姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

58話 入学式(7)

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「3年間で高等専門部まで卒業だなんて本当に優秀なのですね」

 席に着くとさっそく感心したように言われてしまった。いや、そう感心したように言わないでください。

「先生が優秀だっただけですよ」

「あら、謙遜を」

 そう言ってクスクスと笑われたけど本気で言ったんですが……。だって実際あっちの家にいたときはとても簡単だという基礎教育部のテストすら合格が危ういってくらいだったもん。それってつまり、教えてくれた先生が優秀だったことでしょう?

「少し教科書を取りに行ってきますね。
 自由に話していてください」

 そう言って先生は一度教室を出ていく。すると教室は少し騒がしくなった。二人以外は知り合いというだけあってすぐに話し始めたのだ。

「エリオベラ様はほかの方と話さなくていいのですか?」

「私、仲の良い方とはクラスや学園が別れてしまいましたの。
 ですら大丈夫ですわ」

 そう言って微笑まれるとそれ以上は何も言えなくなる。そういえば、特に王宮勤めを目指していない子女は聖クルーシア学院に行って、いわゆる花嫁修業をするんだっけ。

「もうウェルカ様と仲良くなられたんですか、エリオベラ様?」

 私もエリオベラ様と話していると一人の女子がこちらに近づいてきた。クラスメイトのようではあるけれど、もちろん知らない。ここにおそらく私とエリオベラ様以外に公爵家以上の家柄はいないはずだから、名乗りもせずにこうして会話に割ってくるのは相当マナー違反だ。
 エリオベラ様も同じことを思ったらしく少し顔をしかめていた。

「ウェルカ様と話しているところに割って入るのは失礼ではなくて?
 それに名乗りもしないなんて」

「これは失礼いたしました。
 ナランチェ伯爵が娘、ハルカーヤ・カッツ・ナランチェと申します。
 ウェルカ様、以後お見知りおきを」

 そう言われても、すでに私の中であなたの印象はなかなか悪いんだけど……。というか伯爵家のご令嬢だったのね。でも、さすがにこれからクラスメイトになる人なのに無視するわけにはいかないよね。

「初めまして、ウェルカ・ゼリベ・チェルビースと申します。
 よろしくお願いいたします」

 礼議上挨拶を返すと、ハルカーヤ嬢は嬉しそうに笑っていた。そしてハルカーヤ嬢がまた口を開こうとしたときにタイミングよく先生が教室に入ってきた。それを見ると彼女はまたあとで、と言ってもといた席に戻っていった。あとで来ないでほしい。

「あの方昨年も妙になれなれしくこちらに話しかけてこられたのですよね。
 下のものから上のものに話しかけること自体も不敬ですが、仲良くする気がないことに気が付いてほしいものです」

 はぁ、とため息をついての言葉に一年間の苦労がうかがえる。これ、私も苦労するってこと? それは全力で遠慮したい。

 それから教科書を受け取り、軽く説明を受けるとその日は解散となった。

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