『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
12 / 178
1章 皇国での日々

11

しおりを挟む

 さて、今は朝食を食べ終わり一息ついたころ。扉がノックされて開けてみると、そこにいたのはしっかりとメイド服を着こんだ女性。あなた、誰ですか?

「スーベルハーニ皇子、お迎えに上がりました」

 え、お迎えですか? いや、本当にどういうことだ。

「あの、誰ですか……?」

「カンペテルシア皇子のメイドでございます」

 カンペテルシア、皇子? いや、本当にどういうことだろう。……、あ、もしかして前に言っていたやつですか?

「すでに教師の方がいらっしゃっております。
 お早く準備を」

「え、あの、えーっと」

 どうしよう、と思っていたらなんだかいつの間にか準備が整っておりませんか?今は兄上もリヒトもいないし、誰もこの人に言い返せないよね……。なんだか心配そうにこちらを見てくれているけれど、動けないみたいだし。

 あきらめてカンペテルシア様のところに行くことにしました……。


「遅い、いつまで僕を待たせる気だ」

「ま、まあまあ、落ち着いてください皇子。
 始めましょう」

 カンペテルシア様の部屋だというところに入ると、そこには椅子に腰かけたカンペテルシア様と教師であろうおろおろとした、気弱な雰囲気の男性がいた。いや、ここ広すぎませんか? 何これ、本当に一人用の部屋なの? 

「さあ、こちらに来て下さい。
 あなたがスーベルハーニ皇子ですね?」

「あ、はい」

「初めまして、私はダイシリト・キフトと申します。
 カンペテルシア皇子の家庭教師を務めております」

 あ、やっぱりこの人が教師でしたか。カンペテルシア様の隣にあった席を勧められると、すぐに授業が始まる。きっと僕が来るまで待っていたのだろう。

「では、まずはカンペテルシア皇子にとっては復習、スーベルハーニ皇子にとっては確認でこちらの問題を解いてみてください」

 出されたものを見ると、そこには問題が書かれていた。分野は一つだけでなく、いろいろ混ぜているようだ。確かにこれなら手軽に実力が見れそう。

 ということで、僕に勉強を教えてくれているリヒトのためにも、そして兄上のためにも失敗するわけにはいかない。集中して問題を解いていくと、そんなに難しくなく、量も多くなかったためあまり時間をかけずに解ききることができた。
 カンペテルシア様はどうなのだろう、と横を見ると、全然進んでいない。なのにもう集中力が切れてしまったようで、ペンで遊んでいる。この人、本当に僕よりも年上なの? その眼鏡、見かけ倒しすぎる。

「おや、もう解き終わったのですか?」

「あ、はい」

 見させていただきますね、というと僕の前から問題をとる。そして採点を始めていった。

「な、なぜもう解き終わっているのだ」

「いや、あの、なぜといわれましても……」

 解けたから、としか言いようがない。というか、僕が勉強をしだしたのってかなり最近だけど、この年まで教師が付いたことがなかったのかと驚かれた。つまり、本来はもっと前からつくものなのだ。そして、この皇子。母親は皇妃で公爵家の出身。つまり後ろ盾は十分だから、きっともっと前から教師がついていたはずなんだよね。なぜ、まだ解けていない?

「それは皇子が真面目に勉強をなさらないからですよ。
 ご興味を持ったものは感心するほどの集中力を発揮されますが、それ以外は全くですから。
 さあ、皇子は解けましたか?」

「うぐ、も、もうよい」

 そして半分ほどしか埋まっていないものを先生に押し付ける。先生はそれを苦笑いして受け取り、採点をした。

 こんな状態なのになんでこの皇子は僕を呼んだんだろう。勉強なら、とか言っていたからきっと勉強はできるんだと思っていたんだけれど。

「まあ、スーベルハーニ皇子の圧勝ですね」

 や、あの、どうしてそんなにもにこにことした笑顔でそんなことを言っているんですか? ほら、震えているじゃないか。

「スーベルハーニ皇子はどなたに教えていただいたのですか?」

「僕は、リヒ、ベルティア・ゴーベントに」

「リヒベルティア・ゴーベント様ですか!?
 なるほど、それは素晴らしい」

 え、なんで急に瞳をきらめかせたんですか? そしてリヒトってそんなに有名なの?

「リヒベルティア・ゴーベント様といえば、我々教育に携わる者からしてみれば一度はお会いしたい方!
 学園在学時から今までにない視点での切込みで注目を集め、学園教員にも推薦されたのにそれを拒んだ無二の方ではないですか」

「そんなにリヒベルティアは有名なのですか?」

「ええ、ええ。
 学園の教員といえば、我々にとっての最高峰ですから」

 少し気弱な人なのかな、といった様子だった先生が一変。ものすごく饒舌になっている。これ、いつも通りなのかな、とカンペテルシア様の方を見るとぽかんとしている。やっぱり珍しい状態なのね。

「ごほん、失礼いたしました。
 ですが、そうですか……。
 本当はこの問題はスーベルハーニ皇子のご年齢では難しいかも、とも思っていたのですが、それならば納得です」

「ず、ずるいぞ!
 そんなすごい人が教師についていたなんて」

「いえ、皇子。 
 それでもこの結果はスーベルハーニ皇子の実力なのです。
 皇子も決して頭がお悪いわけではございません。
 集中すれば、きちんと理解できるのですから」

 つまり、自分の努力不足だ、と暗に言われる。カンペテルシア様はぐっと唇をかむと、そうか、と小さく一言口にした。

「おい、もうお前は帰れ」

 急に呼び出しておいてそれはないだろ、とは思うけれどここにいたいわけではないので、お言葉に甘えてしまおう。ということで安心の宿舎へ帰ります。


 翌日、なぜか第一皇子であるキャバランシア皇子から贈り物と手紙が。中を見てみると、弟のやる気を引き出してくれてありがとう、との言葉とともに見るからに上質な勉強セットが入っていました。


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...