姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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1章 変わる日常

30話 とある男性の視点(2)

「だが、僕に任せている仕事はどうするんだ?
 一応外交できているはずなのに遠慮なく使われているだろう」

「そのかわり、特別に出入りの自由を許しているじゃないか。
 仕事に関してはこちらでどうにかしておくよ」

「では、今度は僕に何をしろって?」

「ただ国に帰ってくれればいい。
 ただ彼を自分の正式な息子として連れて行ってくれ。
 次バングがこちらに来るときは、あちら、というよりもチェルビース公爵家に置いてきてほしい」

「彼?」

 僕たちの会話が聞こえていたのだろう。すぐに隣の部屋から一人の男の子が姿を現した。
 まさか、……。

「セイットだ。
 セイット・サンタ・ゴドック。
 バングもよく知っているだろう?」

「セイ、ット」

 知っているも何も。一度も忘れたことなんてない。唯一の僕の息子。
 こうして顔を合わせることもろくにできなかった息子が今、目の前にいるのだ。

「なんのつもりだ」

「そう怒るな。
 彼は私の甥だったし、当代の筆頭神子であることも知っているだろう?
 父とはいえ、他国のものにそう簡単には会わせられなかったんだ」

 すまない、と謝られて済む話ではない。何度手元で成長を見守りたいと思ったか。それを何度も目の前にいるやつに阻まれた。それが、今度は認知しろって?

「よろしくお願いします、父様」

「セイット、それは意味が分かっていっているのか?」

「僕はカレット様に言われたことをやっていくだけですので」

「それならば、実の父と離されて育っても良かったというのか?」

 セイットはこちらの目を見ようとしない。だた感情のこもらない目でそう言ってくるのだ。また言葉を重ねようと口を開いた時、カレットに肩をたたかれた。

「セイットを責めないでくれ。
 彼は何も、何も悪くないんだ」

 文句がのど元まで来ているのに止められてしまったイラつきのままカレットの方を見ると、つい言葉に詰まってしまった。どうして、それを決めたはずのお前がそんな、そんなに傷ついた顔をするんだ。

「それじゃ、何も文句を言えないじゃないか……」

「すまない」
 
 本当は誰よりも優しくて、だから時に下さなくてはいけない冷血な判断に心を痛めていることを知っている。それでも自分が持って生まれた力に精いっぱい向き合っていることも。

「それで、ただ帰ればいいんだな」

「ああ、そうだ。
 よろしくな」

「セイットはそれでいいのか?」

「はい」
 
「そうか、ではよろしくな」

 差し出した手を握り返してくれる手は大人ほどではないとはいえ大きい。今回の判断はきっと僕なんかにはわからない理由があるのだろうけど、今はセイットを息子と堂々と呼べる喜びに浸っていればいい。

「すぐに出発しよう。
 準備ができたら、本殿の入り口にな」

「わかりました」

「気を付けて、いってくるんだ」

 そんな神殿長に見送られて、僕たちは神殿長室を出る。
 初めての親子として過ごす時間。どんな風に過ごしたいいかを考えながら僕は部屋へと向かった。

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