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第7章 小話

やりすぎ主従のいきすぎ開発日記

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 「ふぅ~できましたねぇセナ様」

 「うん、さっそく実験してみよう!メディーは貯水槽のほうにいってくれるかい?」

 「はい!」

 ブレイダー邸の井戸の横に新たに設置した器具から伸びたパイプに沿ってメディーが走っていき準備ができると手を挙げしらせてきた。

 「よし!じゃあ水を送るよー」

 「おーけーでーす!」

 メディーからの返事が来るとセナは手押しポンプの取っ手を何度も上下させはじめた。

 「お!きたきた!セナ様メモリも正常のようです!そちらから確認できますか?」

 「ん?ばっちり見えてるよ!」

 貯水槽の上に緑黄色赤黒とルーレットのようなものがついていて水がたまっていくにつれ黒から赤、黄色、緑となっていった。

 「よし!パイプのつなぎも水漏れなしだね」

 「はい!貯水槽も漏れはないですし屋敷のパイプも報告がないので大丈夫みたいです!」

 「じゃあ、厨房からみてみよう!」

 「はい!」

 セナとメディーは嬉しそうに屋敷の中へとかけて行った。

 「セナ様、ほんとにこれで水がでるんで?」

 「たぶん大丈夫なはずです!」

 「では出しますよぉー!えい!」

 「おーー!!こりゃすげぇ!!」

 厨房に行くと料理長をはじめ料理人たちが不安げに見守る中、メディーが小型のポンプを片手で上下に動かすと新たに設置されたシンクに水がながれそれを見ていた一同が歓喜の声を上げた。

 「セナ様!こりゃあすげぇわ!ありがとうございます!!」

 「いえ、すこしでも役に立てたようでよかったです。まぁ貯水槽に水をためなきゃなりませんけどね」

 「十分でさぁ!おい!さっそく昼食の準備にかかるぞ!」

 「はい!!」

 料理長が満面の笑みでセナと握手をかわし昼食の準備にとりかかった。

 「次はセバスさんたちの所にいこう」

 「はい!」

 厨房での実験が無事に成功したセナとメディーは意気揚々とセバスの元へと向かった。

 「セバスさん配管の漏れはどうですか?」

 「はい、今のところ漏れはありません」

 「では水をだしてみますね!」

 セバスに合流するとオリファをはじめとしたメイドたちもいる中、メディーがポンプをうごかした。

 「おお!すばらしい!!」

 「きゃー!すごい!」

 水が勢いよく出るとセバスは嬉しそうにメイドたちはキャッキャとはしゃいだ。

 「各ポンプには浄水作用のある道具が取り付けられていますので安全できれいな水がでますなので安心してください!」

 「なんと…」

 メディーの言葉にさすがのセバスも驚いて言葉を失った。

 「では、朝昼晩と日に3度時間を決め貯水槽の残量を確認し貯水する人員を用意いたします」

 「お手数を増やしてすいませんがよろしくお願いします」

 「なにをおっしゃいますか、今まで井戸でくみ上げた水をはこんでいたのですよ?それに比べれば天と地の差がありますよ」

 セバスの言葉にメイドたちも力強くうなずいていた。

 「そう言っていただけると作ったかいがありました。ありがとうございます」

 「セナ様、洗濯や床の拭き掃除がこれでかなり楽になるのですよ?感謝するのはこちらのほうです!ありがとうございます!」

 朗らかに笑うセナにメイドたちは柔らかな優しい笑顔を返しレイファも嬉しそうにセナへ礼をした。

 「セナ様!次はいよいよビッグイベントですよ!」

 「うん!そうだね!!」

 「はて?それはどのような?」

 「セバス様!お風呂です!」

 「浴場までおひきになられたのかですか?」

 「ちっちっち!少し違うんですよねぇ。じゃあいきましょう!」

 驚くセバスに人差し指をふって否定したメディーが浴場へセナを連れて走り出すとセバスやメイドたちもそのあとにつづいた。

 「さぁ!を開放しますよぉ!」

 「うん、お願い。僕は窯をみるよ」

 「いつのまにこのような場所を…」

 「今日建てました!」

 「なんと…」

 今まで薪置き場だった部屋の奥にさらに扉が増設されていてそこにはいると新しくセバス達がみたこともない形をした窯と部屋の側面すべてが貯水槽の壁となっていた。

 「セナ様!水を送りますよ!」

 「うん!こっちも準備OKだよ!」

 メディーがパイプについているバルブを数か所あけると貯水槽から水が窯に送られているようだった。

 「41度から42度で安定しますね!」

 「うん!メディー第二タンクはどう?」

 「もうすぐ半分までいきます!」

 「じゃあ!浴槽にながしてみよう!」

 「はい!」

 嬉々としながら動き回るセナとメディーをセバス達は驚き固まってしまいただただ眺めていた。

 「あ!セバスさん、レイファさん!使い方をご説明するので一緒に来てください」

 「は、はい」

 「か、かしこまりました」
 
 2人は戸惑いながらも満面の笑顔のセナについて浴室へとむかった。

 「セ、セナ様?あの浴槽の壁についた獅子は?」

 「ああ、あれを今から使うんです!」

 「へ?」

 「この獅子の口の輪を下に引くとお湯が出ます。輪はこのフックにひっかけておけば抑えてなくてもお湯がでつづけ、フックから外し手を放すと口が閉じてお湯もとまります」

 「なんと…」

 「あとこっちの洗い場にあるチェーンを1度引くとお湯がでます。もう一度引くと止まります」

 セナは口をあんぐりとあけ驚いているセバスとレイファをよそに嬉しそうに新たに設置した装置の説明をした。

 「第一タンクにためた水を窯にながし保温効果のある第二タンクへ貯蔵し第一タンクが空になるまでは常にお湯をだせるようになってます」

 「そ、そうにございますか…すごいですね」

 「実際にうごかしてみて水漏れもないようなので午後からは配管を埋めたり、壁に隠す作業をしますので、ちょっと騒音などご迷惑をおかけしてしまうかもしれません」

 「わ、わかりました。けがなどにはおきをつけください」

 「ありがとうございます!」

 セナの言葉にあっけにとられながらもセバスは執事としての矜持をなんとかまっとうした。

 「セナ様どうでした?」

 「うん、温度もばっちだよ!もしものために水もだせるようになってるしね」

 「はい!」

 窯の調子をみていたメディーの元に戻ったセナは満足げにいった。

 「これだと小型燃焼釜も大丈夫そうですね」

 「うん」

 「小型?それは…」

 「ああ、メイドさんや執事さんの控室の奥に上からお湯が出るだけですが同じ装置を取り付けてあるんですよ」

 「なんと!」

 「それと洗濯用にお湯もつかえるようになってますから使ってみてくださいね!」

 「安心してください。貯水タンクは別のものをちゃんと設置してありますから」

 「えっへっへ!これで皆さんも汗をながしやすくなりますよ!」

 セバスの問いにセナとメディーが嬉しそうに答えるとセバスはレイファに目配せしレイファはうなずくとメイドたちを引き連れ足早に去って行った。

 「とりあえず好きなようにやっていいとギルス様からお許しをもらってやりましたが、一応報告しなきゃいけませんね」

 「セナ様それは私がしますので、セナ様はご休憩をなさってください」

 「え?いいんですか?なんか申し訳ないですね」

 「いえ、私どもにまでいつもお気にかけて下さるセナ様に私もなにかご協力をさせてください」

 「そういってもらえると嬉しいですが気にかけるのは当然なんですけどね」

 「そうですよ!同じブレイダーの家族なんですから!」

 「メディーのいうとおりだね。わかりましたではおねがいします」

 セナはセバスの申し出をうけ一度自室に戻った。

 「セナ様おつかれさまにございます」

 「お二人とももう動いて大丈夫なんですか?」

 「はい。毎日ご迷惑をおかけしもうしわけありません」

 朝の鍛錬で属性化の練習をし最近は午前中は動くことがままならないヤオとタオが申し訳なさそうにいったがセナは気にすることもなく笑顔でヤオのいれたお茶を飲んだ。

 「午後からも少し作業をしますので休んでいてください」

 「かさねがさね申し訳ありません」

 「いえいえ、僕がすきかってやってるだけなんで」

 セナの申し出が二人の体調を気にしていることを知っている二人は情けなさと申し訳なさが顔に出ていた。

 「あ、そういえばセナ様」

 「なに?」

 「水揚げポンプと堀配管が成功したらおじい様が錬金術協会から売りに出していいかと聞いてましたよ」

 「ああ、じゃあお昼からメディーはマーカス様の方に行ってそっちをやってもらえるかい?」

 「わかりました!ブレイダー領から売りに出してみます!」

 「そっかお願いするよ」

 「はい!まかせてください!!」

 タオの用意したお菓子をたべながらメディーがいい二人の午後からの予定がきまった。

 「ふぅ~!これでいいかな!」

 「お疲れ様でしたセナ様」

 「あれ?エミル様、ギルス様も…すいませんうるさかったですか?」

 午後からの作業を終え、配管をすべて隠し終えたセナが満足げにしているとエミルがタオルと飲み物を手渡してきてセナは二人の邪魔をしたのではないかと申し訳なさそうな顔をした。

 「いや、セナ殿に礼をいいにきたのだ」

 「え?礼ですか?なんだろ…僕はなにもしてないはずですが…」

 「セナ様…さきほどまでやっていた作業についてです」

 「え?これは僕がやりたくてお二人にご迷惑をかけながらもやってしまったことですから!」

 思い当たる節がない顔をしたセナにレイファが呆れながら教えるとセナは盛大に驚いた。

 「いやいや!いつでも湯にはいれる、綺麗な水ものめるメイドや執事の負担も減る!」

 「井戸掃除も必要なくなり人が落ちる心配もなくなりましたわ」

 「そう言ってもらえるとありがたいですが、いつも好き勝手にやらせていただいてるお二人に僕の方が感謝しなければならないと思ってます」

 「セナ様!ただ今戻りました!あ、ギルス様もエミル様もいらっしゃったんですね」

 セナの言葉にその場にいた者たちが暖かい笑顔を浮かべていると元気いっぱいのメディーがもどってきた。

 「メディー、あなたも今回はありがとうございました」

 「いえ!むしろお礼をいわれるのはこれからですから気にしないでください!」

 「ん?どういうことだ?」

 エミルの礼にメディーが意味深な発言をしギルスが頭を傾げながら尋ねた。

 「セナ様からマルンの屋敷にも同じものを取り付けるように言われてますし、水揚げポンプ用の穴掘り配管とポンプそのものも錬金術協会が売りにだすそうで、売り上げの10%はセナ様に入りますがそのうち2%がブレイダーにはいるようになってるだけですよ?」

 「はぁ!?」

 「セナ様のおかげで各国の錬金術協会も横の繋がりがスムーズになったのでたぶん今年中には大陸すべての錬金術協会傘下のお店でかって取り付けまでやれるはずですよ!」

 「そんな莫大な金もらえるわけないだろう!」

 「セナ様からの要望どおりの契約書になってますから私に言われても困りますよ」

 「セナ殿!」

 「これからの迷惑料がわりです。たりないかもしれませんけど」

 「いやいやいや!」

 「ギルス様うけとっておいたほうがいいですよ?」

 「そういうがなメディー!」

 「だってセナ様もうマルンに大きな土地を買ってしまいましたし」

 「なんだと!?」

 「メディーまだバラしちゃダメだよ」

 「おそかれはやかれセルジオ様がだまってませんよ」

 「えぇ…内緒にしておいてとお願いしていたのに」

 「セルジオまでグルなのか!してセナ殿そこでなにをするつもりなのだ?」

 ギルスはセナとメディーの言葉に驚きっぱなしだったがエミルとセバス、それにレイファはくすくすとそのやり取りを面白そうにみていた。

 「買ったのはマルンの端の土地なんですがそこはいい水脈がありまして」

 「ふむ。マルン自体が水は豊富だからな!それで?」

 「はい。大型の窯を設置して公衆浴場を作ろうかと思ってます」

 「はぁ!?」

 「街の人々が気軽に湯にはいれて洗濯などもやれる憩いの場になれば素敵だなと」

 「それはすごいですわねぇ」

 「セルジオ様に案をきかせ管理などもマルンのブレイダーでおこなってくれるそうなので」

 「そ、そうか。わが領の民がたのしめるのならそれに越したことはないな」

 「はい!みんな綺麗になれば流行病の予防なんかにもなりますし、浴場の清掃など雇用をふやせるとおもいます!」

 「ふむ」

 「まぁ皆さんが気軽にはいれる金額になりますが入湯料も入りますからね」

 「そうか」

 「はい!ブレイダーに!」

 「なに!?そこはセナ殿だろ!」

 「建てたあとすぐにマルンのブレイダーへ譲渡するということになってますから!」

 「はぁ~驚きすぎて疲れてしまった。今度セルジオと話してくる」

 「え、ええわたくしも同行いたしますわ」

 あまりの出来事にギルスは考えることをやめ深いため息をついた。

 「無事にできあがってよかった」

 「そうですね!」

 「お疲れ様にございました」

 「いえ、アイリーンさんも入れるといいんですけどね」

 「わたくしは日の光と水が苦手にございますからお気持ちだけ」

 「そうですか…残念です」

 「んー…きめました!」

 「うわっ!なにをきめたのメディー」

 夕食を終えたセナがヤオとタオ、アイリーンそしてメディーと自室でやすんでいるとメディーが考え事そしていたと思ったら急に立ち上がり勢いよく言った。

 「セナ様!次に作るものですよ!」

 「え?なににしたんだい?」

 メディーの言葉にセナは目を輝かせて尋ねた。

 「結界です!」

 「結界?」

 「はい!帝国ではじめてアイリーンさんをみたときまだ日は高く昇ってました!」

 「うん。四門の結界内だと大丈夫だからね」

 「それを簡易結界に組み込めばセナ様がおそばにいなくてもアイリーンさんはでてこれるということですよね!」

 「なるほど!」

 「最初は組み込む術式を小さく作れないと思うのである程度の広範囲をかこうもので大雑把につくってだんだん改良していけば」

 「うん!アクセサリーや道具にくみ込めれるようになればいいね!」

 「はい!そしたらアイリーンさんと綺麗な朝日も夕日もみれますよ!」

 「いいね!メディー!むずかしいけどやってみよう!」

 「はい!」

 セナとメディーが勢いに任せ二人で会話すすめていくのをヤオとタオはなれたようにアイリーンは自身のことというのもあり驚き固まっていた。

 そしてその数日後二人は勢いのまま結界を完成させた。

 
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