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第6章 エターニャ神皇国編

王国襲来

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 「のわっ!?」

 「なんだっ!?」

 リネア王国の王都リストニアの中央にある広場に突如現れた人影たちに街の人々が驚き騒ぎになった頃。

 王都ブレイダー邸では…

 「んっ!?なにが来た!?」

 「どうなさいましたか?」

 「王国の危機だ!今すぐガルハルトに出兵の準備をさせろっ!城にも使いを出せ!」

 「っ!?かしこまりました!!」

 王都冒険者ギルドでは…

 「なんだっ!?なにが来やがった!?おい!レイファ!!」

 「はい。なんですか?いつにもましてそんな禿散らかして暑苦しく」

 「うっさいわ!…そんなことより腕利きの冒険者たちを招集しろ…至急だ」

 「なにかあったんですか?」

 「これから起きるかもしれねぇ…下手したらリストニアが全滅だ…いそげ」

 「は、はい!」

 王城では…

 「サーシェス!何が来た!?」

 「わかりませんが…とんでもなさ過ぎて…この国の終わりしか見えないほどの何かなのは確かですね」

 「王の元へ急ごう」

 何かを察知した者達が絶望を胸にあわただしく動き始めた。

 「街中に急にでるんじゃねぇよ!みろよ!騒動が起こっちまったじゃねぇか」

 「小姑みたいにいちいちうるさいわね、めんどくさいからこれでいいのよ」

 広場に降り立った人影の1つエイケンが周りを見渡し怪我人がいないのを確認すると安堵の息をもらしたが周りの騒動を見て隣に立つエイコへ勢いよく苦言を呈した。

 「本当に一瞬でついてしまったわね」

 「ええ、すごいです…」

 転移をはじめて体験したエリスやコニーメディーが見慣れたリストニアの光景を驚きながらキョロキョロみた。

 「うん。相変わらず、活気のあるいい街だね。エイコあそこの店は雰囲気がよさそうだ、どうだい?久しぶりに外でお茶でも飲まないかい?」

 「あら、ホントね。誰かくるまでそうしましょうか」

 騒動の中心にいながらもいつも通り朗らかに微笑んだアキラからの提案にエイコは笑顔でアキラの腕に自身の腕をからませ仲良さげに喫茶店のような店のオープンテラスへと向かった。

 「おい!自由すぎんだろっ!…はぁ~エリスはギルドにメディーと迅風はブレイダーに知らせにいけ!王城からきたやつには俺が対応する!頼んだぞ!!」

 「は?はい!」

 「行きましょう!迅風!!」

 悠々と歩くエイコたちに深いため息をついたエイケンが指示を出すと我に返ったそれぞれが動きはじめた。

 「エイケン君、アリアちゃん。一緒にどうだい?」

 「エイケン!財布のあんたが来ないでどうするのよ!早く来なさいよ!!」

 「人のきも知らねぇで…このやろう!!いくぞアリア!!」

 「え?え?え?」


 朗らかに手を振るアキラと、どんくさいやつを見るような目でみてくるエイコに怒り心頭なエイケンがアリアの手を引き二人が待つ店へと向かった。

 「お、おい…いまのセナ様の馬だよな…」

 「あ、ああ…んであれって歌姫様だわ…」

 やりとりをあっけにとられていた街の人々が迅風やアリアを見て混乱し始めた。

 「あっ、驚かせてしまってごめんなさい!ちょっと用事があって寄っただけなので…ほんとにごめんなさい!」

 エイケンに手をひかれながら町の人々の困惑にきづいたアリアが少し恥ずかしそうに困った顔をして頭をさげると、街の人々はアリアの言葉を信じ一応の納得をするといつものリストニアへと徐々に戻っていった。

 「アリアすまねぇな」

 「いえ…」

 騒ぎを納めたアリアにエイケンが申し訳なさそうに声をかけ二人も席に着いた。

 「いらっしゃいませ!ご注文…う、歌姫様!?」

 「あ、どうもこんにちわ」

 外の騒動を気にしながらも注文をとりにでてきた店員がアリアをみて驚きの声をあげた。

 「よ、ようこそ!当店へ!!お代は結構ですのでお好きなものをお頼みください!!」

 「いえ!そういうわけには」

 嬉しそうにいう店員の言葉にアリアが恐縮した。

 「ラッキーじゃない、人の好意は素直に受け取るものよ?」

 「おめぇにいってんじゃねぇよ」

 頬杖を突きながらメニューをみていたエイコがいうと、すかさずエイケンがツッコミをいれた。

 「あの…歌姫様、失礼ですがこちらの方々は…あれ?」

 「え?どうしたんですか?」

 「いえ、お二方ともどこかセナ様に…」

 「お?わかっちまうかぁ」

 エイコやアキラ、エイケンを見た店員が考え込むとエイケンが少し嬉しそうに答えた。

 「はい。なんとなくですが、はどことなくセナ様に雰囲気が似てらっしゃるかと…もしかしてセナ様のご関係者様ですか?」

 「俺じゃねぇのかよ!」

 エイケンの言葉に店員がエイコとアキラをみながら答えると叔父としてのプライドからかエイケンが勢いよく立ち上がった。

 「す!すいません!!」

 エイケンのあまりの剣幕に何か気に障ったことをいったのかと店員が蒼い顔をして謝罪をした。

 「気にしないで?僕たちはセナ君の保護者みたいなものだよ」

 「え!?そんなすごい方々…」

 「ふふっ。あなた中々人を見る目があるわね。この店気に入ったわ」

 「え?あ?え?ありがとう…ございます…」

 「どうしたんですか?」

 微笑んだアキラとエイコを呆けた様にみながら我に返り店員が礼をいうのを不思議に思ったアリアが声をかけた。

 「いやぁ…お二人を見てセナ様のに納得しちゃいまして…って!注文も取らずもうしわけありません!」

 営業的にではなく本心からそう思ってると伝わる店員の言葉と表情を見てアキラとエイコは嬉しそうに笑顔を浮かべた。

 「ふふっ、ありがとう。じゃあ、この店のおすすめはなにかな?」

 「はい!セナ様がお戻りになりご来店いただくと必ず注文していただく、甘さたっぷりフルーツの焼き菓子です!」

 「セナは甘党だからなぁ」

 アキラの問いに店員が嬉しそうに胸を張りお勧めの品をいうと、アリアは幸せそうにスィーツをたべているセナを思い出し笑顔でつぶやいた。

 「おお!いいねぇ!僕も甘いものには目がないんだ。ではそれを…うーん…」

 「どうなさいましたか?」

 「残念ながら、どうやら時間切れのようだ。注文もせず長いだけしてしまってすまないね」

 「いえ!セナ様のご関係者様とお話しできて光栄でした!またお時間が許す際、ぜひご来店ください!」

 注文しようとしたアキラの目に大勢の甲冑姿の兵が映り、残念そうに店員に言った。

 「失礼する!」

 店員が両手をぶんぶんとふり、申し訳なさそうにしてるアキラに言葉をかけていると、後ろから甲冑姿の兵が声をかけてきた。

 「はい?ひぃ!?き、騎士様!?と、当店になにようでございますかっ!?」

 店員が振り返ると数十人の騎士が目に入り、恐怖から腰をぬかししりもちをついた。

 「驚かせてしまって申し訳ありません。そちらの方々はのため出迎えにきただけですのでご安心ください」

 「あ、ありがとうございます…」

 右手を差し出し申し訳なさそうに言った騎士の手を握り店員が立ち上がった。

 「国王は?」

 「おる」

 遠巻きにみる街の人々の中心で騎士たち守られるように囲われていた中心から白馬に乗った国王ゲオルグが現れ馬からおりた。

 「あら、自ら足を運ぶなんて感心ね」

 「こなければここが更地になりかねんからな」

 「ふん。わかってるじゃないの、それで?そっちの答えをききにきたんだけど?」

 「国王様、ひとまず城へ」

 ゲオルグにエイコたちを国賓ときき詳しい事情をしらない騎士が場所を変える様に進言した。

 「めんどくさいからいいわ」

 「ああ、余も民に聞かれて困ることなどなにもない」

 騎士の進言を二人が制した。

 「それで?」

 「我が国はなにも変わらん」

 「はぁ?」

 話を促したエイコがゲオルグの答えを聞き額に青筋を浮かべた。

 「我が国はセナ殿を英雄と認めた際。政治利用をさせず、国の危機に際しての参加の可否をセナ殿に委ね、冒険者としての活動並びに国内外の旅の自由を認めておる。そのことに変わりはないといっておる」

 「…それをあの状態のセナをみて信じろっていうの?」

 信念をともした瞳で言い切ったゲオルグに不機嫌そうなエイコが底冷えするような声で尋ねた。

 「失礼ながら、責任を持つことになっている」

 どちらもゆずらぬ険悪な雰囲気を割って入るように声が聞こえ、そこにはガルハルトを引き連れたギルスとエミルがいた。

 「ギルス!」

 「久しいなエイケン殿」

 声の主をみたエイケンが声をかけるとギルスは笑顔をみせ手を上げた。

 「このような場で不躾なことをし申し訳ありません」

 「かまわないわ。それで?何しに来たの王国の剣ブレイダー

 エミルが膝をつきエイコに謝罪するがエイコは興味なさそうに用件を促した。

 「不躾ついでに…お尋ねさせてくださいませ…セナ様のご容態は…」

 「ああ、エミル安心しろ。セナは完全回復してる、大事をとって魔大陸でちっと療養中だ」

 頭を下げ外聞も気にせずエミルが必死にセナの様子を尋ねるとエイケンが安心させるように笑顔で答えた。

 「まことにございますか!エイケン様!!」

 「おう!ぴんぴんしてるぜ!」

 「おお!!」

 「あぁ…よかった…セナ様…」

 無事という言葉を聞き顔をあげたエミルにさらにエイケンがいうと、ブレイダーから歓喜の声があがりエミルはその場で大粒の涙をながし、ギルスは涙目になりながら優しい笑顔をうかべそっとエミルの背中をさすった。

 「おいおい…ギルス…どんだけ連れてきてんだよ」

 ブレイダー側から大勢の歓喜の声やすすり泣く声が聞こえエイケンが呆れた様にギルスに尋ねた。

 「全員だ」

 「はぁ?」

 「王都ブレイダー邸すべての者達だ」

 信じられないと聞き直したエイケンにギルスも苦笑いを浮かべ答えた。

 「なにやってんだ?屋敷が空になるじゃねぇか」

 「仕方あるまい、セナ殿の一大事だと伝わるとこの者達はお咎めも無視して勝手についてきてしまったのだから」

 呆れたエイケンに嬉しそうにギルスが答えた。

 「それはそうですよ!セナ様の事なんですから!」

 「ブルルル」

 「メディー…おめぇどんな伝え方したんだよ」

 迅風に跨ったメディーが現れいうと、人選をミスったかとエイケンが頭を抱えた。

 「エイケン様。セナ様はの家族なんですよ?皆家族の安否を気にするのは当然ですよ!」

 「ああ、そうだな!」

 「ええ、そうねメディー」

 メディーの言葉にギルスとエミルは笑顔で答え、後ろに控えている全てのブレイダー家に仕える者達も頷いていた。

 「我々ブレイダーはセナ殿が英雄だなんだだの肩書など、本当はどうでもいいのだ。セナ殿が自由を謳歌し、帰ってきた際はあの朗らかな笑顔をうかべ楽しそうに土産話を聞かせてくれるだけでいい、我々の家族だからな!」

 ギルスが胸を張り笑顔で言い切ると、すべてのブレイダーも笑顔を浮かべうなずいた。

 「セナ君は随分と愛されているようだね」

 「はい。セナはブレイダーだけじゃなくリストニアすべての人に愛されてますよ!」

 アキラが嬉しそうにいうと、アリアは笑顔で声大きく答えると、話の内容がわからない街の人々もセナになにかあったのかとソワソワ話に聞き耳を立て、アリアの言葉をきくとセナのことを一人一人が思いだし笑顔をうかべた。

 「魔王殿おわかりか?」

 「なにがよ」

 町の人々のようすをみたゲオルグがエイコにたずねた。

 「セナ殿は余が認めたから英雄なのではない。セナ殿が英雄だから余が認めたのだ。それがリネア王国の英雄だ」

 「おー!!国王様万歳!!リネア王国万歳!!」

 ゲオルグの発言を聞いた民衆が感動し拳をふりあげ歓喜の声をあげた。

 「エイコ」

 「わかってるわよ!」

 民衆やゲオルグ、ブレイダーたちをみて笑顔をうかべ肩に手を置いたアキラにエイコが言った。

 「へっ!?飛んだ!?」

 アキラの手を一瞬にぎったエイコが魔力を使いと上空へと飛び上がると声を上げていた民衆が驚き静まり返った。

 「リネア王国よ。魔王エイコの名において、我が血脈につらなるセナを今一度そなたたちを信じ預けることにする、その間の責はブレイダーに委ねることとする!異論あるものは申し出よ!」

 「ま…魔王!?え?セナ様、魔王の血筋なのか?」

 「セナ様って魔族だったの!?」

 エイコの宣言をきき、リストニアの人々がセナと魔王が繋がっていると知り困惑にざわめきだした。

 「セナ様はセナ様ですわ!異論などありえませんわ!」

 「ああ!俺たちの家族だ!ブレイダーを代表しこのギルス=ブレイダー謹んでお受けする!!」

 ざわめきを切り裂く様にエミルとギルスがエイコをしっかりと見つめ宣言した。

 「ああ…セナ様はセナ様だな…」

 「ええ、セナ様がなんだろうとあんな優しい人いないわよ!」

 「あんな緩い顔で笑う魔族なんかいるかよ!」

 「ちげぇねぇ!」

 「すぐカチコチの真っ赤かに緊張するしね!」

 「あははははっ!!」

 ギルスたちの宣言を聞き、住民たちがそれぞれセナの人となりを思い出し頷きあいはじめた。

 「異論なしとして、魔王エイコに並び余、ゲオルグ=リネアも再びセナ殿の英雄を認める!!」

 「おおー!!!!」

 「魔王様と国王様のお墨付きの英雄だぜ!!」

 「さすがセナ様だ!!」

 ゲオルグが高々と剣を掲げ宣言するとリストニアが歓喜の声で揺れた。

 「エイケン様?魔王って恐怖の象徴じゃないの?」

 「あ?こいつら全員セナのことで頭いっぱいで忘れてんだろ」

 アリアの問いに騒ぐ周りを呆れた様に見ながらエイケンがわらった。
 
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