『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

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6章 再会と神島

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 教皇との対話がセッティングされたのは俺がクリエッタと出会って2日後のことだった。その間は本神殿で自由に過ごしていいと言われ、クリエッタと会話したり、ユベリナに案内してもらって本神殿をうろうろとしてみたりとそれなりに楽しい日々を過ごしていた。

 教皇にお会いするということでまた正装をしなくてはいけないのか、と内心げんなりしていたらそんなことはなかった。普段着で気負わないで来てほしいと言われたのだ。ありがたい、ありがたいがそれでいいのか教皇猊下⁉ どうやら形式としては身内でお茶しよう、くらいののりらしいし。

「こんにちは、お招きありがとうございます、教皇猊下」

「やあ、初日以来だね、スーベルハーニ。
 教皇猊下、なんて他人行儀に呼ばないでほしいな。
 どうか、アークルセイと」

「で、ではアークルセイ猊下」

「もう、別に名だけでいいのに」

 そんな不満そうにされてもですね……。さすがにこれ以上の譲歩は難しい、とじっとアークルセイ猊下の顔を見ているとあきらめてくれたようだ。

「……無事に精霊と契約できたのだね」

「あ、はい。
 猊下にはクリエッタが見えるのですか?」

 ここ数日で知ったことだが、どうやら精霊は見える人と見ない人がいるらしい。ちなみに、クリエッタは今俺の周りを楽しそうに飛び回っている。

「うーん、光としては見えているよ。
 個々の識別は残念ながらできないけれど」

「そうなのですね」

 まあ、精霊の識別は精霊と契約しているミラの民しかできないって言っていたし、当たり前か。

「ねえ、スーベルハーニ。
 ぜひ君の話を聞かせておくれ。
 私はこの島から出たことがないんだ」

「俺の話、ですか? 
 何を話したらいいのか……」

「君の、旅の話を。 
 それと今の君にとって皇国がどういう存在なのかも」

 にこりとほほ笑むアークルセイ猊下。でも、その視線はどこか鋭さをはらんでいた。そんな態度を不思議に思いながらも、ひとまず掻い摘みながら話をしていく。話しの初めは孤児院を出たところから。そして、皇国に戻り、皇帝をどうのこうのした話は割愛で。あまり時間がない、というのはもとから言われていたしね。

「最後に、俺にとって皇国がどういう存在か、ですか……」

 どういう存在か。いまだによくわからない。でも。

「俺の大切な人たちがいる場所、ですかね」

「……そう。
 君は土地ではなく、人を大切にするんだね」

 カチャ、とわずかな音がきこえる。遠くに行っていた視線をアークルセイ猊下に戻すと、思いのほか穏やかな表情でお茶を口にしていた。そういえば俺ものどが渇いていたんだった。アークルセイ猊下もお茶を飲んでいるし、俺も飲ませてもらおう。

 用意されていたお茶は冷めていてもおいしい。おそらく、初めから冷めたあと飲むことも想定していたのだろう。初めに侍従が飲み物とかを用意して部屋を出てから、誰も入ってきていないし。

「スーベルハーニはこの島がどのような経緯で神島と呼ばれるようになったか聞いたかい?」

「あ、はい。
 ここに来る途中でティアナ様に聞きました」

「そう。
 そういった経緯があるから、この島の人たちは外に対する警戒心が強い。
 特に皇国に対する、ね。
 だが……、その行為は過去のものになりつつある。
 私は教皇として見極めなければ」

 真剣な表情をふ、と緩めると今日はありがとう、と言われる。また宴で、そう言葉を交わして俺はアークルセイ猊下と別れた。話していたときは何も考えていなかったけれど、今日の猊下は普通に話通じたな。

 
「あ、スーベルハーニ様。
 明日の宴に着ていただく服が届きました。
 一度着ていただいてみてよろしいでしょうか?」

「ああ、分かった」

 初めは皇国から持ってきた服を着ようと思っていたが、リーンスタさんによければこちらで用意した服を着てほしいと言われたのだ。それに対して俺は深く考えずに了承しました。まあ、ここで断って角立てる必要もないしな。

 ユベリナに手伝ってもらって服を着てみる。白タイツとかはかされそうになったら速攻で断ろうと思っていたが、そんなことはなかった。本当に良かった。全体のフォルムはこの島の伝統であるゆるっとしたもの。布が薄く青に染められていて、帯は銀。そこに赤や黒で刺繍が施されている。これ、俺の色に合わせたのだろう。 
 合わせるといってももともとが緩いフォルム。かなり調整がしやすい。俺が服を着た状態でユベリナが軽く糸で服を止めていく。

「大丈夫そうですね。
 とてもお似合いです」

「ありがとう」

 軽く確認が終わると元の服に着替える。あの服、楽ではあるんだけれど、気を付けていないとすぐに型が崩れるから気を遣うんだよね。やっぱりいつもの服が一番気楽! 服を回収してユベリナが去っていくと、ようやく一息付けた。

「ハールは神島の衣装も似合いますね」

「シャリラント。
 あの服、誰でも合うんじゃない?」

「そんなことないですよ。
 ……宴が終わったら、いよいよですね」

 いよいよ。始まりのダンジョンに行くことになる。そこに眠っているというリンカ様はどういった人なのだろうか。俺がリンカ様に会うことで何が起きるのか。一切予想はできないが、何かが、皇国の立ち位置が変わればいい。

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