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五章 学園生活 1‐1

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 教室に入り、目に入ったのは一人の美少女。
 って、ルカ様だ!
 他はまだ誰も来ていないようだ。
 正直気まずい……。

「あら、アーネさん。
 ごきげんよう。
 同じクラスでしたのね。
 これからよろしくお願いしますわ」

 入り口から動けないでいた私にルカ様は優雅に礼をする。
 やっとの事で、私はぎこちなく礼を返した。

「ごきげんよう、ルカ様。
 こちらこそよろしくお願いします。 
 あの、ルイベルト様は……」

「ルイはこのクラスではないわ。
 正確に言うと、今は、ね。
 確か、貴族科だったかしら」

 今は、と言う言葉が気になりつつも、スルーすることにした。

「ずいぶんとお早いのですね」

「毎年人混みがすごいからって、先に入れていただいたの。
 ルイは新入生代表の練習もありましたし」

 とりあえず、会話が続いたことやルイベルト様がこのクラスでは無いことに安心した。
 ただ、次に問題になったのは座る位置だ。
 離れても失礼だし、かといって近すぎてもいろいろと面倒だ。

「よかったら、お隣にどうぞ」

 なかなか座らない私を見かねてか、ルカ様から声をかけてくださる。
 ただ、次に来た人が広い教室で王女の隣に座る私をみたらどう思うのだろうと考えると、足が動かなかった。

「そんな、遠慮なさらないで。
 新入生のなかであなたのことはもう有名だと思うわ」

 ルカ様の発言に目を見張ると、くすくすと笑われてしまった。

「だって、筆記試験でルイを抑えて一位をとってしまうし、それでルイに絡まれていたでしょう。
 あの子に悪気は無いのだけど、それであまりあなたと関わりたくないと思っている人もいるはずよ。
 だから、私と仲が良いと思われていた方がいいと思うわ」

 なぜだ!
 そんな言葉が頭にうかんだ。
 私はただ頑張って試験を受けただけなのだ。
 それなのに……、本当にあの王子は!
 まあ、そんな状況だと、ルカ様が言っていたことは正しい。
 私は、大人しくルカ様の隣に行くことにした。

「でも、アーネさんが最初に来てくださって嬉しいわ。
 私、ゆっくりお話してみたかったの」

 きらきらとした目でそんなことを言われては、逃げ道は無かった。  

「はい、よろこんで」


 そうしてしばらくルカ様と話していると、ぽつぽつと人が来だした。
 ルカ様を見て固まり、私の方を見て固まり、を繰り返されるとさすがに嫌になってくる。
 私は何もしていないのに!
 ただ、新しい発見としてルカ様とは気があうということがわかった。
 さっそく友達になれそうで嬉しかった。
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