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4章 皇国
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思い切り息を吸って、そして吐き出す。心臓が勝手にばくばくと音を立てている。まさか、今になってこんなに緊張するとは思わなかった。服装はあまり上品ではないものを。今日から俺は下働きのハールになるから。
「ここからは私もあまり口出しができません。
何か、動かないといけないと判断することがあればもちろん助けますが……」
「うん、ありがとう、リヒト。
頑張るよ」
リヒトの屋敷でこもっている期間、実はすごく楽しかった。それぞれの立場を整える期間、フェリラ―チェシャは特に意識して男子になっていた。服装はもともと動きやすいものばかりだったけれど、より男子が着るようなものにした。口調は、まあもともと荒かったからそのままで。
髪も、バッサリと切っていた。さっぱりした、とにかっと笑ったチェシャ。その心情を探ることはできなかったけれど……。でも、そんなチェシャの側にリキートがいてくれることを本当に感謝している。屋敷を出るときは任せておいて、と頼もしい顔で送り出してくれた。
はぁ、これから一人で頑張らないといけないのがこんなに心細いとは……。しばらく二人が一緒にいてくれたからこそ、こんな気持ちになってしまう。
「そろそろ行きましょう」
「うん」
本当にこんな状態でここに帰ってくるとは思っていなかった。いつか……。
「リヒベルティア様、そちらの子が?」
「はい。
ハールといいます」
「ハール、ですね。
わかりました、引き受けましょう」
「ああ、よろしく頼む」
リヒトに一礼をした後、こちらに、と案内をされる。その視線があまりいい気分のものではないけれど、ここは我慢するしかない。リヒトはあくまで冷淡にお願いします、とこの場を去ろうとする。去り際、目の前の人に気づかれない程度に背中を軽くたたかれる。……、ありがとう、リヒト。
「私は下働きを取りまとめているマークです。
今からあなたを指導係の人に連れて行きますが……。
リヒベルティア様の紹介とはいえ、ここでの扱いは皆同じ。
特別扱いは期待しないように」
いいですね、と強く言われる。その表情も冷たい。そんな言われなくてもちゃんとわかっているよ、そう思っていてもちゃんとうなずく。まあ、これで変に勘違いした人が来られても迷惑だろうし。
そのあとはお互いに無言のまま歩いていく。空気が重いって……。あまり歓迎している感じでもないし、なんだか速攻で本当にやっていけるのか不安になってきた。
「グルー!
いますか」
「あれ、マークさん。
もしかしてそいつが?」
「ああ、今日から入ったハールだ。
まずは部屋に行って、軽く中を案内しながら仕事の説明を。
今日はそれで終わっていい」
「わかりました」
マークさんが立ち去った後、さて、と改めて向き合うグルーと呼ばれた人。一体どんな人だろうか、と思わず身構えたけれど、予想外にその人は人懐っこい笑みを浮かべた。
「ハールって言ったな。
俺はグルーだ、よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「はは、そんな固くなるなって。
俺たち下働きがお偉いさんに会うことなんてないし、自分の仕事をちゃんとこなしとけばめしにありつける。
しばらくは俺が指導役として一緒に行動するし、まあ、気軽にな」
「ありがとうございます」
予想外にいい人……。よかった、ちょっと安心した。部屋に案内するな、と言われてまた歩き出す。この部屋にはほかにも人がいたけれど、なんだかこちらを伺っているような感じ?
「いやー、いきなり俺が指名で指導係にって言われた時は何事かと思ったよ。
あんま頼りないかもしれないが、まあがんばるよ」
その言い方の緩さが、なんだか安心できる。それに指名ってもしかしてリヒトが手をまわしてくれたのかな?
そして案内された部屋は2人部屋とのこと。何となく大人数の部屋になるのかとおもったからありがたい。とはいえ、かなり狭いけれど。二段ベッドがあり、その横に机と小さめのクローゼットが入り口横と窓際に一つずつ。これが机横並びならそこそこ場所を取れるのに。
「俺がもう窓際の机を使っちゃってるから、入り口側でいいか?
ベッドも下使っちゃってる」
「あ、はい!
大丈夫です」
もともと少ない荷物を机の上に。服は休み中のものを持ってくればいいということだったので、本当に少ない。服はその人の財を表しやすいから、なるべく持ち込みたくなかったのだ。
「で、これが仕着せだ。
仕事の時は毎回これを着てもらう。
3着分配布があるから、洗濯しつつ着まわしてくれ。
サイズの問題もあるし、早速着てみてくれ」
「わかりました」
シャツとズボン、それにベストだけのシンプルな服。見た目はそんなこぎれいな感じでもないけれど、意外とそんなに悪いものではないらしい。思っていたよりもゴワゴワとしてなくて安心した。
「うん、ぴったりみたいだな。
じゃあ、荷物整えたらそれを着て職場を案内するな」
その言葉に急いで持ってきた荷物を机やらクローゼットやらに押し込む。よし、これでいいだろう。って、なんかくすくす笑われている?
「そんな急がなくて大丈夫だ。
……行こうか」
うう、なんか恥ずかしいんだが。
「ここからは私もあまり口出しができません。
何か、動かないといけないと判断することがあればもちろん助けますが……」
「うん、ありがとう、リヒト。
頑張るよ」
リヒトの屋敷でこもっている期間、実はすごく楽しかった。それぞれの立場を整える期間、フェリラ―チェシャは特に意識して男子になっていた。服装はもともと動きやすいものばかりだったけれど、より男子が着るようなものにした。口調は、まあもともと荒かったからそのままで。
髪も、バッサリと切っていた。さっぱりした、とにかっと笑ったチェシャ。その心情を探ることはできなかったけれど……。でも、そんなチェシャの側にリキートがいてくれることを本当に感謝している。屋敷を出るときは任せておいて、と頼もしい顔で送り出してくれた。
はぁ、これから一人で頑張らないといけないのがこんなに心細いとは……。しばらく二人が一緒にいてくれたからこそ、こんな気持ちになってしまう。
「そろそろ行きましょう」
「うん」
本当にこんな状態でここに帰ってくるとは思っていなかった。いつか……。
「リヒベルティア様、そちらの子が?」
「はい。
ハールといいます」
「ハール、ですね。
わかりました、引き受けましょう」
「ああ、よろしく頼む」
リヒトに一礼をした後、こちらに、と案内をされる。その視線があまりいい気分のものではないけれど、ここは我慢するしかない。リヒトはあくまで冷淡にお願いします、とこの場を去ろうとする。去り際、目の前の人に気づかれない程度に背中を軽くたたかれる。……、ありがとう、リヒト。
「私は下働きを取りまとめているマークです。
今からあなたを指導係の人に連れて行きますが……。
リヒベルティア様の紹介とはいえ、ここでの扱いは皆同じ。
特別扱いは期待しないように」
いいですね、と強く言われる。その表情も冷たい。そんな言われなくてもちゃんとわかっているよ、そう思っていてもちゃんとうなずく。まあ、これで変に勘違いした人が来られても迷惑だろうし。
そのあとはお互いに無言のまま歩いていく。空気が重いって……。あまり歓迎している感じでもないし、なんだか速攻で本当にやっていけるのか不安になってきた。
「グルー!
いますか」
「あれ、マークさん。
もしかしてそいつが?」
「ああ、今日から入ったハールだ。
まずは部屋に行って、軽く中を案内しながら仕事の説明を。
今日はそれで終わっていい」
「わかりました」
マークさんが立ち去った後、さて、と改めて向き合うグルーと呼ばれた人。一体どんな人だろうか、と思わず身構えたけれど、予想外にその人は人懐っこい笑みを浮かべた。
「ハールって言ったな。
俺はグルーだ、よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
「はは、そんな固くなるなって。
俺たち下働きがお偉いさんに会うことなんてないし、自分の仕事をちゃんとこなしとけばめしにありつける。
しばらくは俺が指導役として一緒に行動するし、まあ、気軽にな」
「ありがとうございます」
予想外にいい人……。よかった、ちょっと安心した。部屋に案内するな、と言われてまた歩き出す。この部屋にはほかにも人がいたけれど、なんだかこちらを伺っているような感じ?
「いやー、いきなり俺が指名で指導係にって言われた時は何事かと思ったよ。
あんま頼りないかもしれないが、まあがんばるよ」
その言い方の緩さが、なんだか安心できる。それに指名ってもしかしてリヒトが手をまわしてくれたのかな?
そして案内された部屋は2人部屋とのこと。何となく大人数の部屋になるのかとおもったからありがたい。とはいえ、かなり狭いけれど。二段ベッドがあり、その横に机と小さめのクローゼットが入り口横と窓際に一つずつ。これが机横並びならそこそこ場所を取れるのに。
「俺がもう窓際の机を使っちゃってるから、入り口側でいいか?
ベッドも下使っちゃってる」
「あ、はい!
大丈夫です」
もともと少ない荷物を机の上に。服は休み中のものを持ってくればいいということだったので、本当に少ない。服はその人の財を表しやすいから、なるべく持ち込みたくなかったのだ。
「で、これが仕着せだ。
仕事の時は毎回これを着てもらう。
3着分配布があるから、洗濯しつつ着まわしてくれ。
サイズの問題もあるし、早速着てみてくれ」
「わかりました」
シャツとズボン、それにベストだけのシンプルな服。見た目はそんなこぎれいな感じでもないけれど、意外とそんなに悪いものではないらしい。思っていたよりもゴワゴワとしてなくて安心した。
「うん、ぴったりみたいだな。
じゃあ、荷物整えたらそれを着て職場を案内するな」
その言葉に急いで持ってきた荷物を机やらクローゼットやらに押し込む。よし、これでいいだろう。って、なんかくすくす笑われている?
「そんな急がなくて大丈夫だ。
……行こうか」
うう、なんか恥ずかしいんだが。
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