姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio

文字の大きさ
192 / 193
2章 学園生活

ベルクの視点

「アゼリアが倒れた?」
 
 どうしても自分で出向かなければいけなかった視察の帰り、息を切らしてやってきたものが告げたのは到底理解できないことだった。
 倒れたとはどういうことだ?

 静止の声を無視して、馬車を飛び出す。そのまま馬を連れてきてとにかく必死に王宮への道を急いだ。

 予定よりもだいぶ早い帰りに驚いたものもいたが、すぐにアゼリアの元へと案内してもらう。彼女の部屋の前には落ち着かない様子で立っているヴァークがいた。

「殿下、お戻りでしたか」

「ああ」

 とにかく時間がおしい。正式な取次などなにもなくとも部屋へと入っていった。そしてベッドのほうに向かうと、赤子の泣き声が聞こえてきた。子は生まれたのか?

「アゼリア様!
 お気を確かに!」

 そうだ、今はなによりもアゼリアだ。

「アゼリア!」

 ベッドの横に座り手を握る。どうしてこんなにも冷たいんだ……。それ以上何もいえないでいると、ウェルカ嬢もこちらに来た。 

「お姉様!」

「ありが、とう、うぇるか」

 ウェルカ嬢の呼びかけにうっすらと目をあけそう紡ぐ。なにがありがとうなんだ?

「アゼリア様!
 とてもお可愛らしい子ですよ」

 産婆の言葉に反応してか、目線が赤子の方に向く。そしてよかった、かすれた声でそうつぶやくとそのまま目を閉じた。

「お姉様!」

「アゼリア!」

 このままでは助からない! とっさにウェルカ嬢の方を見ると、アゼリアの腕をとる。そのまま淡い光が見えたかと思うと、すぐに消えてしまった。

「ウェルカ嬢!?」

 気を失っている? 私には光魔法は使えない。このままでは!

「ヴァーク!」

 とにかくウェルカ嬢を誰かに預けなければ、そう考えるとすぐにヴァークの名を呼んだ。

「ウェルカ嬢を頼む」

 すぐにやってきたヴァークは何かを聞くこともなく、すぐにウェルカ嬢抱えて部屋を出て行った。いつの間にか赤子の声も聞こえない。

「アゼリア……」

 そして、アゼリアの手を握りしめる。どうかめを開けてくれ。また笑顔を見せてくれ。そう願いながら。

「殿下」

 いつまでそうしていただろう。不意に声をかけられた。声の方をむくとヴァークがいた。

「なにが、あったんだ」

 静かにとうと、ヴァークは留守にしていた間のことを語り出した。

「すべて私の落ち度です。
 処分はいかようにも」

 そうヴァークは締めくくると、深く頭を下げた。

 なんということだ。ジェラミアも亡くなっただと? アゼリアに毒を盛った後で?
 あの子は絶対にそういったことをする子ではない。アゼリアの一件で疑いの目を向けていたことは認めるが、本来そういったことをできる子ではないはずなのだ。

「ジェラミアのところへ行く」

 本当はアゼリアを失った悲しみにくれていたい。でも、立場がそれを許してはくれないのだ。彼女自身のためにもそれは正しい選択ではない。

 ジェラミアの部屋に入り、まずはジェラミア会うことにした。白い布のした、強気な様子の彼女の顔は苦痛に歪んでいる。こんなにも、苦しんで死んだのか? もっと楽に死ねる薬はあったはずだ。なのに……。

「殿下、こちらを」

 先に部屋にいた侍従に差し出されたのは一通の手紙。手紙と呼べるほどの体面が整っていないそれは一国の王女が書いたものとは思えなかった。

 中をあけるとそこにかかれていたのはとても短い文だった。

『ごめんなさい。
 それでも、ここにいられて幸せでした』

 どう、して……。妹のように思っていた。女性として愛してあげることはできなかったけれど、大切な家族だった。だが、アゼリアに恋をしてそれがひどく申し訳なくて、いつの頃からかまっすぐに向き合うことができなくなっていた。

 その結果が、これか。きっとジェラミアは贖罪のつもりであえて苦しく死んでいく毒を選んだのだ。自分が、2人を死に追いやったんだ。



感想 9

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です