ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

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 王城から派遣されたメイドに丁寧に世話をしてもらって眠りにつく。なかなか眠ることができなったからか、朝はとても眠い。でも優しい声に起こされてゆっくりと目を開けた。なんだか聞いたことがあるような……?

「お目覚めください、お嬢様。
 もうお支度をしませんと」

「うんん、んーーー。
 起きる、起きるわ……」

 重たい瞼を無理やり開ける。そして目に入ってきた顔にぱちくりと瞬きをする。……他人の空似? だってこんなところに彼女がいるわけがない。でも、ついその名が口をついて出た。

「……アンナ?」

「ええ、お久しぶりです、お嬢様。
 健やかにお過ごしになったようでとても嬉しいです」

「え、本当にアンナ?
 どうしてここに?」

「その説明は後でします。
 今はまずお支度を」

「わ、わかったわ」

 混乱した頭のまま、ひとまず起き上がる。アンナは慣れた手つきで私の支度を整えていく。メイクを終え、別のメイドが持ってきた軽食を口にする。忙しないけれど、今日の予定を考えると仕方ない。

 ドレスの着付けはさすがにアンナ一人では厳しいからと、応援のメイドが駆けつけてくれた。うう、苦しい。本当に貴族って……。

 まずは教会の鑑定のギフトを持つ人から正式な鑑定を受ける。そこで『神の目』を持つと認められたら、次はユースルイベ殿下との婚約式を行う。ここで久しぶりにナフェルの顔を見られるのよね……。ちょっと緊張。あの子、私を恨んでいてもおかしくないもの。

「変わらず、可愛らしいですね」

 身支度が終わった私を眺めて、アンナは嬉しそうに目を細める。そんな様子になんだか私まで嬉しくなってしまう。

「フリージア様、本日鑑定を行う教会の方が挨拶をしたいといらしております」

「教会の方が……?」

 ちらりとアンナを見るとうなずく。時間はまだあるみたい。それなら断る理由もないからと、入る許可を出した。

 部屋に入ってきた人に、思わず目を見開く。それはいつの日か、『ことりの庭』で私の腕をつかんだ人。以前とは違い、その服装は教会の儀式用の正装の様で豪華。そして顔もしっかりと見える。これはもう間違えない。やっぱり、この人は……。

「初めまして、フリージア・シュベルティー令嬢。
 私は教会から派遣されてまいりました、ミリア、と申します」

 きれいに礼をする少女。主張するようにミリア、と名乗る。ミリア、リミーシャさんたちの長女の名。上げた顔はきれいにほほ笑んでいるものの、目は怒りに燃えていた。その様子に『皆を悲しませたら許さない』、そう伝えてきたあの日を思い出す。あの言葉は今日までずっと私の中に残っていた。

「初めまして、ミリア様。
 本日はよろしくお願いいたします」

 ここで下手なことをいうわけにはいかない。そう思って同じようににこやかな笑みを浮かべる。すると、ミリアさんはこちらに近づいてきた。

「悲しませないで、と言ったのに!
 どうして見つかってしまったのよ。
 どうして、あなただったのよ……」

 小さく、激情を閉じ込めた声で鋭く発する。私はそんなミリアさんに謝ることしかできなかった。

「っ……。
 今回の儀式、偽りを伝えることはできないわ」

「はい」

 わかっている。もう逃げられるわけがないと。聖騎士が私を認めている時点で、本来この儀式は必要ない。でも、発見に教会が絡んだという事実を残すためのパフォーマンス。つまり、今日ミリアさんが言えるのは一つだけ。

「ごめんなさい、ミリアさん……」

 最後にしっかりと、気持ちを込めてお詫びをする。私だって本当はあの家に残りたかった。でも、居られなかった。

「本日は、お願いいたします」

 私の謝罪には何も返さず、ミリアさんが離れていく。最後にはお互いに笑顔の仮面をつけていた。もし出会い方が違ったのなら、私はミリアさんと友達になれたのだろうか。

「大丈夫でしたか、お嬢様⁉」

「え、ええ」

 慌てたようなアンナの声にようやく周りに人がいることを思い出した。そうだ、まずは今日を乗り越えることを考えないと。 

 儀式のための白いドレスに身を包み、きれいな化粧も施してもらった私はいつもとは別人のようだった。支度が終わってすぐにミリアさんが訪ねてきたから、ゆっくりと自分の姿をみるタイミングがなかったのだ。侍女たちの技術力すごい……。

「そろそろお時間ですので、移動をお願いいたします」

 支度を手伝ってくれていたうちの一人にそう声を掛けられる。きっと会場には多くの人が待ち受けている。大勢の人の前に出るのは前世ぶりだから、想像するだけで緊張する……。

 部屋を出るとユースルイベ殿下が待っていた。殿下も式典用の服装になっているからか、いつもに増して豪華な服装。軍服をベースにした白い服に勲章などがたくさんついている。挨拶をしようとしたところで殿下が呆けていることに気がついた。

「ユースルイベ殿下……?」

「っ、すまない。
 おはよう、フリージア嬢。
 昨夜はよく休めたかい?」

「ごきげんよう、ユースルイベ殿下。
 とても過ごしやすい部屋を用意していただいたおかげで、ゆっくり休むことができました」

「それは何よりだ。
 では、行こうか」

 そういって手を差し伸べられる。これは会場まで殿下がエスコートをしてくれるということなのか……? 断ることもできないで、私はその手を取って歩き始めた。

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