『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio

文字の大きさ
31 / 178
2章 孤児院と旅立ち

13

しおりを挟む
 さて、行くと決めたはいいが、どうしようか。弓、は飛ぶやつがいたら使おう。ひとまずは地上のやつらをどうにかしないといけない。リキートも剣を構えているし、ちゃんと対応できそうだ。

「行こう!」

「な、なんなんだ、お前ら!
 武器なんて持って、正気か!?」

「正気だが?」

「なっ!?
 勝手にしやがれ!」

 あーあー、なんか言われてる。まあ気にしないし、もちろん勝手にするけど。なんかリキートに呆れた目を向けられているんだが?

『いいですか、魔獣には弱点となるところがあります。 
 例えばあのゴードウルフ』

 え、やっぱりあれウルフなの? という突っ込みを完全無視され、弱点を教えられる。ゴードウルフと呼ばれるこいつの弱点は目。いや、そりゃそうだろ!? たぶんほとんどのせいぶつ目が弱点だぞ? 

『いえ、目が弱点にならない魔獣もいます。
 そもそもわかりやすい目がない魔獣もいますから』

 何それ。俺はシャリラントに教えてもらえるからいいが、何も知らないと勝ち目なかなかないんじゃ? うん、いま考えることではないな。

『ちなみにゴードウルフは首が鋼のように固いのでハールの持っている剣はもちろん、リキートとかいうものが持っている剣でも難しいです。
 確実に目を狙ってください』

 え、初めから難易度高くありません? あ、でもきっともう一つの方は簡単に倒せるやつだよね、そうだよね!?

『ゴブリンは、いうなれば全身が弱点です』

「は!?」

「え、ど、どうしたの、ハール」

「あ、いや、何でもない」

全身!? 全身が弱点って何それ。倒し放題じゃん。

『しかし、その代わりに相当傷に強いです。
 そうですね、ハールのお持ちの剣でしたらどちらが耐えられるか……』

 それ、俺勝ち目なくない? え、なんでけしかけたの、シャリラント。

『大丈夫です。 
 私が補助しますから。
 それにいざとなったらハールが魔法を使えばいいのです』

 ちょっと待って、補助ってまずくない? それに魔法、この服で使えるわけない。この状況下ならおそらくばれないとは思うが、でも胸元が光るのがうっすらと見えてしまうことが判明している。

「ハール、ぼーっとしてないでよ‼」

「あ、ごめん。
 リキート、ウルフの弱点は目、ゴブリンは全身どこでもいいがとにかく打たれ強い」

「え、あ、そうなの? 
 よく知っていたね」

 さて、これはどうしようか。話しているうちにどんどん住民は居なくなっていたらしい。魔獣たちの狙いがこちらに向いてる。はい、覚悟決めるしかないですね。

 リキートが右を行ったことで、俺は左を行く。左の方がウルフが多い気がするの気のせいか? でも俺の剣だとウルフの方が倒しやすいのか? まあどうにでもなればいい!

 木から作り、シャリラントの強化を受けた剣。下手な剣よりはおそらく強いが、でもやっぱり不利ではあるのだろう。というか、目!? どうやって狙う? いっそのこと矢で狙った方が早かったのでは? なんて言っている間にこっち襲ってくるー。

 襲ってきたウルフを剣で止める。うーわー、ちかいって。剣かじってるし、よだれ垂らしているし。

『手伝っても?』

 あ、はいお願いします。だって、これ絶対目を狙えない。無理。返事をした途端、剣からぶわっと強風が巻き起こる。その勢いに驚いてかじっていたウルフが剣から離れる。その間にウルフがより集まっている。ゴブリンはここから一定の距離を開けている。

 目、ね。うん、これだったら、うまくいったら一気に減らせるはず。ということで、シャリラント、また補助よろしく。

『ええ、かしこまりました』

 想像するだけで正確に伝わるの楽だわ。それに風ならちゃんと見ていなければ、何か起きた、くらいで済むはず。剣をふるう高さ。そして速さそれだけを考える。風はシャリラントに任せればいい。

 ぐっと剣を構える。何かを感じるのか、ウルフがじりっと構えた。腰を落とし、剣を水平に構える。刃先の高さはちょうどウルフの目の高さ。はっと息を吐き出す。そして一気に一周分剣をふるう。本当に、俺を囲んでくれたから都合よかったよ。

 シャリラントの補助ももちろん完璧。おかげですぱっと切れてくれた。バタバタと倒れていく仲間の体に、残ったウルフがより警戒度を上げるのがわかった。ゴブリンはなんだか喜んでいる?

『さて、これからどうしますか?』

 ま、ひとまず地道に倒していくしかないか。

『片目でもいいので、目を狙ってください』

 片目でもいいのか。なら少しは勝ち目がある、か? なんだか、面倒なことになったな。

 地道に剣をふるっていく。背後から襲っていくウルフもいるが、適度に近づいたところで足蹴にする。もちろん倒せはしないのだが、それでも一時しのぎくらいにはなる。いや、なんでこんなにいるんだよ。あーもう!

「だ、誰か、誰か、助けて……」

 今の……。聞き間違え、ではないか。ひたすらに剣をふるうと徐々にウルフが減っていく。なんとか別の場所に行く、道ができていた。ゴブリンはこちらにはあまり興味を示していない。ウルフの死体をあさっているのだ。

『助けに行くのですか?』

 まあ、これで死なれても後味悪いし。見た感じダンジョンもあっちの方にある。なら、少し様子を見るくらいいいだろう。

 一度聞こえたかすかな声、それだけを頼りに進む。リキートはまだ戦っているらしい。こちらから声をかけたら、また声を出してくれるか?

「誰か、いるのか?」

「……、あ、だれ、か。
 誰か、助けて!!」

 あっちか! やっぱりダンジョンの方か。逃げていく住民を追っていったのか、こっちの方はだいぶ魔獣の数が少ない。だからこそ、声の主も生き残っていたのだろう。そのあとも声をかけながら場所を探る。そして、やっと見つけた先、そこにいたのは。

「あ、あなた、が……?
 お願い、助けて。
 私では……」

 一筋、涙がほほを伝う。その少女の腕の中にはけがをしている子供がいた。頭をけがをしているのだろう。少女はその箇所に手を当てている。そして、その手は淡く光っていた。

「一体何を?」

「けがを、していたから、治さなくちゃって。
 でも……」

「俺にも、彼を助けることはできない」

 そういう助けて、なら俺にできることはない。シャリラントのためにもダンジョンに向かいたい。それにこのあたり、魔獣が少なくなっているといっても、ゼロではない。
      
    動かないほど強力というシャリラントの認識阻害があって、魔獣の意識はこちらに向いていないが、いつまでもこのままではいられない。

「そん、な……」

「どうする?
 ここから出たいというなら手助けする。
 ただ、彼と共に抜け出すのは難しい」

 少年といっても、さすがに意識のない少年を背負い、少女を守りながら、魔獣をくぐり抜けるのは無理だ。それに側に人がいると不自由な面が多い。

「ごめん、ごめんね、チェシャ。
 ごめんね、力がないお姉ちゃんで……」

 ごめんね、と涙でぬれたほほを少年のほほに当てる。ああ、この少年はこの子の弟だったのか。兄弟、か。

「すみません、行きます」

 そっと少年を横たわらせると、少女は顔を上げてこちらを見る。まだ泣きそうだが、一応涙は止まったらしい。

「行こう」

 ぐっと手を引っ張り立ち上がらせる。隠れていた家から連れ出して、住民が逃げだした方向に進んでいく。できるだけ走って逃げる。

    動き出した時からシャリラントの保護は消えている。襲ってくる魔獣をいちいち相手にしてられない。だが、先ほどよりもこちらの様子見をしている? あまり進んで襲ってはこない。

「あ!」

 まずい、ゴブリンを力いっぱい切り倒したら、剣が折れてしまった。これで目に見える武器は矢だけになってしまった。接近戦には向かない。

「あ、あの?
 大丈夫ですか?」

 もうどうにでもなれ! とにかく走り抜ける。ひとまず村の外にはもう魔獣はいないらしいから、そこまで送れば後は一人で逃げられるだろう。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...