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次の日、店頭に立っていると今日もルイさんがやってきた。いつもは供の方を外で待たせて一人で入ってくるのに、今日は誰かを伴っていた。それもとびきりかわいい子を。
「やあ、こんにちは」
「こんにちは。
あの、その子は……」
「妹のマリーだよ」
ほら、とルイさんが軽く背を押す。兄妹、にしては髪の色も目の色も違う。でも何かが何となく似ていた。背を押されたマリーさんは私に向かってにこりとほほ笑んだ。
「ルイの妹の、マリーと言います。
いつも素敵な商品をありがとうございます」
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます」
「昨日は手紙もいただいてしまって。
会いたいと言っていただけたのが嬉しくて、つい来てしましました。
刺繍の件も兄から聞いたので、その話もしたくて」
「ぜひ……!
あ、よければ奥にどうぞ。
あ、でもその前に少し片づけてきます」
私よりも背が低いマリーさんは華奢で色が白く、すぐに倒れてしまいそうなはかなげな雰囲気で、つい優しくしなくては! という思いに駆られる。慌てて奥に戻り、お茶やお菓子の準備をすると、ようやくルイさんとマリーさんを招くことができた。
「なんだか押しかけてしまったようで、すみません」
「いいえ、お会いできて嬉しいです」
ほんわかとした話し方につられて、こちらの表情筋が緩んでしまう。ルイさんにも、マリーさんにも情けない顔は晒せないから、何とか普通の表情を保てるように頑張る。それで、とようやく話を切り出した。
「どのような刺繍にしますか?」
「あの、何かできない刺繍はありますか?」
「できない?
ちょっと判断がしづらいので、何を刺繍したいか教えてもらってもいいですか?」
「えっと、まずは名前を、マリーと入れてもらいたくて。
それと青い鳥を」
「それでしたら大丈夫ですよ。
名前は何色でいれますか?」
「金糸、でもいいですか?」
「はい!」
目の前の少女の髪と目の色を指定されて、どの糸を使おうか頭の中で考える。まだ糸は残っていたから、それくらいだったらすぐにできそうだ。
「そういえば、リボンに刺繍でよかったのですか?」
「はい。
このリボンにしてもらえたらな、と」
そう言ってマリーさんはカバンからリボンを取り出す。それはシルクで作られた明らかに高級な品だった。マリーさんから受け取ってそれを手に取ると、その肌触りのよさがよくわかる。ここに本当に刺繍していいのだろうか。
「もし失敗したとしても、まだ似たリボンはあるから大丈夫だよ」
そんな私の心配を察してか、ルイさんからそう声がかかる。このリボンが、まだ。これ一つで一体いくらするのか考えると怖くなりそうだから、今は考えないようにしよう。
「このリボンの端に、この辺りに刺繍していいですか?」
「はい!
よろしくお願いします」
「そうだ、お代はいくらになるかな?」
ルイさんに言われてはっとする。お代……、考えていなかった。うーん、分かりやすいのは一文字いくら、一絵柄いくら、という形だよね。そのうえで複雑なものだったら値段を上げて、糸もいいものを使うなら値段を上げて……。でも、そこまで細かく設定したらかなり計算が大変かもしれない。
「少し考えてみます……。
今回のものは試作という意味で作らせてください」
「え、ですが!
大丈夫です、支払いますから」
にこりと、穏やかだけれど有無を言わせないような笑顔で言われてしまい、はい、としか答えられなかった。
「この件が終わった後、次はもっと複雑な図案をお願いしたいのです。
もちろん難しければ断っていただいて大丈夫なのですが、図案だけでも見ていただきたくて」
「それは、もちろんお受けします。
今回のものはかなり簡単ですので、明日には完成すると思います」
「まあ、そんなに早いのね!
楽しみにしています。
お兄様、明日受け取りに行ってくださいますよね?」
「マリー、そこは普通行ってくれますか、って聞くところだよ。
まあ、行くけれど」
「ふふ、ありがとうございます」
困った顔でマリーさんを小突くルイさん。この二人の気安い関係がよくわかる。にこにことその様子を眺めていたら、こちらに視線が向いた。
「図案は明日、兄に持っていってもらいます。
リボンのお代はその時に」
「はい」
話が終わると、二人は席を立つ。二人を見送る為に、私も慌てて席を立った。そして、お店の外まで二人を見送って深く息を吐きだす。緊張していて、きちんと呼吸できていなかった気がする。本当に素敵な人たちだった。
「話は終わったの?」
「あ、はい、リミーシャさん。
あの、相談したいことがあって」
さすがに値段設定は私ではできない。早速リミーシャさんに相談すると、それなら帰った後にブランスさんとラシェットさんも含めて相談しましょう、と返してくれた。
「やあ、こんにちは」
「こんにちは。
あの、その子は……」
「妹のマリーだよ」
ほら、とルイさんが軽く背を押す。兄妹、にしては髪の色も目の色も違う。でも何かが何となく似ていた。背を押されたマリーさんは私に向かってにこりとほほ笑んだ。
「ルイの妹の、マリーと言います。
いつも素敵な商品をありがとうございます」
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます」
「昨日は手紙もいただいてしまって。
会いたいと言っていただけたのが嬉しくて、つい来てしましました。
刺繍の件も兄から聞いたので、その話もしたくて」
「ぜひ……!
あ、よければ奥にどうぞ。
あ、でもその前に少し片づけてきます」
私よりも背が低いマリーさんは華奢で色が白く、すぐに倒れてしまいそうなはかなげな雰囲気で、つい優しくしなくては! という思いに駆られる。慌てて奥に戻り、お茶やお菓子の準備をすると、ようやくルイさんとマリーさんを招くことができた。
「なんだか押しかけてしまったようで、すみません」
「いいえ、お会いできて嬉しいです」
ほんわかとした話し方につられて、こちらの表情筋が緩んでしまう。ルイさんにも、マリーさんにも情けない顔は晒せないから、何とか普通の表情を保てるように頑張る。それで、とようやく話を切り出した。
「どのような刺繍にしますか?」
「あの、何かできない刺繍はありますか?」
「できない?
ちょっと判断がしづらいので、何を刺繍したいか教えてもらってもいいですか?」
「えっと、まずは名前を、マリーと入れてもらいたくて。
それと青い鳥を」
「それでしたら大丈夫ですよ。
名前は何色でいれますか?」
「金糸、でもいいですか?」
「はい!」
目の前の少女の髪と目の色を指定されて、どの糸を使おうか頭の中で考える。まだ糸は残っていたから、それくらいだったらすぐにできそうだ。
「そういえば、リボンに刺繍でよかったのですか?」
「はい。
このリボンにしてもらえたらな、と」
そう言ってマリーさんはカバンからリボンを取り出す。それはシルクで作られた明らかに高級な品だった。マリーさんから受け取ってそれを手に取ると、その肌触りのよさがよくわかる。ここに本当に刺繍していいのだろうか。
「もし失敗したとしても、まだ似たリボンはあるから大丈夫だよ」
そんな私の心配を察してか、ルイさんからそう声がかかる。このリボンが、まだ。これ一つで一体いくらするのか考えると怖くなりそうだから、今は考えないようにしよう。
「このリボンの端に、この辺りに刺繍していいですか?」
「はい!
よろしくお願いします」
「そうだ、お代はいくらになるかな?」
ルイさんに言われてはっとする。お代……、考えていなかった。うーん、分かりやすいのは一文字いくら、一絵柄いくら、という形だよね。そのうえで複雑なものだったら値段を上げて、糸もいいものを使うなら値段を上げて……。でも、そこまで細かく設定したらかなり計算が大変かもしれない。
「少し考えてみます……。
今回のものは試作という意味で作らせてください」
「え、ですが!
大丈夫です、支払いますから」
にこりと、穏やかだけれど有無を言わせないような笑顔で言われてしまい、はい、としか答えられなかった。
「この件が終わった後、次はもっと複雑な図案をお願いしたいのです。
もちろん難しければ断っていただいて大丈夫なのですが、図案だけでも見ていただきたくて」
「それは、もちろんお受けします。
今回のものはかなり簡単ですので、明日には完成すると思います」
「まあ、そんなに早いのね!
楽しみにしています。
お兄様、明日受け取りに行ってくださいますよね?」
「マリー、そこは普通行ってくれますか、って聞くところだよ。
まあ、行くけれど」
「ふふ、ありがとうございます」
困った顔でマリーさんを小突くルイさん。この二人の気安い関係がよくわかる。にこにことその様子を眺めていたら、こちらに視線が向いた。
「図案は明日、兄に持っていってもらいます。
リボンのお代はその時に」
「はい」
話が終わると、二人は席を立つ。二人を見送る為に、私も慌てて席を立った。そして、お店の外まで二人を見送って深く息を吐きだす。緊張していて、きちんと呼吸できていなかった気がする。本当に素敵な人たちだった。
「話は終わったの?」
「あ、はい、リミーシャさん。
あの、相談したいことがあって」
さすがに値段設定は私ではできない。早速リミーシャさんに相談すると、それなら帰った後にブランスさんとラシェットさんも含めて相談しましょう、と返してくれた。
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