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第二章 小話
第2章 閑話② そりゃあもう、てんやわんやの大賑わいさ -王都最高の錬金工房の受難ー
バンっ!!
「お、おじい様!?いらっしゃいますかっ!?」
王都の工業区にある一際大きな工房のドアが乱雑に開け放たれ、工房内にメディーの声が響き渡った。
「なっ!何事じゃ!?」
「おじい様!大変なんです!!時間がないんです!!」
「だから、何が大変なんじゃ?メディーよ!とりあえず落ち着くんじゃ!」
焦るばかりで話が進まず、マーカスは自身の孫を落ち着かせることを、最善とし、工房で働く者にお茶を用意させ、メディーを落ち着くのを待った。
「ず、ずずずずずぅぅぅ…ぷはっ!…ふぅ…」
「メディーよ、どうじゃ?落ち着いたかの?」
お茶を一気に飲み干し、深呼吸をしたメディーにマーカスが声をかけた。
「すいません…もう大丈夫です」
「ふむ。それで?なにが大変なのじゃ?」
「それは…」
メディーはブレイダー公爵家で聞いた話をマーカスに知らせた。
「な、なんじゃとっ!!」
「お、おじい様!落ち着いてください!!」
「これが落ち着いていられるかっ!!おい!全員を集めるんじゃ!今すぐ!!」
「は、はい!」
マーカスはメディーの話を聞き、盛大に取り乱し、立ち上がりながら、ものすごい剣幕で、工房で働く錬金術師に招集をかけた。
「集まりましたが…マーカス様なにがあったんですか?」
「ご苦労!なにがあったじゃと?」
マーカスは集まった全員にメディーから聞いたことを話した。
「なっ!?5日後!?」
「間に合うわけないじゃないですかっ!」
次々と上がる悲鳴ににた声に、マーカスが切れ気味に言い放った。
「間に合う、間に合わないではない!間に合わせるのじゃ!!」
「そ、そんなぁ…ど、どうやってですかっ!」
思いっきり精神論をぶっ放したマーカスに、半泣きのような状態になった1人が言った。
「し、しかたない!前回作ったものをグレードUPさせるのじゃ!」
「は、はい!」
マーカスの指示に錬金術士が答え、迅風の元へ向かった。
「よし!メディーよ!今のうちに倉庫から素材をありったけ持ってくるのじゃ!儂は図面を引きなおすぞい!」
「は、はい!」
メディーが工房の錬金術士を数名引き連れ倉庫へと走り去り、マーカスは机へ向かった。
カリカリと図面に書き込む音が響く中、メディーたちは持ってきた素材をわかりやすいように仕分けていた。
「遅くなりました!」
そこへ、迅風の装具を取りに行った者が、息を切らせ戻ってきた。
「うむ!ごくろうじゃった!少し休んでおれ!他の者は装具を部位ごとにばらすんじゃ!」
マーカスがねぎらいの言葉をかけ他の者達に指示をだすと、一気に工房の中が騒がしくなった。
「おじい様!迅風は風の魔力を扱います!その辺を強化してほしいです!」
「ふむ!なら中心にもっと質のいい風属性の魔石をあしらうかのぉ」
「マーカス様、重量軽減も付与させてはいかがでしょうか」
「おぉ!それはいい案じゃな!素材にいとめはつけん!あるものすべて使う気で行うのじゃ!」
「はい!」
色々な意見が飛び交う中、マーカスは自身がため込んでいた素材のすべてを使いきる気概で臨んだ。
「マーカス様、一つお伺いしてもよろしいですか?」
「なんじゃ!?」
「セナ様は剣も魔法もお使いになるんですよね?だったら両手で戦う可能性もありますよね?手綱を手放しても落ちないように、鞍側で工夫できませんか?」
せわしなく動き続ける工房の中で一人の錬金術士が問うと、マーカスは少し考えた。
「ふむ!おぬし冴えてるのぉ!では鐙に魔力を通すとくっ付くようにしようかの!」
「はい!」
当初計画した装具グレードUPよりも、知らず知らずのうちに、さらに強力な物を工房一丸となって、作り始めていた。
そして、時間はどんどん過ぎ、体力と気力の限界で倒れる者もでてきたころ。
「お邪魔いたします」
「ん?おぉ!セバス殿、すまんが今は取り込んでおってのぉ」
「はい、エミル様の依頼をお受けいただき感謝しております。それで、エミル様からこれを」
セバスが恭しく一礼すると、後ろに控えていた数名のメイドと執事が、大小さまざまな容器をマジックバッグから取り出し、マーカスへと見せた。
「これは?」
「当家料理長自慢の料理でございます。無理な願いへのせめてもの感謝とお伝えするよう賜っております」
セバスが賜った言伝をいうと、マーカスは笑顔を浮かべた。
「これはありがたい!エミル様にはくれぐれもよろしくお伝えくだされ!必ず最高の物をおみせると!」
「かしこまりました」
「おい!皆!ブレイダー家からの差し入れじゃ!」
「え?」
「うぉ~!飯だ!!」
マーカスの言葉で息を吹き返した錬金術士たちが料理へと群がった。
「マーカス様?差し出口申し訳ありませんが、当家からも人員をよこすことは可能ですが?」
「いや…それだけはいかんのじゃ…些細なプライドかもしれんが…儂らだけでやりとげなければならんのじゃ…」
「…そうでございますね…申し訳ありませんでした」
「いや、年寄りのわがままじゃて…すまんの」
セバスの言葉にマーカスが謝罪をのべた。
その後、全員であっというまに差し入れが空になり、セバス達が帰ると、再び工房内は忙しさに包まれた。
そして、日付が変わり、だいぶ日が高くなった頃
「失礼いたします」
「ん?おぉ?オリファちゃんじゃないかっ!どうしたんじゃ?」
工房のドアが開くと、オリファが礼をし、入室してきて、マーカスが心底嬉しそうに、両手をワキワキさせながら近づいた。
「それ以上近づくなエロ菌」
「うっほっ!辛辣ぅ!」
「コホン。本日はセナ様からの依頼によりまいりました」
「セナ殿から?なんじゃ?」
オリファの言葉に、マーカスが疑問を口にすると。
「今回のスタンピードでセナ様が倒された魔物のうち希少価値がある素材をこちらにとのことで運んでまいりました。」
「なっ!なんとっ!?」
オリファの申し出にマーカスが驚き、案内されるまま工房の外へでると、荷台に乗せられた大量の素材があった。
「こ、これを全部か…?」
「はい、お納めください」
マーカスのつぶやきに似た言葉に、オリファが礼をし帰っていった。
「……はっ!? おい!この素材を今すぐ運び込むのじゃ!!」
あっけにとられたままオリファを見送り、我に返ったマーカスが素材を工房へ運び込むように指示を出した。
その後、セナからもたらされた素材を使い、更に迅風の装具がグレードUPをした。そして、毎日エミルから食事も届き、工房は何とか効率をさげず動いていた。
メディーより持ち込まれた依頼を始めて3日目の朝早く。
バン!
「マーカスよ!マーカスはおるか!?」
「なっ!なにごとじゃ!?ってお主は!イース!なんじゃこんな朝こっぱやくから!」
突然、壊れるほどの勢いでドアが開き、この国の最高司祭のイースが嵐のようにやってきた。
「おぉ!ひさしいなマーカス!実は折り入ってお主に頼みがあってな!」
「無理じゃ!ほかを当たれ」
「これなんじゃがな?今度、我が孫がこの国の初代歌姫になるのでな!宝冠がなければカッコ悪い!それになにより孫に何かをおくりたい!」
「話を聞かんかっ!」
「ん?なんじゃ?孫のことを聞きたいのか?ええぞ?名をアリアと言ってな!?」
「そんなことではないわっ!」
「そんなこととはなんじゃ!そんなこととはっ!」
「うるさいわ!儂は今、ほかの依頼で手が離せんのだっ!ほかをあたれ!」
「そんなの後回しでいいじゃろがっ!わ・し・の!孫のが大事じゃろうがい!」
マーカスの言葉を聞かず、自分勝手な話をするイースに、おずおずとメディーが近づき話しかけた。
「あ、あの!お久しぶりです…イースおじい様」
「あぁん?って、おっ!?メディーか!随分大きくなったのぉ!元気じゃったか!?」
メディーの声に不機嫌そうに振り返ったイースだったが、メディーの姿をみて好好爺へと変貌した。
「あの、今おじい様が受けている依頼は私が頼まれたもので…初代英雄のセナ様の愛馬で私が世話している迅風の装具品なんです…」
「なんとっ!」
「セナ殿は儂の教え子じゃ!わかったら他へいけ!」
「ふむ!英雄と歌姫ゆかりの工房として名が馳せるな!」
「そんな名などいらん!手が足りんのじゃ!ほかへ行けといっとるじゃろがっ!」
メディーとマーカスの話を、まったく意に返さずいうイースに、さすがの二人も呆れた。
「まぁまぁ!儂のほうは、土台はできておるのだ!あとは装飾だけじゃ!王国一、いや!大陸一の錬金術師がつくった宝冠を孫にあげたいんじゃ!!」
「くぅ~、なぜこやつは昔からこうなのかっ!」
「え、えっと…おじい様?迅風の装具のほうは、設計図もありますし、あとは私達でやれるから…イースお爺様のほうをやってあげてほしい…です」
顔を真っ赤にし、涙目で言うイースを、気の毒に思ったメディーが言った。
「メディー!」
「くっ!…しかたない…メディーに感謝するがいい」
メディーの言葉に、イースが目を見開き驚いて、マーカスが苦々しい顔でイースに言った。
「あ、あぁ!もちろんじゃ!この恩はわすれんぞ!」
「いいから早くブツと図面をもってこい!装飾の材料もあるんだろうな!?」
「う、うむ!とうぜんじゃ!」
感動をあらわにしたイースに、ため息交じりにマーカスが声をかけ、爺さん同士が頭を引っ付け会いながら、ああでもない、こうでもないと話し合いをはじめたのをみて、メディーは自分たちの仕事に戻った。
そして、迎えた当日の早朝…。
「で、できた……」
メディーの震える声が聞こえ、工房の中はひっそりと音が消えた。
「だ、だれか動けるか…?これを…教会に届けてくれ…ぬか…」
次に息絶え絶えのマーカスの声が聞こえ、一番若い錬金術士が受け取り、フラフラしながら教会へと向かった。
「はは、女神が笑顔でてを振ってくれてるよ?」
「なぁ?ルイ?俺…なんだかとっても眠いんだ…」
工房のあちこちで、もはや屍と化してそうな錬金術士達が床に倒れながらブツブツ言っていた。
「み、みな…よくやってくれた…儂らはやりとげたんじゃ…胸をはって…とりあえずは…眠ろう…」
フラフラしながらもなんとか立ち上がったマーカスが全員に柔らかい笑顔でそういうと、全員が達成感に満ち溢れた顔で返事をし……。
もれなく全員、死んだように眠りについた。
宝冠を受け取ったイースが、感涙を流しながら工房に突撃してきて、全員がたたき起こされるまで…。
「お、おじい様!?いらっしゃいますかっ!?」
王都の工業区にある一際大きな工房のドアが乱雑に開け放たれ、工房内にメディーの声が響き渡った。
「なっ!何事じゃ!?」
「おじい様!大変なんです!!時間がないんです!!」
「だから、何が大変なんじゃ?メディーよ!とりあえず落ち着くんじゃ!」
焦るばかりで話が進まず、マーカスは自身の孫を落ち着かせることを、最善とし、工房で働く者にお茶を用意させ、メディーを落ち着くのを待った。
「ず、ずずずずずぅぅぅ…ぷはっ!…ふぅ…」
「メディーよ、どうじゃ?落ち着いたかの?」
お茶を一気に飲み干し、深呼吸をしたメディーにマーカスが声をかけた。
「すいません…もう大丈夫です」
「ふむ。それで?なにが大変なのじゃ?」
「それは…」
メディーはブレイダー公爵家で聞いた話をマーカスに知らせた。
「な、なんじゃとっ!!」
「お、おじい様!落ち着いてください!!」
「これが落ち着いていられるかっ!!おい!全員を集めるんじゃ!今すぐ!!」
「は、はい!」
マーカスはメディーの話を聞き、盛大に取り乱し、立ち上がりながら、ものすごい剣幕で、工房で働く錬金術師に招集をかけた。
「集まりましたが…マーカス様なにがあったんですか?」
「ご苦労!なにがあったじゃと?」
マーカスは集まった全員にメディーから聞いたことを話した。
「なっ!?5日後!?」
「間に合うわけないじゃないですかっ!」
次々と上がる悲鳴ににた声に、マーカスが切れ気味に言い放った。
「間に合う、間に合わないではない!間に合わせるのじゃ!!」
「そ、そんなぁ…ど、どうやってですかっ!」
思いっきり精神論をぶっ放したマーカスに、半泣きのような状態になった1人が言った。
「し、しかたない!前回作ったものをグレードUPさせるのじゃ!」
「は、はい!」
マーカスの指示に錬金術士が答え、迅風の元へ向かった。
「よし!メディーよ!今のうちに倉庫から素材をありったけ持ってくるのじゃ!儂は図面を引きなおすぞい!」
「は、はい!」
メディーが工房の錬金術士を数名引き連れ倉庫へと走り去り、マーカスは机へ向かった。
カリカリと図面に書き込む音が響く中、メディーたちは持ってきた素材をわかりやすいように仕分けていた。
「遅くなりました!」
そこへ、迅風の装具を取りに行った者が、息を切らせ戻ってきた。
「うむ!ごくろうじゃった!少し休んでおれ!他の者は装具を部位ごとにばらすんじゃ!」
マーカスがねぎらいの言葉をかけ他の者達に指示をだすと、一気に工房の中が騒がしくなった。
「おじい様!迅風は風の魔力を扱います!その辺を強化してほしいです!」
「ふむ!なら中心にもっと質のいい風属性の魔石をあしらうかのぉ」
「マーカス様、重量軽減も付与させてはいかがでしょうか」
「おぉ!それはいい案じゃな!素材にいとめはつけん!あるものすべて使う気で行うのじゃ!」
「はい!」
色々な意見が飛び交う中、マーカスは自身がため込んでいた素材のすべてを使いきる気概で臨んだ。
「マーカス様、一つお伺いしてもよろしいですか?」
「なんじゃ!?」
「セナ様は剣も魔法もお使いになるんですよね?だったら両手で戦う可能性もありますよね?手綱を手放しても落ちないように、鞍側で工夫できませんか?」
せわしなく動き続ける工房の中で一人の錬金術士が問うと、マーカスは少し考えた。
「ふむ!おぬし冴えてるのぉ!では鐙に魔力を通すとくっ付くようにしようかの!」
「はい!」
当初計画した装具グレードUPよりも、知らず知らずのうちに、さらに強力な物を工房一丸となって、作り始めていた。
そして、時間はどんどん過ぎ、体力と気力の限界で倒れる者もでてきたころ。
「お邪魔いたします」
「ん?おぉ!セバス殿、すまんが今は取り込んでおってのぉ」
「はい、エミル様の依頼をお受けいただき感謝しております。それで、エミル様からこれを」
セバスが恭しく一礼すると、後ろに控えていた数名のメイドと執事が、大小さまざまな容器をマジックバッグから取り出し、マーカスへと見せた。
「これは?」
「当家料理長自慢の料理でございます。無理な願いへのせめてもの感謝とお伝えするよう賜っております」
セバスが賜った言伝をいうと、マーカスは笑顔を浮かべた。
「これはありがたい!エミル様にはくれぐれもよろしくお伝えくだされ!必ず最高の物をおみせると!」
「かしこまりました」
「おい!皆!ブレイダー家からの差し入れじゃ!」
「え?」
「うぉ~!飯だ!!」
マーカスの言葉で息を吹き返した錬金術士たちが料理へと群がった。
「マーカス様?差し出口申し訳ありませんが、当家からも人員をよこすことは可能ですが?」
「いや…それだけはいかんのじゃ…些細なプライドかもしれんが…儂らだけでやりとげなければならんのじゃ…」
「…そうでございますね…申し訳ありませんでした」
「いや、年寄りのわがままじゃて…すまんの」
セバスの言葉にマーカスが謝罪をのべた。
その後、全員であっというまに差し入れが空になり、セバス達が帰ると、再び工房内は忙しさに包まれた。
そして、日付が変わり、だいぶ日が高くなった頃
「失礼いたします」
「ん?おぉ?オリファちゃんじゃないかっ!どうしたんじゃ?」
工房のドアが開くと、オリファが礼をし、入室してきて、マーカスが心底嬉しそうに、両手をワキワキさせながら近づいた。
「それ以上近づくなエロ菌」
「うっほっ!辛辣ぅ!」
「コホン。本日はセナ様からの依頼によりまいりました」
「セナ殿から?なんじゃ?」
オリファの言葉に、マーカスが疑問を口にすると。
「今回のスタンピードでセナ様が倒された魔物のうち希少価値がある素材をこちらにとのことで運んでまいりました。」
「なっ!なんとっ!?」
オリファの申し出にマーカスが驚き、案内されるまま工房の外へでると、荷台に乗せられた大量の素材があった。
「こ、これを全部か…?」
「はい、お納めください」
マーカスのつぶやきに似た言葉に、オリファが礼をし帰っていった。
「……はっ!? おい!この素材を今すぐ運び込むのじゃ!!」
あっけにとられたままオリファを見送り、我に返ったマーカスが素材を工房へ運び込むように指示を出した。
その後、セナからもたらされた素材を使い、更に迅風の装具がグレードUPをした。そして、毎日エミルから食事も届き、工房は何とか効率をさげず動いていた。
メディーより持ち込まれた依頼を始めて3日目の朝早く。
バン!
「マーカスよ!マーカスはおるか!?」
「なっ!なにごとじゃ!?ってお主は!イース!なんじゃこんな朝こっぱやくから!」
突然、壊れるほどの勢いでドアが開き、この国の最高司祭のイースが嵐のようにやってきた。
「おぉ!ひさしいなマーカス!実は折り入ってお主に頼みがあってな!」
「無理じゃ!ほかを当たれ」
「これなんじゃがな?今度、我が孫がこの国の初代歌姫になるのでな!宝冠がなければカッコ悪い!それになにより孫に何かをおくりたい!」
「話を聞かんかっ!」
「ん?なんじゃ?孫のことを聞きたいのか?ええぞ?名をアリアと言ってな!?」
「そんなことではないわっ!」
「そんなこととはなんじゃ!そんなこととはっ!」
「うるさいわ!儂は今、ほかの依頼で手が離せんのだっ!ほかをあたれ!」
「そんなの後回しでいいじゃろがっ!わ・し・の!孫のが大事じゃろうがい!」
マーカスの言葉を聞かず、自分勝手な話をするイースに、おずおずとメディーが近づき話しかけた。
「あ、あの!お久しぶりです…イースおじい様」
「あぁん?って、おっ!?メディーか!随分大きくなったのぉ!元気じゃったか!?」
メディーの声に不機嫌そうに振り返ったイースだったが、メディーの姿をみて好好爺へと変貌した。
「あの、今おじい様が受けている依頼は私が頼まれたもので…初代英雄のセナ様の愛馬で私が世話している迅風の装具品なんです…」
「なんとっ!」
「セナ殿は儂の教え子じゃ!わかったら他へいけ!」
「ふむ!英雄と歌姫ゆかりの工房として名が馳せるな!」
「そんな名などいらん!手が足りんのじゃ!ほかへ行けといっとるじゃろがっ!」
メディーとマーカスの話を、まったく意に返さずいうイースに、さすがの二人も呆れた。
「まぁまぁ!儂のほうは、土台はできておるのだ!あとは装飾だけじゃ!王国一、いや!大陸一の錬金術師がつくった宝冠を孫にあげたいんじゃ!!」
「くぅ~、なぜこやつは昔からこうなのかっ!」
「え、えっと…おじい様?迅風の装具のほうは、設計図もありますし、あとは私達でやれるから…イースお爺様のほうをやってあげてほしい…です」
顔を真っ赤にし、涙目で言うイースを、気の毒に思ったメディーが言った。
「メディー!」
「くっ!…しかたない…メディーに感謝するがいい」
メディーの言葉に、イースが目を見開き驚いて、マーカスが苦々しい顔でイースに言った。
「あ、あぁ!もちろんじゃ!この恩はわすれんぞ!」
「いいから早くブツと図面をもってこい!装飾の材料もあるんだろうな!?」
「う、うむ!とうぜんじゃ!」
感動をあらわにしたイースに、ため息交じりにマーカスが声をかけ、爺さん同士が頭を引っ付け会いながら、ああでもない、こうでもないと話し合いをはじめたのをみて、メディーは自分たちの仕事に戻った。
そして、迎えた当日の早朝…。
「で、できた……」
メディーの震える声が聞こえ、工房の中はひっそりと音が消えた。
「だ、だれか動けるか…?これを…教会に届けてくれ…ぬか…」
次に息絶え絶えのマーカスの声が聞こえ、一番若い錬金術士が受け取り、フラフラしながら教会へと向かった。
「はは、女神が笑顔でてを振ってくれてるよ?」
「なぁ?ルイ?俺…なんだかとっても眠いんだ…」
工房のあちこちで、もはや屍と化してそうな錬金術士達が床に倒れながらブツブツ言っていた。
「み、みな…よくやってくれた…儂らはやりとげたんじゃ…胸をはって…とりあえずは…眠ろう…」
フラフラしながらもなんとか立ち上がったマーカスが全員に柔らかい笑顔でそういうと、全員が達成感に満ち溢れた顔で返事をし……。
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