姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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1章 変わる日常

4話 姉の婚約(4)

 お姉様に見送られて私室へと戻ると、全く望んでいない来訪者がいた。なぜこの人は当たり前のように私の部屋に勝手に入り込んでいるのでしょうか?

「アンティーナ、どうしてここにいるの?」

「遅かったわねウェルカお姉さま。
 でも本当にここにはなんにもないわねぇ」

 わざとらしく見回しながらそんなことを言ってくる。もともとはぬいぐるみやきれいなドレス、いろいろなものがあったのだ。それをすべて奪っておいてよく言う。腹が立つがここは我慢してにっこりと笑みを作った。

「そうね。
 でももうすぐここを立つのだから丁度いいかもしれないわ。
 それでどうしてここにいるのかしら?」

「ふっふっ。
 アゼリア姉さまの侍女としてなんて、あはは!
 お父さまも本当に面白いことをお考えになるわね。 
 そうねぇ、かわいそうなお姉さまを慰めに来たの。
 せいぜい恥にならないようにね」

 それのどこが慰めというのだろうか? 我が家にはあまり本の類がないため私も知識が豊富なわけではないが、それでもその使い方は間違っていると断言しよう。なんというか、性格の悪さがにじみ出ている。

「あら、ご心配ありがとう。
 アンティーナも頑張ってくださいね」

 私がこの家で学んだ唯一といっていいもの。それはこの鉄壁の笑顔だ。本心とは関係なくこの顔は笑ってくれるのだからありがたい限りだ。

「ふんっ。
 今のうちに笑っているといいわ。
 ああ、あなたのような人が同じ姓を名乗っているなんて……」

 私ってばかわいそう、みたいな演技はもうおなかいっぱいだ。こっちこそ願い下げである。それにあなたの母君は実家の姓を名乗らせてもらえない、つまり実家から縁を切られているのによくそんな態度がとれるものだ。

 いくら言っても私が笑みを崩さないのが面白くなかったのか、アンティーナはその後部屋を去っていった。本当に暇な人である。アンティーナは今8歳。この年齢でここまで完成されていて果たして大人になったらどうなるのか、それはきっと私が心配することではないのだろう。

「お嬢様、王都へは何をお持ちになりますか?」

「そうね、ドレスはもともと少ないから三着とも。
 それと……」

 詰めるものの指示を出していくと、侍女たちは用意に取り掛かる。もともと私物が少ないのだからきっと明日の午前には準備は終えているでしょう。

 そうして準備を進めていると、部屋に小さなノックの音が響いた。

「誰かしら?」

「おねえさま、はいってもいいですか?」

 ひょこっと顔を出したのは弟のコーネリウス。まだ幼いから自分の母や姉と私たちの確執をあまりわかっていないのかこうして頻繁に私の部屋を訪ねてくるのだ。

「ええ、どうぞ」

「きょうはこのごほんをよんでほしいのです」

 一生懸命にそう伝えてくる様子は本当にかわいい。この子がアンティーナと両親ともに一緒だなんて信じられないくらいだ。

 コーネリウスを招いてともにベッドに入ると、彼が持ってきた本を読んであげる。本当なら実の姉であるアンティーナの仕事な気もするが、今回も忙しかったのだろう。
 少しするとコーネリウスはすぅすぅと寝息を立てて眠りへとついてしまう。そうすると彼の侍従が私室まで運んでくれた。

 それから、ようやく私も湯あみをして布団に入る。決して良い夢が見られるわけではないが、それでも私は目をつむった。

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