姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

64話 相談(3)

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「私がもともとバーセリク侯爵家の次女だったのはご存知ですか?」

 私がセイットと出会ったのはチェルビース公爵家に養子に来てからだ。もしかして知らないかもしれないと思い尋ねてみたが、やっぱりセイットは知らなかったと首を横に振った。

「もともとは侯爵家の次女で、ちょっと事情があり伯父様に養子にしていただいたのです。
 なので、もともとは侯爵家の領地に暮らしていました。
 そしてお姉様が王太子様の側妃になる関係で王都へとくる際に、私も一緒にこちらへ来ました。
 その途中、盗賊と思われる人たちに襲われたのです」

 あの時の恐怖は未だに覚えている。助かったとはいえ、あの人たちの声や顔が忘れられない。知らず、体が震えだす。すると、ふとセイットが立つ気配がしたと思ったら、私のことをぎゅっと抱きしめてくれていた。

 何も言わずにただそうしてもらっていると自然に震えは収まっていた。

「そこでお姉様も多くの使用人も深手を負ってしまいました」

 ちらりとイルナの方を見る。今は少し離れて立ってもらっている関係で、私たちの声は聞こえていないはずだ。だが、私の様子にこちらの来ようとしてくれていたのを制止する。この話はイルナにとってもあまり思い出したくないものだろう。私と違ってイルナは傷を負っている。

「私はお姉様に守ってもらって存在が気づかれてはいなかったのですが、ベスの叫び声に馬車を飛び出してしまいました。
 そこで見たのが、その、血まみれで倒れているお姉様方だったのです。
 その後何が起きたのか、覚えてはいません。
 必死にお姉様が助かるように願うと、私は意識を失ったのです。
 そして、目覚めると大けがをしていたはずのお姉様方は回復していて、それは私のおかげだとお姉様は言ったのです。
 私の、光魔法のおかげだと」

 一気にそこまで話すとセイットの方を見てみる。セイットはまた何か考え込むようにしていた。やっぱりこれは光魔法では、と言うか私の力ではなかったのではないのかな。セイットの話を聞いてそんな気がしてきた。

「うーん、話で聞くだけだとどのくらいの深さの傷かもわかりませんし、正確なことは何も言えませんが……。
 光魔法とは思えないのですよね。
 ちなみに盗賊はどうなったのですか?」

 言われて、はたと気づく。そういえば私、盗賊がどうなったのか聞いてない。

「わかりません」

「そうですか。
 ですが、どうしてアゼリア様は光魔法だと判断したのでしょう?」

「目覚めたときにそう言われて、疑いはしなかったので聞いてないのです」

「一度聞いてみた方がいいかもしれませんね」

 確かに、それが早いのかもしれない。今度お姉様の結婚式があるから、その空き時間にでも聞いてみよう。まだもやもやとした思いを抱えたまま、これ以上は今相談しようがないとセイットにお礼を言って私は部屋へと戻ることにした。
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