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6章 再会と神島
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しおりを挟む宴が始まったとはいえ、先ほどのこともあり俺はどこにいればいいのか。座席なんてないし、いろんなところからここには来るな、といった圧を感じる。もう挨拶は終えたしいっそ帰るか?
「あ、あの、スーベルハーニ様!」
リーンスタさんたちに声をかけて戻ろうか、そう考えているときにふいに声をかけられた。聞き覚えのないその声は緊張をはらんでいる。そちらに視線を向けると、やはり見覚えのない人がいた。だが、その服装からしてユベリナと同じ立場の人だろう。
「なにか?」
「よ、よろしければこちらで共に食べませんか……?」
「俺と、ですか?」
まさか誘ってくれる人がいるとは思わず、ついそう口にしていた。とたんにその人はあ、僕らとなんかは嫌ですよね、と小声で言って下を向いてしまう。って、そうじゃなくて!
「いや、あの話の後で俺を誘ってくれる人がいるとは思わなくて!」
素直に伝えると、一瞬きょとんとする。それからすぐにほほ笑んでくれた。
「ユベリナ殿から話を聞いていたのです。
それで、一度話してみたいと思っていまして」
「ユベリナから?」
いったい何を伝えたというのだろう。妙にキラキラとした目でこちらを見ないでいただきたい。いたたまれない、そう思ってシャリラントに助けを求めようとしたのに、シャリラントはいつの間にかどこかへ行ってしまっていた。
どうやらユベリナはかなりいいように俺の話をしてくれたらしい。先ほどの一幕を見ていてもいい印象を持っていてくれるなんて。そわそわとした気持ちのまま、勧められたとことに腰を下ろすと、一気に口を開いた。
「僕たち、一度もこの島から出たことがないんです。
なので島の外のことは全然知らなくて」
「ぜひ話を聞かせていただきたいんです」
なるほど、だからこんなにも積極的だったのか。俺自身のことでないのなら答えられることも多いかもしれない。そう思って何が聞きたい? というとお互いを見合わせた後に、おずおずと質問をしだした。
質問に答えていると、遠慮がちだった周りの人も徐々にこちらに声をかけるようになってくる。この島からはそうそう簡単に外に出ることはできないのだろう。それこそミラの民など特殊な事情がない限りは。でも、興味はある。それがよく分かった。
「そうだ、こちら食べてみてください!
なかなか食べる機会がない、ジヘド様の料理なのです」
「ジヘドさんの!」
そういえば、この宴で料理を作ると言ってくれていた。本当に作ってくれていたのか。ワクワクとしながら見慣れない料理を口にしてみた。
「っ!
おいしい!」
本当においしい。クリーミーで濃厚な味付けなのに、後味はすっきりとしている。だからかいくらでも食べられそうだ。これは魚料理、だよな? 骨も丁寧に処理されているから、何の気兼ねもなく食べられるし。
「おいしいですよね!」
「そんなに褒められると作ったかいがあるね」
わいわいと料理を堪能していると、ふいにジヘドさんに話しかけられた。ほかにも神剣の主たちがそろっていてにわか人々がざわついている。一緒にいた人たちもまさか本人に話しかけられるとは思っていなかったのか、とても慌てている。その様子がなんだかおもしろい。
「ふ、は、あははは!
そんな慌てなくても!」
我慢しきれずに笑いだすと、ピタリと言葉が止まる。全員の視線がこちらに集まった。え、そんな反応されるようなことした?
「そんな風に笑っているところ、初めて見たな。
そうしていると、年相応に見える」
「ええ、そうですね。
楽しんでいただけているようでうれしい限りです」
「あ、ありがとうございます?」
どう返すのが正解かわからなくて、ひとまずそう返すと微笑まれてしまった。なんだか、恥ずかしいんだが……。そのあと少し話をした後、ジヘドさんたちは別のところにも顔を出さないと、と別れた。
そうして宴も終焉に近いたころ、気まずそうにとある一団がこちらにやってきた。
「あなた方は……」
「その……、スーベルハーニ様に謝りたくて……」
その人たちは先ほど、俺に対して受け入れられないと叫んだ人たちだった。一体、何を言いに来たのだろうか、と少し警戒していた俺に謝りたい、そういった人たちはすぐに頭を下げてきた。
気が付けば俺のすぐ後ろにはシャリラントが戻ってきていた。もちろんクリエッタも。
「あなたがシャリラント様に、そして精霊に好かれていらっしゃることはすぐにわかるのに。
どうしても皇国を受け入れられない気持ちが先走りました。
大変申し訳ございません」
「……あなた方が皇国を受け入れられない、その気持ちはわかります。
もう俺はあなた方に無理に受け入れてもらおうとは思いません。
簡単に和解するには年月が経っていますから」
「そう言っていただき、ありがとうございます。
あまりにも急な流れに気持ちが付いていけず、あなたにぶつけてしまいました。
反省しております」
「……その謝罪を受け入れます。
俺も敵対したいわけではない」
「ありがとうございます」
もう一度頭を下げると、その人たちは去っていった。そのとたん周りからはほっと息を吐きだす音が聞こえた。意識していなかったが、だいぶ緊張させてしまったようだった。
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