ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

文字の大きさ
18 / 69

17

しおりを挟む
「すみません、これください」

「はい!
 ありがとうございました」

「あ、次は私で!」

「リミーシャさん、これ合いますか?」

「ええ、とてもよくお似合いですよ。
 そうだ、こちらの方はどうでしょう?」

「あ、それもかわいい~」

 次から次へとやってくるお客様に息つく暇もない。それでも楽しそうに、時に悩ましそうに真剣に買い物をするお客様たちを見ているのは楽しい。友達と一緒にお揃いのアクセサリーを買いに来る方、中には男性と一緒に来て見ている方、相手の方の特徴を伝えてリミーシャさんや私に相談する方、様々だ。

 カラン、とまた新たに音が聞こえる。いらっしゃいませ、と口にしながら扉の方を見るとあの日を境に常連になってくれたお客様が入ってきたところだった。

「あ、やあ。
 今日はまた一段と、人が多いね」

「はい。
 もうすぐ花祭りがありますから」

 この街特有のお祭りである花祭り。1年で一番花が咲き誇る時期に合わせて開催するこの祭りは、領民にとってもとても楽しみな催し物なのだそう。街中もどこか浮かれた空気になっていて、着実に準備が進められていく。初めてこのお祭りに参加する私もとても心待ちにしていた。私がリミーシャさんに声をかけてもらったのはちょうど花祭りが終わった直後のこと。もうすぐ、この街に来て1年が経とうとしていた。

「ああ、そういえばそうだね。 
 それにしても、皆とても気合が入っているね」

 周りをそっとうかがうように見ながら、そのお客さん、ルイさんは言う。ああ、とうなずくと少しルイさんに近づいて小さな声で答えを伝えた。

「花祭りはよく告白の場になるのですって」

「こく、はく」

「はい」

 このお店によく来てくれるお姉さま方が話していたことだ。私も詳細はわからない。でも、この街では花祭りできれいに咲き誇った花を贈ると共に告白をすることが多いみたい。ルイさんは少し顔を赤くすると、そうか、と小さく答えた。

 ルイさんは何度も通ってくれている間に話す機会も増えて、ついこの間名前を教えてもらうことになったのだ。はじめと変わらず視線は下を向いているけれど、いつかはもっと仲良くなれたらいいな、と。でもルイさんがリミーシャさんとかほかの人と話しているのは見たことがないから、これでも仲がいい方なのかもしれない。

 いつもここの商品をひいきにしてくれている妹さんともいつかは会ってみたいな。少し気になるのは、ここのお店の商品は求めやすい値段にはなっているが、決して普段そう頻繁に買えるほど安いわけではない。それなのにおそらく騎士見習いであるルイさんがこうも買いに来るってことは、実はルイさんいいところの家の子ではないのだろうか。

「今日はこれを」

「はい、ありがとうございます。
 今包みますね」

 今日は妹さんからリクエストがあったのだろう。すぐに商品を手に取ると会計へと持ってくる。それを受け取ったとき、視界がぐにゃりとゆがむ。そして、すぐに耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。悲鳴と共に逃げ惑う人々。土煙が舞ってよく見えないけれど、あれは馬? 馬が暴走しているのだろうか。それが人々に向かって走ってきている。どこか街なみに見覚えがある。

「……-アさん?
 フィーアさん!」

 はっと顔を上げる。視界がくらくらとする。顔から血の気が引いているし、頭が痛い。まだ心臓がばくばくとしている。あれはどこの画? 私、またギフトを? 頭が混乱している。

「あ……」

「大丈夫、ですか?
 急に、一体……」

「すみません、大丈夫です。
 こちらの会計ですよね」

「あ、はい」

 まだ、耳にはあの悲鳴が残っている。目を閉じればすぐにでもあの画が思い浮かぶ。でもダメ、今は目の前のことに集中しないと。怪しまれるわけにはいかない。それにしても白昼夢のように視るのは珍しい。たいていは寝ているときに視るのに。

「顔色が悪い。 
 休んだ方が、いいのでは?」

「ご心配をかけてすみません。
 でも、大丈夫です」

 急に顔色を悪くしたのだ。ルイさんにとっては意味が分からないだろう。大丈夫です、と言い切って何とか会計を終わらせると、ルイさんはこちらを気にしたそぶりを見せながらもお店を出ていった。だけど、そのあとすぐにリミーシャさんがこちらの方へやってきた。

「フィーア、今日はもう休みなさい。
 本当に顔色が悪いわ。
 忙しさで無理をさせてしまったのね」

「い、いえ!
 私なら大丈夫です」

「フィーア」

「……休みます」

 ギフトの副作用でリミーシャさんに心配をかけるなんて。先ほどの内容も気になるし、リミーシャさんへの罪悪感もあるし。でも、リミーシャさんの有無を言わせない視線にこれ以上拒否するのもよくないとうなずく。ぐちゃぐちゃとした気持ちのまま、迎えに来てくれた馬車に乗って先に屋敷へと戻ることになった。

 自室へと着いて、すぐにベッドに倒れこむ。あれはいつの、どこの画なのか。考えなければと思う私と、どうせわかっても何もできないと思う私がせめぎあう。……疲れた。もう、一度寝てしまおうか。

 ここに来てから何度もギフトが使われた。視るたびにこうして心がかき乱される。でも、結局何もできないまま終わっていて。私はこれからもギフトに振り回されて生きていくのだろうか。もう、捨てたはずのギフトに。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...