姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

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2章 学園生活

最終話 決意

 お姉様が亡くなった。守れなかった。私が頑張る理由そのもの。瞼を閉じるとお姉様の最後の顔が思い浮かぶ。でも、苦しみにゆがんだ顔じゃなくて、ほほ笑んでいたよね? お姉様は子を守りたかったんだよね?
 ねえ、お姉様。私、間違っていなかったんだよね。お姉様……。どうして。

 すぐに目から涙があふれそうになる。でも、私に泣く資格はない。だったらどうすればいいか考えないと。

 ゆっくり深呼吸をする。落ち着け。私にはきっとやるべきことがある。だから泣いている時間なんてない。ねえ、お姉様きっと応援してくださるよね。

 この一件が今後どうかかわってくるのかはわからない。でも、ヌーベルト王国がこれで我が国にとって警戒すべき国になったことは確実だ。そしてお姉様から生まれた子は男の子。正当なベルク殿下の、王太子の嫡男だ。 
 国民から正式に認められる機会がなかった側妃だったお姉様から生まれた子。その子がいづれ王太子になる。なら、守らないと。いろんなものから。お姉様を、彼の母親を助けられなかったものとしてできることを精いっぱいやらないといけない。

 覚悟は、決めた。

 
「生まれた子の、母親になる⁉」

「姉を救えなかったのは私の落ち度です。
 だから、私はその子を守りたいのです」

「それは決してウェルカ嬢のせいではない!
 私が、もっと……。
 それになぜ母親なのだ?
 いくら何でも……」

「一番身近にいられる立場が、そこだと思ったからです。
 お願いします」

「ひとまず顔を上げてくれ」

 言われたとおりに顔を上げると困惑顔の殿下がいた。その後ろにはヴァークもいる。

「子の母になるにはあなたでは幼すぎる。
 叔母では、姉ではだめなのか?」

「それでは、近くで守れません」

 せめて気持ちをわかってほしい、そう思ってまっすぐに目を見る。殿下はそれを静かに見つめ返した。

「婚約は、ヴァークはどうするんだ?」

 ちらりと視線がヴァークに向く。この際、婚約は私にとって大事なものではないのだ。だってここで引いてしまったら、もしかしたら守れない状況になってしまうかもしれない。

「ああ、こちらのことは置いておいてもらって大丈夫です。
 特に急ぐものではないので」

 解消されてでも、そんな思いでいたのにすぐにそう返されてしまう。特に無理をしている感じではないけれど、本当にそれでいいの⁉

「どのみちあと4年は待つことになりますしね」

「だが、もしウェルカ嬢があの子の母になってしまったら、この婚約の意味が……」

「それは殿下に心配りをしてもらうことではありません。
 この婚約がウェルカにとって枷になることはあってはいけないのです」

「どういう、ことですか?」

 話が見えてこない。結婚まで4年待つことになるのはわかる。今の私では結婚できる年齢ではないのだ。でも、この婚約の意味って?

「我が家の個人的な問題です。
 気にしないで大丈夫」

 本当に? 確認の意味を込めてヴァークの目を見ると、うなずかれる。正直今は考えることが多すぎて余裕がないから、気にしないでいいなら本当に気にしないけれど。

「だが、問題が多すぎる。
 まだ学園生だろう……」

「ベルク殿下」

 お願いだから。ここで父親である殿下に認めてもらえないと意味がない。

「どうやって、育てていくんだ?」

「一人では無理です。
 多分にクルトラ子爵夫人の助けを借りることになるでしょう。
 でも、努力し続けます。
 愛情を注ぎ続けます」

 だから、そう言い募るとベルク殿下はうーん、と悩む。もうこれは祈るしかない。

 たっぷり数分。ようやく殿下が口をひらいた。

「わか、った。
 母としての権限を持てるように、手を回しておこう」

「ありがとうございます!」

「だが、子育てに関しては子爵夫人に助言をこうこと。
 そして、子の護衛としてヴァークをつける」

 ヴァークを⁉ でも、もともと殿下の護衛だったよね? ヴァークはそれでいいの?

「承りました」

「ヴァーク……」

「また連絡する。
 ヴァーク、少し2人で話すといい」

 護衛を連れて殿下が出ていく。ヴァークと2人きりなんていつぶりだろう。

「ヴァーク、ごめんなさい。
 またあなたを巻き込んでしまった」

「気にしないで。
 自分が思っていたよりも、面白い人生になりそうだ」

 屈託のない笑顔で言う。本当に? どうしてヴァークはそんなに受け入れてくれるの?

「もし、嫌になったらすぐに言ってください。
 いつでも婚約を破棄するので」

「そう言い切られるとなんだかさびしいな。
 でも、大丈夫」

 ね? と頭をなでてくれる温かい手。いつでも味方だと言ってくれるその人がとても心強かった。
 きっと、あの子を立派に育ててみせる。きっと無念であったであろうお姉様の分も、たくさん愛情を注いで、たくさんそばにいて、たくさん叱って。あまり自分の母の記憶はないけれど、精いっぱい努力する。心強い味方もいるから。

「ありがとうございます。
 これからも、よろしくお願いします」

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