『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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2章 孤児院と旅立ち

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 食事後、おとなしくミーヤとシスターの部屋に向かう。行くのは決定事項なのだから、さっさと行ってしまった方が後が楽だ。ノックをすると、すぐにシスターの返事が聞こえた。

 部屋の中にはすでにシスターと司教が座って待っていた。そんなに待たせてはいないはずだけど、もう向こうの準備は整っていたらしい。これは早々に来ておいて正解だったな。
 
「よく来ましたね。 
 そちらに座って、司教にご挨拶を」

 シスターたちの示されたのは向かいの席。シスターと司教は隣り合って座っている。

「初めまして、ミーヤです」

「ハールです」

「やあ、こんばんは。
 ハールはここまで案内してくれて、どうもありがとう。
 ミーヤは初めまして、ですね。
 こんな時間に呼び出してしまい、すみません」

 にこやかな司教からは敵意は感じられない。安心してもいい気がする。まあ司教だし。

「ミーヤ、長くこちらに寄れませんでしたが、君の話はアンナからずいぶんと前に聞いていたんです。
 不思議な感覚を持っている子がいる、と。
 会えることを楽しみにしていました」

「私、ですか?」

「ああ。
 君さえよければですが、私とともに神島に来ませんか?
 君のその不思議な感覚はきっとここに来れば、より皆を助ける力になります」

 どうですか? と問いかける司教。神島。聞きなれないけれど、共にといっていたから、宗教の総本山みたいなところだろう。ああ、やっぱりミーヤの力は特別だったんだ。寂しい気持ちはあるけれど応援しないと、だよね。だけど、ならなんで俺もここに呼ばれたんだ?

「あの、私……」

 孤児である俺たちにはおそらく破格の道が示されたのだ。喜ぶかと思いミーヤの顔を覗くと、戸惑うような表情をしている。少し予想外だ。

「少しの間ここにとどまる予定です。 
 返事は帰るまでにくださればいいですよ。
   そして、ハール」

 あ、こっちに話が来た。さて、一体何を言われるんだろうか。

「君には可及的速やかにここを出て行ったほうがいい」

    ……へ? 一体何を言っているんだ。出て行け、じゃなくて、出て行った方がいい? シスターはうつむくばかりで何も言ってくれない。隣のミーヤも驚いているのが伝わってくる。えーっと?

「君はこちらにとどまらない方がいい。
 ……それに、その方が自由にやれるだろう?」

 わざわざ側によって威圧をかける気か? と警戒をしていると、最後の一言を俺だけに聞こえる小さな声で囁く。自由に。確かに今はみんなに隠れてシャリラントと訓練をしている。それをこの人は知らないはず、だよな? これについて詳しく言い当てたわけではないし。なんだかこの感じ、ミーヤに似ている気がする。

「そういうことです。
 ハール、なるべく早くここを出て行くように……」

「……わかりました。 
 長くお世話になりました」

 後一年、ここにいてこれからのことを考えようと思っていたのに、まさかの速やかに出ていくことに。もちろん、一人で出ていくだろうから、一から自分でこれからの道を決めていかなければいけないのか。まあ、皇国側に見つかったらどうしよう、という一番の懸念材料について、髪色、そして少年から青年に成長することで、見た目が多少でも変わっている。きっとどうにかなるだろう。

「……すみません、少し訂正します。
 2日後の昼に出るとよいでしょう」

 俺に言ってきた後、何かうつむいてじっとしているなとは思っていたが、急に訂正された。え、2日後? まあ、ずいぶんと急だが、特に荷物は多くないから間にあうだろう。でもなんで2日後? なんだかそれ以上質問できる空気でもなくて場は解散。本当にいろいろと急な人だ。


「あの、本当に出て行ってしまうの?」

「うん、そうなるかな。
 ミーヤはどうするの?」

 ここに多少の愛着はあっても、絶対にとどまりたいという意思もない。出ていけ、と言われたら出ていこう。それに何かわけもありそうだし。

「私、わたしは……。
 ハールと一緒に行きたい」

 ……へ? 今俺と一緒に、といいました?

「え、え?
 い、いやいやいやそれは無理じゃないか?」

「やっぱり、嫌だよね、私なんかと一緒じゃ……」

「そういうことじゃない!
 でも、この後はどんな日々が待っているのかわからないから!
 ミーヤを危険な目にはあわせられないよ」
 
 それにここから出たら、正直いつ皇国の追手が来るかわからない。もちろんもう忘れ去られている可能性だってあるけれど。というか、その可能性にかけたい。とにかく、そんな危険かもしれないことに、わざわざ巻き込む必要はない。

「私の、安全のため?」

「うん。
 それに、ミーヤは不思議な力を持っているよ。
 それに救われたことはたくさんある」
 
 私が、とうつむく。えっと、ちょっとこの反応は予想外。どうしよう、とおろおろしていると、今までに見たことがない強い瞳でミーヤが僕のことを見上げた。

「私、神島行く!
 それで、今よりももっとすごくなって、いつかハールに会いに行くよ」

 いうだけ言ってお休み、と部屋に入る。え、ちょっと待って今のなに。え、え?

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