姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

141話 貴族へのお披露目(5)


「大丈夫ですよ。
 ウェルカ嬢が養子に入ったということも、今回がお披露目会ということも存じ上げていますから。
一緒に見て回りましょう?」

 そういってこちらを見つめる瞳はひどく優しげだ。私ははい、という返事をするだけで精いっぱいだった。

「ウェルカ嬢は今学園の初等専門部の一年生だと聞きました。
 本当に優秀なのですね」

「教えてくださった方々が優秀だったのですよ」

 歩きながら庭へと向かう。やっぱりここしか行くところがわからなかったのだ。そのまま、私たちはゆっくりとあるきながらヴァーレクト様はぽつりぽつり、と言葉を紡いでいってくれる。そのテンポが何だか心地よかった。

 そうして歩いていると、庭の奥にたどり着く。そこには小さな東屋があり休憩できるようになっているのだ。そこからの眺めもとても美しい。

「あの」

 一度腰を下ろした後、私はついに自分から声をかけた。初めて見たときから気になっていたことがあったのだ。

「何でしょうか?」

「アクバルディア公爵家は外務官の家だったかと思うのですが……。
 どうしてヴァーレクト様は騎士に?」

「不思議ですよね。
 特に私は長男ですし。
 でも、早い段階で私には文官が向かないとわかっていたので、騎士になろうと思ったのです。
 それならば、と父上も納得してくれましたし、優秀な弟もいましたからね」

「そう、なのですね。
 近衛騎士になられるなんて、ヴァーレクト様は確かに騎士の才能がお有りだったのですね」

 近衛騎士は騎士の中から選ばれた精鋭の集まりだ。王族や主要な人物の護衛を主に担当するので、実力はもちろん、その身分も約束されている。騎士たちはそんな近衛騎士を目指して努力をしているという話は知っている。

「そういっていただけると嬉しいですね」

 そういってヴァーレクト様は嬉しそうに微笑む。夕日に照らされたその笑顔はとても綺麗で、私は思わず見とれてしまった。

「風が出てきましたね。
 もう戻りましょうか」

 ヴァーレクト様の声にはっとする。なんだか顔が少し赤い?

「はい」

 もう少し話したかったな、そんなことを考えている自分にびっくりしながらも私は何とかうなずいた。


「おかえり、二人とも」

 元の応接室に戻ると、そこには出かける前と同じくお父様と公爵が待っていた。そして私たちが帰ってきたのを確認すると席を立つ。

「それでは、我々はそろそろお暇しようか。
 いい返事を期待しているよ」

 そういって部屋を出ていく公爵にヴァーレクト様もついていく。私たちもその後ろにつき、玄関口で二人を見送ることになった。
 いつの間にかお茶会はお開きになっていたようで、もう招待された方たちも帰宅していたことに、私はこの時ようやく気が付いた。


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