ギフトに振り回されてきたので、今世はひそかに生きていきます

mio

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 大きな扉の前で一度立ち止まる。思わずユースルイベ殿下の腕を握る手に力が入る。それに気がついたのか、冷たくなった手に殿下の手が添えられる。温かい……。

「大丈夫、怖がることはないよ。
 僕が傍にいるから」

「はい……」
 
 ユースルイベ殿下がいるからって安心することはない。そう言い返したかったけれど、殿下の温かい手に安心してしまった自分がいる。
いけない。センタリア商会の皆さんのためにも、ナフェルのためにも馬鹿にされるわけにはいかない。気持ちを切り替えないと。

 扉の傍にいる侍従が扉を開けて入場の声を上げる。ユースルイベ殿下にエスコートをされたまま、私は会場に足を踏み入れた。

 開いた扉の先に待ち構えていた人数は思っていたよりも少ない。だが、その服装から全員が重臣であることがうかがえる。正面の一段高くなっているところには国王陛下、王妃陛下が座している。この方が王妃様。その少し後ろにはパルシルク殿下と思われる少年がいた。

その手前にはミリアさん。ミリアさんの前までエスコートされると、手を離される。そこで私は陛下方に向かって礼をとる。そんな私に陛下はうなずいた。

「はじめるように」

 陛下の言葉に、ミリアさんが礼をして一歩前に出る。そして私の手を取って、じっとこちらを見つめてきた。途端、ミリアさんの目が輝きだす。もともと小さく輝いていたけれど、その比ではない。本気でギフトを使うとこうなるのか、と考える。

 その目が小さく見開かれる。目の輝きに見とれていると、徐々にそれが収まってきた。きっと終わったのだろう。手が、微かに震えている……?

「この方のギフトは『神の目』でございます」

 ミリアさんがそうはっきりと宣言する。瞬間、周りから声が漏れる。それは安堵の声だったのかもしれないし、喜びの声だったのかもしれない。でも、これで私の将来は決まった。

 顔を上げると、国王様がこちらを見ていた。

「フリージア・シュベルティー子爵令嬢。
 そなたを『神の目』をもつ者と認めよう。
 その能力を持って、わがバニエルタ王国を盛り立ててくれることを願う」

「陛下のお言葉、しかと受け取りました。
 よろしくお願いいたします」

 陛下の言葉を受けて礼をする。そのあとは後ろを向き、立ち会った人たちに向けて礼をする。顔を上げると、臣下たちはそれぞれの礼をとっていた。

 このまま、会場を移動する。今度は婚約式だ。服装はそのままでいいから楽かもしれない。次は親族や上の位にいる臣下の前で婚約を宣言する、と。

 面倒なことに、休憩をはさむと次は国民への顔見せがある。それは『神の目』の乙女が見つかったという宣言のため。今回、王太子との婚約は発表しない予定だけれど、隣には殿下が立っていてくれるようなので、ほとんど宣言しているようなものよね。

 それだけ国にとっても大事なことなのだと、そう言われてもあまりよくわからない。

婚約式の会場にはまたもやユースルイベ殿下にエスコートしてもらって入っていく。ここにナフェルがいるのよね。きょろきょろしたい気持ちを押さえて、すっと前を向いて歩く。

殿下と二人で陛下の前に立つ。まるで結婚式の様だ。結婚を迎える歳ではたいてい寝込むことが多い。そのため、実は豪華な結婚式を挙げたことがないな、なんて思う。したいわけではないけれど、ちょっと意外。

「フリージア・シュベルティー子爵令嬢。
 そなたをバニエルタ王国王太子、ユースルイベ・クアルゼット・バニエルタの婚約者として迎えよう。
 役目をしかと果たすように」

「はい、精進いたします」

 先ほどから何度もやっている礼をする。久しぶりにやったから疲れる……。それからユースルイベ殿下にも陛下から声がかかる。それに応えた後、クッションの上に乗せた形で指輪が運ばれてきた。

 婚約の証である指輪をユースルイベ殿下からはめられる。それを見届けた人たちから拍手が送られた。これで、儀式は終了。何とか無事に終わってよかった。

 最後、退出するために後ろを向く。儀式に立ち会った人たちのその最前。周りの人たちと比べてひと際小さな人がいた。ナフェル、思わずそう呟いてしまう。
 最後に会ったあの日から、どれだけのことがあったのだろうか。そこには私の知らない顔つきをした弟がいた。

 とっさに話しかけようとしてしまったが、今は声をかけていい時ではない。少し強引にユースルイベ殿下に手を引かれることで、ようやく今の状況を思い出す。何とか殿下にエスコートされて、私は部屋まで戻った。

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