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第1章 降り立つ

王道すぎる異世界テンプレ③

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 馬車からでてきた奥様と呼ばれた女性をみて、ガルハルトと呼ばれたセナの横にいる騎士が。

 「奥様っ!? まだ危険ですので馬車へお戻りください!!」

 少々蒼い顔をしながらそういうと。

 「でも賊はすべて片付いたのでしょ? それでこちらの被害はどうなのかしら?」

 そう奥様と呼ばれた女性はガルハルトの言葉を一切スルーするかのように穏やかに聞いてきた。

 「はっ! 馬と馭者がやられましたが軽症を負ったものが居りますが騎士に死者はおりません。
 それと騎士2名が屋敷に応援要請に向かっております。」

 奥様と呼ばれている女性にひざまづきながらガルハルトが報告する。

 「そう……この者の身内が居ればその者にしっかり今後の保証をしてさしあげて?」

 胸に矢が刺さり馬車から転げ落ちたであろう御者に対し悲しそうな顔でそういうと、ガルハルトは御意といい、部下らしき騎士たちに馭者丁重に布でくるみロープで固定していた。
 それをみてもう自分には用がないだろうと思い。

 「じゃぁ僕たちもそろそろ街に行こうか」

 セナがライズにいうと、ライズもそうだなと頷き。

 「んじゃ 俺らはこれで」

 ライズがガルハルトにそういい、二人で街のほうへ歩こうとしたところ。

 「おまちになって?」

 先ほど奥様と呼ばれていた女性が2人に声をかけ、二人が足をとめそちらを振り返ると。

 「ガルハルト?こちらの方々は?」

 「はっ!旅の者たちで、此度の賊からの襲撃に際し危険を顧みず加勢をしてきたものでございます。」

 奥様が問うとガルハルトが簡潔に2名を紹介する。

 「まぁ! ガルハルト! そのような方々に礼もせず返すなど、ブレイダー家として許されませんわっ!」

 優しそうなたれ目をクワッと見開きガルハルトに言うと、ひきつった顔をしたガルハルトが申し訳なさそうに二人の前に近づき。

 「2人共王都へ向かうのであろう? すまんが道中一緒に行ってくれまいか?」

 ガルハルトに小声で言われセナとライズは顔を見合わせ、断ったらガルハルトがきっと可哀そうなことになるのだろうと思い、頷きあい。

 「あっあの! 自分はエル村から王都へ向かいますが、もしよろしければ道中だけでもご一緒させていただけますか?」

 と奥様と呼ばれている女性へ頭を下げながら代表してライズがいい、セナもそれに合わせ頭を下げると。

 「まぁっ!奇遇ですわっ!ぜひご一緒いたしましょう!! ささっ!馬車へお乗りになって!?」

 パァっと顔を明るくした奥様は、馬車のドアを赤ちゃんを抱いていない右手で開けそうまくしたてるように言ってきた。

 「いやいや!滅相もない!!自分たちは騎士の方々と一緒に歩きますのでお気になさらず!」

 「そっ!そうですよ!! 王都までの道中騎士様たちに守ってもらえるだけで充分すぎますからっ!」

 ライズが歩くと言い、奥様が不服そうな顔をしたのでセナが焦りながらライズをフォローするようにいうが、奥様は未だ不服そうにしていたが。

 「奥様?そのような輩を馬車に入れるとメイリー様がどのようなご病気になるか!」

 突然馬車の中からメイドのような恰好をし、暗めな茶髪にきつそうな目をした女性が言うと。

 「レイファ黙りなさいっ!! 命を救ってくれた恩人に対しなんたる言い草!! 恥を知りなさい!!」

 奥様が顔を真っ赤にし、レイファと呼ばれたメイドに勢いよく言うが。

 「しかし!奥様!!」

 レイファが食い下がろうとすると。

 「これ以上……恥の上塗りをさせないでちょうだい」

 奥様が氷のような目でレイファを見ながら感情を消したかのような淡々としたものいいで言うと。

 「ひぃっ!? もっ!申し訳ございませんっ!!」

 レイファは顔を真青にし涙目になりながらレイファが謝罪すると、奥様はにこやかな表情にもどり。

  「ささっ!お二方とも……って!まぁ私としたことが!お二方のお名前すらお聞きにならず申し訳ございませんわ!」

 セナとライズを馬車内に促しながら、お互い名乗っていないことに気づき、少し大げさに手を叩くと。

 「改めまして私はリネア王国に在を置くギルス=ブレイダー公爵の妻、エミル=ブレイダーと申しますわ!」

 奥様が赤ん坊を抱きながら軽くしゃがみ込むような会釈をし優雅に自己紹介をして来た。

 「こっ!公爵夫人様でしたかっ! しっ!失礼しました! 俺いや……私はエル村で狩りをならわいとしております!……ラ!ライズっと申しますっ!!」

 ライズが跪いて焦りながらも自己紹介をしたのをみてセナも真似をし跪いて。

 「たっ!旅をしております!ふぅ~……セナと申します」

 緊張しすぎて最初の一言が自分が思っているよりも大きな声になってしまい驚いたが、深呼吸をしてなんとか落ち着いて自己紹介すると。

 「そういえば名乗っていなかったな!公爵家に仕える私設騎士団の団長を務めているガルハルトだ」

 ガルハルトが名乗りそれを聞き終えたエミルは満足気に頷くと。

 「そんなにかしこまらないでくださいまし! 私と娘のみならず……あぁ!この愛しい子は私の娘メイリーと申しますわ!もうすぐ生まれて半年ですの!って……あぁ私と娘のみならず騎士たちまでお助けいただき改めて感謝いたしますわ!」

 改めて礼を言われ、ライズと目が合いお互い無事でよかったと笑顔を見せあっていると。

 「団長!こいつらどうしますか?」

 2名の盗賊を縛り上げて見張っていた騎士が、ガルハルトに聞いてくると。

 「まだ仲間がいないか、それとアジトの場所を吐かせろ!」

 ガルハルトが険しい顔をして指示をすると騎士は敬礼をし盗賊たちの元へ向かっていった。

 「あの盗賊のアジトって……まだ残党がいるんでしょうか?」

 先ほどの騎士とガルハルトの話をききながら質問すると。

 「わからんが……こいつらがここ最近話題になっている黒狼だとしたら……おるやもしれん」

 ガルハルトが深刻な顔をして答えてきた。

 「じゃ!……じゃぁ!場所と人数がわかったら捕まえに行くんですか?」

 「いや、それは国の仕事になる 我々は応援が来たら賊を引き渡し夫人を無事に王都へと連れていく」

 再度のセナからの質問にガルハルトが答えていると。

 「とりあえずここを少し離れましょ? ささお二方早く馬車へ!」

 とにこやかに催促してくるエミルからの誘いをどうやって回避するか、セナとライズは顔を見合わせ汗を吹き出すのであった。
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