姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio

文字の大きさ
86 / 193
2章 学園生活

86話 校外学習(3)

しおりを挟む

 王宮に到着するとすでにローブを着込んだ幾人かが馬車の周りに集まっていた。まだ荷物を入れ込んでいる人もいるが、ほとんど準備は終わっていそう。どうやら遠征に行く日はこのくらい早いのは普通だそうで、若手は苦労する人も多いのだとか……。

「おっ、やっと来たな!
 その子らがハルクの教え子か?」

「アリザンテ!
 ああ、そうだよ」

 大き目の声が聞こえてきたほうを見ると、そこにいたのは魔法師団にしては珍しい体つきをした一人の男性。もし彼がローブを着ていなかったら騎士と勘違いしていたかもしれない体格の良さだ。

「アリザンテ・ラッセルトだ。
 師団に入ったのはハルクよりも2年早いんだがな、早々に抜かされてしまった」

 そういってわははと豪快に笑う姿に羨望やひがみなどは感じられない。そして先生はしょうがないな、という風にラッセルトさんを見ていた。きっとこういう人なのだろうな。

「それにしても……」

 そういってラッセルトさんはじっと私を見つめてくる。なかなかこういう場面にならないからものすごく気まずい。というか何か言いたいことがあるのだろうか。

「お嬢ちゃんずいぶんと小さいな~。
 ちゃんと食べているのか?」

「おいっ、失礼だろう」

 すかさず先生がいさめてくれるけど、まあ私は気にしていない。というかそんな心配をされるとは思ってもいなかった。確かに同年代と比べると少し小柄かも? でも心配されるほどではないと思うんだけどな。

「食べていますよ?
 そこまで小さくはないと思うのですが……」

 そういうとラッセルトさんはちらりと横にいるマンセルトさんとセイットを見始める。これはもしかして2人と比べている? それは確かに小さいわ。

「あの、確かに二人と比べると小さいですけど、二人とは年齢が違いますので」

 すると思っていた通りだったようで、ラッセルトさんはそうなのか? と首をひねる。そう言えばまだちゃんと自己紹介していなかったな。

「えっと、ウェルカ・ゼリベ・チェルビースと申します。
 初等専門部一年なのですが、年齢は11歳です」

「ああ。スキップしたのか!
 優秀なんだな~」

 次はうんうんとうなずいていて、なんだか納得してもらえたよう? ちなみに二人はいつ自己紹介したらいいのかと戸惑ってしますね。

「さて、そろそろ馬車に乗ってください。
 もう出発してしまわないと」

 周りを見るとすでに準備は終わっていたようで人の行き来がなくなっている。思っていたよりも時間がとられていたようだ。

「馬車の座席なのですが、どうしましょうか?」

 用意された馬車の席は向かい合うようになっているわけではなく、2.5人が入れる座席が2列並んでいるものだった。ここに先生と私たち三人で乗るのだ。

「じゃあ、私はウェルカの隣に座ります」

 セイットの言葉で前に先生とマンセルトさん、後ろに私とセイットという席順で座ることとなった。

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

アクアリネアへようこそ

みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。 家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!? 可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ! やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。 私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ! 働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...