姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio

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1章 変わる日常

32話 公爵邸での生活(3)

「お前は何をしにウィリット神国へ行っていたんだ!
 あんな年齢の子がいるなんて……」

 お姉様と共に本宅の食堂に向かうと、その近くで声を潜めながらも怒っている声が聞こえてくる。この声はおじい様?

「仕事だよ。
 ちゃんとやってきたことは父上もご存知でしょう?」

「だが……!」

「もう陛下にはご報告の際に許可をいただいております」

 伯父様と知らない男性の声も聞こえてくる。どうしようかとお姉様と顔を見合わせていると、ようやく話が終わったようだった。

「こんばんは、おじい様、伯父様。
 と……」

 お姉様が先陣を切ってくれたので私はその後をついていく。すると、おじい様方が気まずそうに顔をそらした。きっと先ほどの会話を聞かれていたと気づいているのだろう。

「えっと、この子たちはもしかして……」

「ああ、新しく養子に迎えたアゼリアとウェルカだ。
 アリストリアの子たちだよ」

「ああ、やっぱり!
 とても姉上に似ているね。
 初めまして、二人とも。
 君たちの叔父になるバングルートだ」

 人懐こい笑みを浮かべてそういった叔父様はとてもきれいな顔をしているな。髪もきれいな紫がかった銀髪を長く伸ばし一つにまとめているからぱっと見は女性にも見えてしまう。

「よろしくお願い致します」

「よろしくお願いいたします」

「今日は2人にバングルートを紹介したかったんだ。
 予想外にもう一人増えたがな。
 とにかく、食堂へ入ろうか」

 おじい様に言われて5人で食堂へと入っていくと、そこには5人がすでに席に着いていた。4人はわかるけど、一人見覚えがない男の子がいるからその子が紹介したい子かな? 叔父様に似てとても整った顔をしていた。
 おじい様が口を開いたのは全員が席に着いたのを確認してからだった。

「さて、全員揃ったな。
 今日はバングルートの帰国を祝してこうして全員集まってもらった。
 それと我が家にもう一人、増えることとなった」

 そこまで言うと叔父様とその男の子が立ち上がった。

「久しぶりだね、皆。
 さて、今日は私の息子を紹介しよう。
 セイットだ」

「初めまして。
 よろしくお願いします」

 微笑んでそういうとセイットと紹介されたものは頭を下げる。
 そちらを見ていると、なぜか思いっきりセイットと目が合い、ニコリと微笑まれてしまった。なぜ?

「初めまして、セイット。
 従兄弟のアースベルだ」

「ルクーシオです」

「アゼリアと申します」

「ウェルカと申します」

 一人ずつ名前を言っていくと、では食べようかとおじいさまが言う。すると、すぐに料理が運ばれてきた。今日もとてもおいしそう。
 セイットはというと、何やらたまに料理を珍しそうに見ながら食べていた。今まで見てこなかった料理だったのかも。

 そのまま和やかに会話をしながら食事が行われていった。何でも叔父様は世界中で信仰されているウィーゼット教の本神殿があるウィリット神国にわが国で唯一出入りを許された人らしい。そのため、王宮に外交官として勤めているがほとんどをそちらの国で過ごしているようだ。そしてそんな国でできた子供がセイットらしい。

 そんなことを小耳にはさみつつ、食事は終わっていた。


「ねえ、君ウェルカ、でしたよね。
 少し私と話をしませんか?」

 別宅に戻ろうか、とお姉様と歩いていると急にセイットに声をかけられた。何の用かとそちらを見ると、来て、と急に腕をひかれた。

 そしてついた先はとある一室だった。中の様子からここは誰かの部屋のようだ。

「ここは私の部屋なんです。
 ここならゆっくりと話せると思いまして」

 そういって無邪気に笑うセイットに思わず後ずさりしてしまう。一体何の用だというのだろうか。

「ねえ、ウェルカ!  
 私と結婚してください」

 笑顔はそのまま、そう言い放ったセイットに私は目の前が暗くなっていった。

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