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「あの、息子を助けていただいて、本当にありがとうございました」
「いいえ、息子さんにけがは……?」
「かすり傷くらいです。
あなたに助けていただけましたから。
ほら、お姉さんにお礼を言って」
「あの、ありがとう……」
母親の影に隠れて、男の子がぺこりと頭を下げる。恥ずかしがっている様子の男の子に笑みがこぼれる。母親は焦っているようだけれど。
「うん、君が無事でよかった。
お名前、教えてくれる?」
「リベア……」
「リベア君、だね。
私はフィーア。
よろしくね」
「……うん」
顔を真っ赤にしたリベア君は今度こそ母親の後ろに隠れ切ってしまった。その様子を、母親もほほえましそうに見ている。
「あの、本当にありがとうございます。
よろしければ、これを受け取っていただきたくて。
我が家で作っているものなのですが……」
「ありがとうございます。
ぜひ、またいらしてくださいね」
「はい、ぜひ」
ばいばい、と手を振ると隠れていたリベア君がひょこりと顔を出してくれる。そして小さくではあったけれど、手を振り返してくれた。
親子が帰っていったあと、休憩をもらって裏に戻る。そこにはいろいろといただいた品が積み重なっていた。これ、帰りは持って帰るのをお願いしても大丈夫かな……。さすがに一人で持ち帰ることはできない気がする。
いろいろと気になるものはあるけれど、ひとまず先ほどいただいたものが一番気になる。あれ、そういえば私、リベア君の名前は聞いたけれど、お母さんの名前は聞いていなかった。それにお店の名前も。次に会ったときは聞かないと。
そう考えながら、包みを開けていく。あ、包みにお店の名前が書いている。えーっと、リンガー布店……。聞いたことがある。あのお店ってかなり有名なお店だよね? マフラーとかの小さなものから、布団とかの大きなものまで展開はしているけれど、発注できる数がかなり限られていて、ほとんどオーダーメイドになっているっていう……。え、そんなお店のものをもらってよかったのかな⁉
恐る恐る箱を開けてみると、その中には鮮やかに染められた布が丁寧に納められていた。ゆっくりと箱から取り出してみると、それは大きさからしておそらくスカーフ。すべすべとした手触りの軽いものだった。え、本当にもらってしまってよかったのかな。
そっと持ってみてためらうけれど、結局それを受け取ることにした。きっと返す方が失礼だから。ちょうど今日の服に合わせられそうだったから、それを首に巻いてみる。けれど、うまくまけない……。
そこに、リミーシャさんが入ってきた。
「あら、それは?」
「先ほどリベア君のお母様からいただいたものです。
開けてみたら、スカーフが入っていて」
「とても素敵ね。
少しいいかしら?」
リミーシャさんにスカーフを渡すと、さっと巻いてくれる。簡単な巻き方だけど、と言われながら鏡を見ると、自分がやるよりもずっときれいにまかれたスカーフが目に入った。すごい!
「ありがとうございます!」
「いいえ。
そうそう、あなたにお客さんが来ていたのよ。
良かったら出てあげて」
「え、お客さん、ですか?
今行きます」
それは早く言ってもらいたかった! 慌ててお店に出ると、そこにルイさんがいた。
「ルイさん!
こんにちは。
お待たせしてすみません」
「いいや、そんなに待っていないよ。
元気そうでよかった」
素敵なスカーフだね、と言ってルイさんがほほえんでくれた。そんな笑顔に顔に熱が集まる。思わずうつむきながら、何とか言葉を紡いだ。
「あ、ありがとうございます……。
先ほど、あの時の男の子のお母様からいただいて。
知らなかったのですが、リンガー布店の方だったみたいです」
「ああ、そうなんだね。
どうりで綺麗な発色だ」
ってそうだった。本来の目的が抜けていた。手紙をマリーさんに渡してもらおうとしていたんだった。
「あ、あの、これをマリーさんに渡していただいてもいいですか?」
「これって、手紙を?
もちろんいいけれど」
「この間いただいた手紙のお返事を、と。
もう少し早く渡せたらよかったのですが、届け先が分からなくて」
「ああ、なるほど。
うん、これは預かっておくね」
「ありがとうございます。
それと……」
あ、どうしよう。なんて説明するか考えていなかった。えーと、と内心慌てている間もルイさんは待ってくれている。それにますます慌ててしまう。
「フィーア。
落ち着いて、ゆっくり説明してみなさい」
「リミーシャさん」
いつの間にか近くに来ていたようで、そっと肩に手を置いてくれる。その温かさにほっとして落ち着いた。
「あの、今度新しいことを始めてみようと思っていて……。
ハンカチとかポートとかに、お客さんの希望するものを刺繍しようと思うんです。
文字とか、ものとか。
それで、その一人目にルイさん、というよりもマリーさんにお願いしたくて」
「僕を?
それは嬉しいな。
そうだね、妹に聞いてみるよ。
……ちなみに刺繍するのはリボンでもいいのかい?」
「リボンですか?
素材によっては大丈夫ですけど」
「うん、そっか。
ありがとう、聞いてくるね」
それじゃあ、というとルイさんは帰っていった。あれ? そういえばルイさんは一体何をしにここへ?
「いいえ、息子さんにけがは……?」
「かすり傷くらいです。
あなたに助けていただけましたから。
ほら、お姉さんにお礼を言って」
「あの、ありがとう……」
母親の影に隠れて、男の子がぺこりと頭を下げる。恥ずかしがっている様子の男の子に笑みがこぼれる。母親は焦っているようだけれど。
「うん、君が無事でよかった。
お名前、教えてくれる?」
「リベア……」
「リベア君、だね。
私はフィーア。
よろしくね」
「……うん」
顔を真っ赤にしたリベア君は今度こそ母親の後ろに隠れ切ってしまった。その様子を、母親もほほえましそうに見ている。
「あの、本当にありがとうございます。
よろしければ、これを受け取っていただきたくて。
我が家で作っているものなのですが……」
「ありがとうございます。
ぜひ、またいらしてくださいね」
「はい、ぜひ」
ばいばい、と手を振ると隠れていたリベア君がひょこりと顔を出してくれる。そして小さくではあったけれど、手を振り返してくれた。
親子が帰っていったあと、休憩をもらって裏に戻る。そこにはいろいろといただいた品が積み重なっていた。これ、帰りは持って帰るのをお願いしても大丈夫かな……。さすがに一人で持ち帰ることはできない気がする。
いろいろと気になるものはあるけれど、ひとまず先ほどいただいたものが一番気になる。あれ、そういえば私、リベア君の名前は聞いたけれど、お母さんの名前は聞いていなかった。それにお店の名前も。次に会ったときは聞かないと。
そう考えながら、包みを開けていく。あ、包みにお店の名前が書いている。えーっと、リンガー布店……。聞いたことがある。あのお店ってかなり有名なお店だよね? マフラーとかの小さなものから、布団とかの大きなものまで展開はしているけれど、発注できる数がかなり限られていて、ほとんどオーダーメイドになっているっていう……。え、そんなお店のものをもらってよかったのかな⁉
恐る恐る箱を開けてみると、その中には鮮やかに染められた布が丁寧に納められていた。ゆっくりと箱から取り出してみると、それは大きさからしておそらくスカーフ。すべすべとした手触りの軽いものだった。え、本当にもらってしまってよかったのかな。
そっと持ってみてためらうけれど、結局それを受け取ることにした。きっと返す方が失礼だから。ちょうど今日の服に合わせられそうだったから、それを首に巻いてみる。けれど、うまくまけない……。
そこに、リミーシャさんが入ってきた。
「あら、それは?」
「先ほどリベア君のお母様からいただいたものです。
開けてみたら、スカーフが入っていて」
「とても素敵ね。
少しいいかしら?」
リミーシャさんにスカーフを渡すと、さっと巻いてくれる。簡単な巻き方だけど、と言われながら鏡を見ると、自分がやるよりもずっときれいにまかれたスカーフが目に入った。すごい!
「ありがとうございます!」
「いいえ。
そうそう、あなたにお客さんが来ていたのよ。
良かったら出てあげて」
「え、お客さん、ですか?
今行きます」
それは早く言ってもらいたかった! 慌ててお店に出ると、そこにルイさんがいた。
「ルイさん!
こんにちは。
お待たせしてすみません」
「いいや、そんなに待っていないよ。
元気そうでよかった」
素敵なスカーフだね、と言ってルイさんがほほえんでくれた。そんな笑顔に顔に熱が集まる。思わずうつむきながら、何とか言葉を紡いだ。
「あ、ありがとうございます……。
先ほど、あの時の男の子のお母様からいただいて。
知らなかったのですが、リンガー布店の方だったみたいです」
「ああ、そうなんだね。
どうりで綺麗な発色だ」
ってそうだった。本来の目的が抜けていた。手紙をマリーさんに渡してもらおうとしていたんだった。
「あ、あの、これをマリーさんに渡していただいてもいいですか?」
「これって、手紙を?
もちろんいいけれど」
「この間いただいた手紙のお返事を、と。
もう少し早く渡せたらよかったのですが、届け先が分からなくて」
「ああ、なるほど。
うん、これは預かっておくね」
「ありがとうございます。
それと……」
あ、どうしよう。なんて説明するか考えていなかった。えーと、と内心慌てている間もルイさんは待ってくれている。それにますます慌ててしまう。
「フィーア。
落ち着いて、ゆっくり説明してみなさい」
「リミーシャさん」
いつの間にか近くに来ていたようで、そっと肩に手を置いてくれる。その温かさにほっとして落ち着いた。
「あの、今度新しいことを始めてみようと思っていて……。
ハンカチとかポートとかに、お客さんの希望するものを刺繍しようと思うんです。
文字とか、ものとか。
それで、その一人目にルイさん、というよりもマリーさんにお願いしたくて」
「僕を?
それは嬉しいな。
そうだね、妹に聞いてみるよ。
……ちなみに刺繍するのはリボンでもいいのかい?」
「リボンですか?
素材によっては大丈夫ですけど」
「うん、そっか。
ありがとう、聞いてくるね」
それじゃあ、というとルイさんは帰っていった。あれ? そういえばルイさんは一体何をしにここへ?
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