姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio

文字の大きさ
193 / 193
2章 学園生活

ベルクの視点(2)

「兄上……」

 ひとりにしてくれと言い、自室に籠もった。喪失感や情けなさでおなかも空かない。眠くもならない。
 そんなときにアーサベルスは部屋にやってきた。

「なんだ」

「みな、心配しております」

「そうか」

 ふと、誰かに聞いてほしくなった。もう届けるべき人がいなくなった己の後悔を。

「全部、私のせいだったのだ……。
 2人とも私がいなければ死なずにすんだのに。
 ……、もう大切な人を作りたくない」

 涙をこぼしたくないと、唇をかみしめたのに。こらえきれなかった嗚咽とともにほほに伝うものを感じる。

「兄上……。
 もう、これ以上無理をなさらなくていいのです。
 義姉上は男の子を残してくださったのですから。
 それでも、もし兄上が誰かを娶らねばならばくなったなら、誰であろうと僕が娶ります。
 これ以上くるしまないで……」
 
 自分は今幼い弟に何を言い、何を言わせた? ここまで来て、ようやくぼんやりとしていた意識がはっきりとしてきた。弱音を吐いた上に、涙まで流すとは……。

「す、すまない。
 今の言葉は忘れてくれ。
 産まれた子とウェルカ嬢はどうした」

「赤子はいま乳母が面倒を見ています。
 ウェルカはまだ目覚めていないようです。
 病み上がりだったのに、相当無理をしたようで……」

「相当な無理?」

 聞いた内容にようやくアゼリアの「ありがとう」の意味が分かった。しばらく寝たきりの状態だったのにも関わらず駆けつけてからずっと治癒魔法を使っていたなんて……。それに仮死状態で産まれてきたあの子を救ったのもウェルカ嬢だと?

 紛れもない命の恩人じゃないか。何もできなかった自分が情けない、どころの話じゃない。あの子にとって姉はとても大切な存在だったのに……。

「子に会いに行こう。
 名前も付けてあげなくてはな。
 ……、ありがとう、もう大丈夫だ」

 立ち止まっては行けない。前を向いて最善を考え続けなくては。犯した罪もすべて背負って、守るべきものをもう傷つけないですむように。失わないですむように。

 息子が産まれたのだから、父上から王位を継ぐ日も近いのだ。たった2人の大切な人も守れなかった自分だけれど、今度は国に生きる人すべてを守らなければいけないのだ。


「約束」を忘れはしないから、どうか見守っていてくれ。

__________________________________________________________________

 これで前日譚は終了です。長らくお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
 少し休んでから、今度は本編を始めていきたいと思っています。別の作品として登録して書いていきますので、そちらの方も読んでいただけますと幸いです。
 

感想 9

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(9件)

まんまるたまご
2019.10.03 まんまるたまご

物語が転がり始めましたね展開が予想できないのでとても楽しみです

2019.10.04 mio

感想、ありがとうございます!
引き続き頑張って書いていきたいと思っていますので、読んでいただけますと嬉しいです。

解除
紗綾
2019.09.19 紗綾

初めまして、いつも楽しく読まさせて頂いてます。

最新話の最後が途中で切れてるみたいなのですが、気の所為ですかね(੭ ᐕ))?

2019.09.19 mio

こんにちは、コメントありがとうございます。

すみません、途中で切れておりました……。そして、文章の順番もおかしなことになっていましたので訂正いたしました。ご指摘いただきありがとうございました!!!
修正しましたので、もう一度見ていただけますと幸いです。

解除
風彪
2019.08.30 風彪

なんか、同じ文が二回繰り返してあるのですが、仕様ですか?

2019.08.30 mio

ご指摘ありがとうございます。
すみません、間違えておりました。該当箇所は訂正致しました。

解除

あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました! レジーナブックス様から書籍が4月下旬に発売されます!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?

氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。 しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。 夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。 小説家なろうにも投稿中

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。