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第3章 ―旅情初編―

新たなお供

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 王城での話し合いから1週間が過ぎ、2度目の話し合いの日を迎え、セナとギルスは登城し前回協力体制をとることになった4貴族と、王都にある各ギルドの長達を交え話し合いを行った。

 「それでは、各領主、各ギルド共に異存はないな?」

 話し合いの最後に国王が全員を見渡しながら聞くと、全員が頷いた。

 「それでは、今回決めたことを国として正式に文字に起こし、余が調印をすることで始めるとする」

 同意をした全員に国王が述べ話し合いは終わった。

 「それにしても、セナ殿は儂を退屈させんのぉ?」

 話し合いが終わると、マーカスがセナへ笑顔で述べた。

 「そうですか?」

 「まったくだぜ。まぁ、うちとしては引退した者達の再雇用先が一つ増えたってだけで、かなりおいしい話だがな」

 豪快に笑いながらサイスが言った。

 「そういってもらえて嬉しいです。またお二人や他の方々を頼る結果になって申し訳ないですが、よろしくお願いいたします」

 セナがサイスとマーカスに笑顔で礼を述べた。

 「急な呼び出しに何の話かと思ったが、よもや我らアマリウス聖教にまで話が回ってくるとは思わんかったぞ?」

 呆れたようにイースが話しかけてきた。

 「イース様、すいませんでした、ご協力感謝いたします」

 イースに気づいたセナが一礼しながら感謝を述べた。

 「いや、学校ができるまで期間、教会で子供たちに読み書きを教える代わりに、細かな村などにも領主の援助により教会を立てれるというのは、今後の我らの活動に対してもメリットが大きい。司祭を目指す者の受け入れも増やせる」

 セナの礼にイースが満足げに言った。

 「学校が出来るまでにそれなりの年月がかかりますし、始まったとしても9歳から入れる子はいいですが、14歳だと1年しかいられません。予備知識をある程度つけてもらって入学してもらうしかないんです」

 セナがイースやマーカスに申し訳なさそうに言った。

 「ふむ、たしかにな。よし!では学校が始まっても5歳から入学までの間、引き続き子供たちに読み書きを教えていくことにしようではないか!」

 「教会の人気稼ぎか?イースよ」

 「ちがうわ!バカタレ!そもそも教会とは、神に感謝し民が救いを求め、憩える場でなくてはならん場所なのだ!」

 イースがマーカスのチャチャに怒鳴るように答えた。

 「ほぅ?随分、ご本家様とは違うようだな」

 「あんな勘違いしてふんぞり返ってる似非共と一緒にする出ないわ!」

 マーカスの言葉にイースが心外だとばかりに怒鳴りつけた。

 「イース様、ありがとうございます」

 マーカスとのやり取りに息を乱したイースへ、セナが柔らかな笑顔を浮かべ礼を述べた。

 「そういえば、まだ孫は帰ってこんのか?」

 「ん?あぁ、近々戻ると連絡はきたからのぉ。とっくに向こうはでておるだろうよ」

 「アリアはどこかに出かけてるんですか?」

 マーカスとイースの言葉にセナが質問をした。

 「うむ、西側にある教会巡りじゃ」

 「そうなんですね、がんばってるなぁ」

 イースの言葉をきき、セナが感心したようにつぶやいた。

 「王派の東と南だけ回っておればいい物を、無茶をさせよって……何かあってからでは遅いんじゃぞ?」

 「それも……わかっておるわ。ゆえに今回は無理を言ってサーシェス殿と、スターシャ嬢にもついて行ってもらったのじゃからな」

 「セナ殿。少しよいかな?」

 神妙な顔をしたセナ達3人の元へ、国王がやってきた。

 「はい。なんでしょうか」

 そんな国王へ、セナ達は雰囲気を変え振り向き答えた。

 「ふむ、とりあえず今回の話し合いで、今後の方針の目途がついたからな。セナ殿には再び旅に出てもらってもよいと思ってな」

 「えっ?」

 国王の言葉にセナが驚きをあらわにした。

 「国王様、まだ早いのでは?」

 「そうじゃ、話がまとまったばかりじゃぞ?立案者がおらねばならんこともあるじゃろ?」

 国王の言葉にマーカスとイースが意見を述べた。

 「うむ。余もそう思うところもあるが、国より正式に此度のことが発表されれば、セナ殿に取り入りうまい汁を吸おうと思う輩もでてこよう?」

 「なるほどの。その前に国外へ避難してもらおうということかな?」

 「そういうことだ」

 「少しは頭を使えるようになったようじゃのぉ。ゲオルグよ」

 マーカスが感心し、イースがしみじみと言った。

 「うるさいわ!いい加減不敬ととるぞ!」

 「ふわっはっは!そこまで小さい器ではないとわかっておるわ!」

 「くっ!このおいぼれめ!」

 国王の言葉を一笑したイースに、国王が苦々しい顔で言った。

 「コホン。ギルスや他の者達にも言って了承を得ておる。この先はこの国の代表たる我々の仕事だ。セナ殿は、セナ殿のなすべきことをやるがよい」

 「……わかりました。ご厚意ありがたく頂戴したします」

 国王の言葉にセナが一礼し礼を述べた。

 「それでは、準備が整い次第、旅立ちます」

 「では、前回供をした者達にも準備させなければなりませんな」

 「いや、今回のお供は前回供をした者達ではない」

 「なに?」

 国王がマーカスの言葉に答えると、マーカスが驚きの声をあげた。

 「セナ殿には毎回、我らが勝手にお供をつけて申し訳ないと思うが、今回はがどうしてもついて行きたいと言ってな……すまんが連れて行ってやってくれぬか?」

 「ある者?」

 「我が孫を押しのいてまでとは、誰じゃそれは?」

 国王の言葉にセナが疑問を顔に浮かべ、マーカスは少し不機嫌そうに言った。

 「うむ……それはな?」

 「僕だよ!セナ君!!」

 言いずらそうにしている国王の後ろから、いつのまにいたのかアディオンが腰に手をやりふんぞり返りながら、出てきた。

 「アディオンさん!?なんで?」

 「ふっふっふ!驚いたようだね!ジルネイで君に逢わせたいヤツが居てね?それでさ!」

 驚くセナにアディオンが笑いをこらえることもせず、ウィンクしながら言った。

 「……頼めるか?セナ殿」

 「私はかまいませんが……」

 「じゃぁ!きまり!!3日後に出発するから準備を整えておいてね!」

 国王が祈るようにいい、セナが驚きながらも了承すると、アディオンが笑顔で出発日を口にした。

 「三日後!?随分早いですね!?」

 「まぁね!あぁ、それとマーカス?メディーも借りていくから、よろしくね!もうメディーには言ってあるからね!」

 「なにっ!?」

 アディオンの言葉にセナとマーカスが驚いているが、気にするそぶりも見せずアディオンが話を進めた。

 その後、ブレイダー邸へと戻ったセナとギルスが、セナの旅立ちのことをエミルをはじめとする屋敷にいるすべての人に話した。

 「いつもいつも急すぎますわっ!」

 話を聞き終わったエミルが興奮気味に立ち上がり言うと、その場にいたメイドたちも何度も力強く頷き同意を示した。

 「俺たちも急な話で驚いているんだ。なっ?セナ殿」

 「そうですね」

 「では、今回はアディオン様とメディーのお二人だけですか?」

 ギルスの言葉に頷いていたセナに、セバスが質問をした。

 「そうなりますね。馬車の馭者兼整備担当でメディーについてきてもらうことになったようです」

 セバスに、アディオンから聞いたことをセナが伝えた。

 それからブレイダー邸は、いつものように慌ただしい日を過ごしていった。

 
 

 
 

 




 
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