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2章 学園生活
171話 王宮でのお見舞い(1)
しおりを挟むゆっくりと目を開ける。知らない天井。何があったんだっけ……。
「目が覚めた?」
ララさんの声がして、そちらを見るとこちらの様子をうかがうララさんが見えた。
「はい。
えっと、ここは?」
「王宮の魔法師団だよ。
もう、本当に驚いたよ。
校外学習に行ったはずの副団長が血相を変えて、ウェルカを運んできたんだから」
ふう、とララさんがため息を吐く。うう、申し訳ない。迷惑をかけてしまった。
「そんな顔しないの!
傷は大丈夫?」
傷……。そうだ、腕を槍で切られたんだ。そう思いだした途端、ずきりと痛み出す。そっと腕の方を見るとそこには包帯がまかれていた。
「まだ、少し痛いです」
「私はあまり治癒魔法が得意じゃないからね。
さすがに完治はできなかったみたい」
「でも、治療してくださりありがとうございます」
お礼を言うと少し照れたように視線をそらされてしまった。ララさんはそこで少しわざとらしく、そうだ、と話題転換をしてきた。
「あなたのお姉さんだっけ、アゼリア様が訪ねてきてたみたい。
ひとまず目が覚めたって連絡しておくね」
お姉様! もうずっと会えていない気がする。そんなお姉様にまでご心配をかけてしまうなんて……。
「ウェルカ嬢、目が覚めたようで何よりです」
お姉様に久しぶりに会える、そう考えて少し緊張していると聞こえてきたのは先生の声だった。いや、今は副団長だった。
「勝手な行動をした者たちには、罰則が与えられます。
学園の先生にそちらはお任せしてしまったので詳しくは知りませんが……」
罰則。そっか、そうなったんだね。
「あの、どうしてそんなことをされたのが知っていますか?」
一応訪ねてみるも、首は横に振られた。うん、そうだよね。
「それにしても、申し訳ありませんでした。
あなたがいてくださるからと、チームに若手のものをつけてしまいました。
実力はあるのですが、こういった場での対処は苦手なようです」
そういわれて思い出すのは、チームの人たちが去っていったあと、その方向と私を見比べておろおろとしていた姿だ。うん、確かに苦手なみたいだね。
「ほかの方はどうなったのですか?」
「みんな無事に入り口にまで戻ってきましたよ。
治癒が必要なけがをしたのはあなただけです」
その言葉を聞いてほっとする。妙に魔獣が集まっていた気がするけれど……、って先生が何とかしていたね。あれ、私のせいで集まっていた気がするから、本当に良かった。
「ウェルカ!」
「お姉様⁉」
こんな風に焦ったり、大声を出したりしているところを初めてみた。び、びっくりした。
「大丈夫?
けがをしたって聞いたのだけれど」
「手当もしてもらえたので大丈夫ですよ。
ご心配おかけしました」
「心配なんて、そんなのいいのよ。
よかった、無事で」
ギュッとお姉様に抱きしめられる。こうして抱きしめられるのはいつぶりだろう。温かい。ようやく、無事に帰ってくれたんだ、と実感がわいてくる。今更ながら自分、そしてその結界に魔獣が群がっていた様を思い出す。そうすると恐怖がわいてくるのだ。今はもう安全なところにいるにも関わらず。私は思わずギュッと抱きしめ返していた。
ゆっくりと頭をなでてくれると、だんだんと瞼が重くなってくる。さっきまで、寝ていた、のに。もっとお姉様と、話していたい、のに。
「あら……。
おやすみなさい、ウェルカ」
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