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第7章 大陸編
魔界対戦
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「そういうことかよ……」
「ごめん…」
切れの悪い突きを剣ではじいて距離をとったエイケンがセナとドミニクの会話を聞いて苦々しい顔を浮かべた。
「それで妹は、ドロシーはどうなってんだ?」
「………わからない」
「あぁ?わかんねぇってどういうことだ!?」
「扉の向こうから声をかけてきてくれるから生きているとは思うけど…姿を見せてもらえてない…」
「ちっ!死んじまったら人質の意味がねぇ…生きてはいると思ったほうがいいが…姿をみせらんねぇってことは相当やべぇんじゃねぇか?」
「今回、そっちの魔王を倒せば妹を返してくれるって言われたの…」
「ちっ!どこまでも下衆な野郎どもだな!ってかおめぇともあろうもんがドアでもなんでもぶっ壊してかっさらっちまえばいいだろうがっ!」
「強力な結界が張られてて…私の全力でも壊せるかどうか…壊せたとしても中にいるドロシーに何かあったら…」
「くそがっ!!」
目線をそらし泣きそうになりながら言ったサナリアをみてエイケンの怒りは限界まで来ていた。
=====================================
「魔王ともあろうものが人質なんてとって随分せこい真似するのね」
「私じゃないわよ!アルドラ側が勝手にやってることよ!」
「ふぅ~ん」
「ほんっと一々癪に障るわね!それにどんな手を使っても勝ちは勝ちでしょ!」
「そうね」
開き直るバーバラにエイコのイライラも限界に達しようとしていた。
=====================================
「てめぇ!いい加減おとなしく殺されろよ!!」
「おい!セナ!そいつを殺すんじゃねぇぞ!」
「ん?叔父さんどういうこと?」
「動けなくしてこいつの妹のことを聞き出せ!」
「どいつもこいつも…俺をなめやがってぇ……やれるもんならやってみやがれ!!!!
いまだ飄々と息を切らすこともなくドミニクの攻撃をかわしているセナにエイケンから指示が飛んだ。
「え?…なんで……」
「おいセナ!なにやってんだ!!」
エイケンたちの会話も聞いていたセナが急に転移するとサナリアの背後にあらわれ微弱な雷の魔力で当身をしサナリアを気絶させた。
「動けてる限り戦いたくないのに戦わなきゃならないから…」
「だからっておめぇやり方ってもんが!」
「時間をあまりかけたくなかったんだ。あの人から早く妹さんの居場所を聞き出して僕が転移でいけるのなら助けに行きたい」
「おめぇ…そうだな…さっさと終わらせようぜ」
「うん」
「てんめぇ…俺を無視までしやがって…どこまでもどこまでも!!!」
ほっとかれて怒りを爆発したドミニクの体がどんどん毛におおわれていき、オオカミのようになった。
「叔父さんあれって獣人なの?」
「違います。あれは魔界にいる人狼族です」
「え?じゃあ魔界の人だったんですか?」
「一緒にされるのは心外ではありますが、残念ながらそのようですわね」
セナの疑問に優雅に現れながらもドミニクを冷たい目でみながらアイリーンが淡々と説明をした。
「てめぇ…たかだか吸血鬼風情が調子に乗ってんじゃねぇぞ?その逃げてばっかの優男もろとも食い殺してやる」
「セナ様、エイケン様…申し訳ございませんが…ここは私にお任せ願えませんでしょうか…」
「あぁ?時間をかけてられねぇんだよ!」
「重々承知しておりますわ…私が必ず聞き出して見せます」
「ちっ!わかった…」
「じゃあここはアイリーンさんに任せよう!叔父さんはサナリアさんを連れて魔王城へ向かってくれる?僕は一度ヤオさんとタオさんのもとにいくよ」
「ちっ!しょうがねぇ!任せたぞアイリーン!」
「おとなしくいかせるわけねぇ…てめぇ」
エイケンを追いかけようとしたドミニクの行く手をアイリーンが遮った。
「行かせるわけにはいきませんわ…」
「てめぇ…ちっ!しょうがねぇ魔界でも4大妖魔に数えられてる人狼と吸血鬼どっちが上か決着をつけようぜ」
「そのようなものには興味はありませんが…我が主への冒涜の数々…到底許すわけにはまいりませんわ」
ドミニクが汚い笑いを浮かべるのを憎々しげにアイリーンがにらみつけていた。
「風と速さの大妖!この人狼のドミニク様についてこれっかよ!」
「今の私には速さなどなんの意味もないこと」
「闇と力の大妖吸血鬼男ならまだしも半端な力の吸血鬼女じゃたかが知れてるぜ!」
ドミニクが高笑いをしながら目にもとまらぬ速さで次々と襲い掛かり、アイリーンはかわし切れず徐々に傷を増やし始めた。
「どうした!どうした!さっきの威勢はどこに消えたんだ?あぁ~?」
「はぁ~…もういいですわ」
「なんだ?もう終わりか?つまらねぇな!」
「ええ、もう終わりましたわ」
「手も足もだせねぇで終わるとはな!たいした時間稼ぎにもなってねぇじゃねぇか!」
「なにか考え違いをなさっておられるようですが、終わったのはそちらのほうですわ」
「あ゛…?な、なんだ…身体が…ぐぎぎぎぎ…」
アイリーンが血まみれになりながらも魔力をたぎらせると返り血をあびた部分が魔力に反応しドミニクは体中がしびれ動けなくなった。
「てめ…傷が…」
魔力を発したアイリーンの傷や裂かれた服などがシューという音と僅かな煙を発しどんどん元通りになっていった。
「高揚なさりすぎてお忘れでしょうが、本来並みの吸血鬼ならば…このように日の出る場所には出てこれません」
「あっ…なんで出てこれ…」
「お互い月の光で力を増しますが、我ら吸血鬼の力の増幅はそちらの比ではありませんわ…地力の差をお察しいただけましたでしょうか?」
「たかだかバンピールがなんでこんな力を…」
「我が主セナ様のお情けのおかげでございますわ…私、毎日毎日極上の闇の力を魔力酔いするほど過剰にいただいておりますの」
「ま、毎日だと!?」
「ええ、世界最強の我が主セナ様が私のためだけにお力をお分けしてくださるのですわ…天にも昇るほどの幸福を毎日味合わせていただいておりますの、これもひとえにわが神、魔王エイコ様のおかげ…あなたたちはそのお二人に立場も実力もはるかに及ばぬ弱小の存在で噛みついてきましたのよ?とうぜん…ゆるされざることではございません!」
話している間にだんだんと感情が高ぶりアイリーンの瞳が怒りの深紅に輝きだした。
「ま、待て!俺は命令されてきただけなんだ!な?同じ魔界の者どうし仲良くしようじゃねぇか!」
「この期に及んで見苦しい!我が主、わが神に牙をむいたその行為…万の痛み千の絶望ですら生ぬるい!」
「ひぃっ!?なんだこの闇は!やめろ!やめてくれ!!何でも話す!なんなら俺も手伝わせてくれ!!」
「必要ございませんわ、私の役目はあなたの動きを完全に封じること、情報を聞き出す傀儡にするのは親愛なる私のお仲間がやってくださりますので」
「吸血鬼は群れを作らねぇんじゃねぇのか!?」
「群れ?そのような自分たちが生きるためだけのものとご一緒になされるのはおやめいただけます?我らのすべては我が主セナ様のためにあるのですわ…」
「てめぇほどのもんが人間ごときに媚売りやがって!」
「信念もなにもないただの動物風情にいわれたくはありませんわ。そろそろ主がお戻りになられますのでこれにてごきげんよう」
「ま、まて!ぐがっ!」
セナとヤオ達の気配を感じ取ったアイリーンが焦るドミニクにきれいなカーテシーをきめるとドミニクの意識はそこで途切れてしまった。
「ごめん…」
切れの悪い突きを剣ではじいて距離をとったエイケンがセナとドミニクの会話を聞いて苦々しい顔を浮かべた。
「それで妹は、ドロシーはどうなってんだ?」
「………わからない」
「あぁ?わかんねぇってどういうことだ!?」
「扉の向こうから声をかけてきてくれるから生きているとは思うけど…姿を見せてもらえてない…」
「ちっ!死んじまったら人質の意味がねぇ…生きてはいると思ったほうがいいが…姿をみせらんねぇってことは相当やべぇんじゃねぇか?」
「今回、そっちの魔王を倒せば妹を返してくれるって言われたの…」
「ちっ!どこまでも下衆な野郎どもだな!ってかおめぇともあろうもんがドアでもなんでもぶっ壊してかっさらっちまえばいいだろうがっ!」
「強力な結界が張られてて…私の全力でも壊せるかどうか…壊せたとしても中にいるドロシーに何かあったら…」
「くそがっ!!」
目線をそらし泣きそうになりながら言ったサナリアをみてエイケンの怒りは限界まで来ていた。
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「魔王ともあろうものが人質なんてとって随分せこい真似するのね」
「私じゃないわよ!アルドラ側が勝手にやってることよ!」
「ふぅ~ん」
「ほんっと一々癪に障るわね!それにどんな手を使っても勝ちは勝ちでしょ!」
「そうね」
開き直るバーバラにエイコのイライラも限界に達しようとしていた。
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「てめぇ!いい加減おとなしく殺されろよ!!」
「おい!セナ!そいつを殺すんじゃねぇぞ!」
「ん?叔父さんどういうこと?」
「動けなくしてこいつの妹のことを聞き出せ!」
「どいつもこいつも…俺をなめやがってぇ……やれるもんならやってみやがれ!!!!
いまだ飄々と息を切らすこともなくドミニクの攻撃をかわしているセナにエイケンから指示が飛んだ。
「え?…なんで……」
「おいセナ!なにやってんだ!!」
エイケンたちの会話も聞いていたセナが急に転移するとサナリアの背後にあらわれ微弱な雷の魔力で当身をしサナリアを気絶させた。
「動けてる限り戦いたくないのに戦わなきゃならないから…」
「だからっておめぇやり方ってもんが!」
「時間をあまりかけたくなかったんだ。あの人から早く妹さんの居場所を聞き出して僕が転移でいけるのなら助けに行きたい」
「おめぇ…そうだな…さっさと終わらせようぜ」
「うん」
「てんめぇ…俺を無視までしやがって…どこまでもどこまでも!!!」
ほっとかれて怒りを爆発したドミニクの体がどんどん毛におおわれていき、オオカミのようになった。
「叔父さんあれって獣人なの?」
「違います。あれは魔界にいる人狼族です」
「え?じゃあ魔界の人だったんですか?」
「一緒にされるのは心外ではありますが、残念ながらそのようですわね」
セナの疑問に優雅に現れながらもドミニクを冷たい目でみながらアイリーンが淡々と説明をした。
「てめぇ…たかだか吸血鬼風情が調子に乗ってんじゃねぇぞ?その逃げてばっかの優男もろとも食い殺してやる」
「セナ様、エイケン様…申し訳ございませんが…ここは私にお任せ願えませんでしょうか…」
「あぁ?時間をかけてられねぇんだよ!」
「重々承知しておりますわ…私が必ず聞き出して見せます」
「ちっ!わかった…」
「じゃあここはアイリーンさんに任せよう!叔父さんはサナリアさんを連れて魔王城へ向かってくれる?僕は一度ヤオさんとタオさんのもとにいくよ」
「ちっ!しょうがねぇ!任せたぞアイリーン!」
「おとなしくいかせるわけねぇ…てめぇ」
エイケンを追いかけようとしたドミニクの行く手をアイリーンが遮った。
「行かせるわけにはいきませんわ…」
「てめぇ…ちっ!しょうがねぇ魔界でも4大妖魔に数えられてる人狼と吸血鬼どっちが上か決着をつけようぜ」
「そのようなものには興味はありませんが…我が主への冒涜の数々…到底許すわけにはまいりませんわ」
ドミニクが汚い笑いを浮かべるのを憎々しげにアイリーンがにらみつけていた。
「風と速さの大妖!この人狼のドミニク様についてこれっかよ!」
「今の私には速さなどなんの意味もないこと」
「闇と力の大妖吸血鬼男ならまだしも半端な力の吸血鬼女じゃたかが知れてるぜ!」
ドミニクが高笑いをしながら目にもとまらぬ速さで次々と襲い掛かり、アイリーンはかわし切れず徐々に傷を増やし始めた。
「どうした!どうした!さっきの威勢はどこに消えたんだ?あぁ~?」
「はぁ~…もういいですわ」
「なんだ?もう終わりか?つまらねぇな!」
「ええ、もう終わりましたわ」
「手も足もだせねぇで終わるとはな!たいした時間稼ぎにもなってねぇじゃねぇか!」
「なにか考え違いをなさっておられるようですが、終わったのはそちらのほうですわ」
「あ゛…?な、なんだ…身体が…ぐぎぎぎぎ…」
アイリーンが血まみれになりながらも魔力をたぎらせると返り血をあびた部分が魔力に反応しドミニクは体中がしびれ動けなくなった。
「てめ…傷が…」
魔力を発したアイリーンの傷や裂かれた服などがシューという音と僅かな煙を発しどんどん元通りになっていった。
「高揚なさりすぎてお忘れでしょうが、本来並みの吸血鬼ならば…このように日の出る場所には出てこれません」
「あっ…なんで出てこれ…」
「お互い月の光で力を増しますが、我ら吸血鬼の力の増幅はそちらの比ではありませんわ…地力の差をお察しいただけましたでしょうか?」
「たかだかバンピールがなんでこんな力を…」
「我が主セナ様のお情けのおかげでございますわ…私、毎日毎日極上の闇の力を魔力酔いするほど過剰にいただいておりますの」
「ま、毎日だと!?」
「ええ、世界最強の我が主セナ様が私のためだけにお力をお分けしてくださるのですわ…天にも昇るほどの幸福を毎日味合わせていただいておりますの、これもひとえにわが神、魔王エイコ様のおかげ…あなたたちはそのお二人に立場も実力もはるかに及ばぬ弱小の存在で噛みついてきましたのよ?とうぜん…ゆるされざることではございません!」
話している間にだんだんと感情が高ぶりアイリーンの瞳が怒りの深紅に輝きだした。
「ま、待て!俺は命令されてきただけなんだ!な?同じ魔界の者どうし仲良くしようじゃねぇか!」
「この期に及んで見苦しい!我が主、わが神に牙をむいたその行為…万の痛み千の絶望ですら生ぬるい!」
「ひぃっ!?なんだこの闇は!やめろ!やめてくれ!!何でも話す!なんなら俺も手伝わせてくれ!!」
「必要ございませんわ、私の役目はあなたの動きを完全に封じること、情報を聞き出す傀儡にするのは親愛なる私のお仲間がやってくださりますので」
「吸血鬼は群れを作らねぇんじゃねぇのか!?」
「群れ?そのような自分たちが生きるためだけのものとご一緒になされるのはおやめいただけます?我らのすべては我が主セナ様のためにあるのですわ…」
「てめぇほどのもんが人間ごときに媚売りやがって!」
「信念もなにもないただの動物風情にいわれたくはありませんわ。そろそろ主がお戻りになられますのでこれにてごきげんよう」
「ま、まて!ぐがっ!」
セナとヤオ達の気配を感じ取ったアイリーンが焦るドミニクにきれいなカーテシーをきめるとドミニクの意識はそこで途切れてしまった。
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