姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

128話 城めぐり(4)

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 入れられたお茶を口にすると、ほっと息を吐く。なんだか今日は一日自分が知らないところにいたから、いつの間にか力が入っていたようだ。

「お菓子も食べてください。
 執務区と居住区では料理人が違うので、味も違うのですよ」

 勧められるままにお菓子を口にすると確かにおいしい。お昼のデザートは味がしっかりとついた重めのものだったが、こちらは後味がすっきりとしている。種類が違うから比べるものではないのかもしれないけれど……。

「とてもおいしいです」

 そう口にすると、よかった、とランフェル殿下が顔をほころばせた。こちらまでほわっと嬉しくなるような笑顔だ。

「それにお庭もとてもきれいですね。
 色とりどりのお花がけんかせずにまとまっています」

 学園でもお茶を飲む場所はもちろんあるけれど、あまり花を楽しむ感じではなく、確か広場のような場所だったはずだ。まあ、大人数でお茶会をやるには便利そうだ。執務区のほうで行われる王宮主催のお茶会も会場は似た感じだった。家ではこうして庭に面したテラスがあるけれど、やっぱり規模が違う。

「ありがとうございます。
 毎日頑張って手入れしてくださっているのです」

 嬉しそうに細められた目からもランフェル殿下がこの庭を気に入っているのが伝わってくる。本当にお気に入りなんだろうな。

「学園はどうですか?」

「学園、ですか?」

 急な話題転換についていけずにきょとん、としてしまう。その様子にランフェル殿下が慌てて手を振った。

「あの、急にすみません……。
 あまりお兄様方から、学園の話を聞くことがなくて。
 お義姉様は、スキップされたのでしょう?
 どんな風に過ごしているのか、気になって……」

 どんなふうに……。随分とゆったり過ごしている自覚はある。何せ授業がほぼないのだ。でも、きっとランフェル殿下は授業を全部受けるのだろうから、全く参考にならないのでは?

「あの……」

 どう答えようかと悩んでいたら、どうやら気分を害したと勘違いされたようだ。目を潤ませて、泣き出す直前のような表情でランフェル殿下がこちらを見ていた。

「す、すみません!
 私の話はきっと参考にならないと思って」

「どうして、ですか?」

「私は入学する前に、一般教養を終わらせてしまったので受けている授業が極端に少ないのです」

「お義姉様は優秀なのですね」

 今度はなぜか感心したようにこちらを見ている。なぜこうなった?

 誤解を解けるようにと思いながらも、なぜか誤解を重ねつつ、ランフェル殿下とのお茶会は終了した。
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