラニスタの支配…魔族大陸への進行…」
「なんと…そのようなことを」
セナの再度の質問に途切れ途切れではあるが、しっかりと聞き取れる様にアドルフが答え、聞いた者たちは全員言葉をなくした。
「他に隠していることはありますか?」
「決戦…はじまる…リネア…西…シュバイン…南…ブレイダー…侵略…ジルネイ…拠点…」
「え!?」
セナは自身の質問の答えに驚きの声をあげた。
「どういうことだっ!?」
「……そんなこと……」
「多分ですが…決戦がはじまると同時に…リネアの西にあるシュバイン領がブレイダー領を攻め、我がジルネイ共和国を攻める拠点の一つにしようとしていたということかと…」
ゲオルグが驚き尋ねるがセナは言葉少なにショックをうけていた、かわりにリレイが推測した話を聞かせた。
「ギルスは王都の守りを任せてある!対応が遅れてしまうぞ!おい!詳細を聞きだしギルスへ知らせろ!!我々はレオ皇帝の場へ急ぐぞ!決着を早くつけねばならん!!」
ゲオルグが声を荒らげ言うとヤオとタオが動いた。
「くそっ!ここまでか!せめて 貴様だけでも!!」
その時、リネア兵の格好をした男が剣を抜きゲオルグへと走り出した。
「なっ!?」
「きゃぁ!」
スチャ!バン!
カキィーーン
「なに?!」
「カイン!」
驚くゲオルグと悲鳴をあげたアレストラだったが、二人を乗せた迅風が魔力をたぎらせ、さらにセナが刀を抜き間に立った。しかし、それより先に振り下ろされた剣を受けたのはカインだった。
「セナ…いったはずだぜ?こいつの相手は俺がする…なぁ?ガフト」
「ちっ!くたばりぞこないがっ!」
振り返ることなくカインが不敵な笑いを浮かべガフトの剣をはじき返した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6,935
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる