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「ねえ、リンジベルア様!
今度、王宮が主催される夜会ではカルシベラ殿下も参加されるのですよね?」
「ええ、参加されると聞いているわ」
「まあ、お珍しい。
リンジベルア様もアルクフレッド殿下と参加されるとお聞きしたのですけれど」
「ええ、その予定よ」
「まあ、またお二人のダンスを見ることができるなんて幸運ですわね。
本当にお二人はぴったりですわ」
今日は私の取り巻き、気取りの令嬢とのお茶会。カルシベラ殿下、つまりカルラのこと、全然さりげなさを装えていないけれど、ここにいる皆さん気になっているようで誰も咎めない。むしろよく聞いた、と内心思っているのでしょうね。ばさりと扇を広げて顔半分を隠す。これは本当に便利品よね。今もひきつりそうになる顔を隠してくれている。
「まあ、ありがとう。
私、ダンスは不得手なのですけれど、殿下のリードは本当にお上手でいつも助けられていますの」
まあ、と笑うご令嬢方。よし、これでうまく誘導できたわね。正直カルラのことを聞かれるのは面倒なのよね。私に聞かないでご自分でどうにかしていただきたい。カルラはアルクフレッド殿下の2歳年下の弟で、私と同い年の第二王子。幼いころはアルクフレッド殿下よりも一緒にいたわね。それこそ、お互いに愛称で呼び合うぐらいには仲が良かった。それでも数年前、私が正式にアルクフレッド殿下の婚約者になってからはめっきり会わなくなった。会ってもそっけない。意味が分からない。
そして令嬢たちがそんなカルラを気にするのは、彼の婚約者に収まりたいからに他ならない。なぜだか彼は未だに婚約者がいないのだ。候補はいくつも上がっているのに、決まらない。正確には本人が拒む。こっちも意味が分からない。というわけで、今、若い令嬢たちの関心はどちらかと言えばアルクフレッド殿下よりもカルラに集まっているのが現状だった。
令嬢たちはさすがにアルクフレッド殿下にカルラのことを聞きに行く勇気はない様で、こうして世間話を装って私から情報を集めようと必死なのだ。なんて迷惑な。これは今度会ったら文句の一つでも言ってやらないと気が済まない。次の夜会では出ると聞いたし、その時かしら。
そんなことを考えながらもそつなく茶会をこなす。ごくごく一部。私がアルクフレッド殿下にふさわしくない、と言ったことを遠回しに伝えてくる人もいるけれど、そんな人にはぜひ! アルクフレッド殿下の婚約者になってみてもらいたいものだわ……。
***
「まあ、お嬢様!
とてもお似合いですわ」
キラキラとした目をこちらに向けてそうほめてくれるのはカナ。鏡で見たときから自分自身で想像以上の出来に驚いていたくらい、今日の私は素晴らしかった。
「カナのおかげよ。
それにしても、こういう気遣いだけは本当に立派だわ」
今日のドレス含む装飾品はすべてアルクフレッド殿下から贈られてきたもの。サイズがぴったりなのはもちろん、殿下の髪色や目の色、それらの私自身の色と反発しないように丁寧に取り入れたドレスは、私だけのためにデザインされたものだろう。それに、今日の夜会の目的もきちんと意識して、いつもよりもレースは控えめ。ふんわりと甘さを押し出したデザインではなく、きっちりと着こむような背筋が伸びるようなデザインになっていた。
装飾品もそのデザインの良さを最大限生かしていた。こちらも派手ではなく、小ぶりな宝石を使用している。けれど、地味でもない。ドレスと合わせることで、一種の芸術が完成したかのように美しい。
これを贈ってきたのがあの殿下だってことはなんだか気に入らないけれど。そんなことを考えていると、わざわざ殿下のお迎えがやってきた。これから向かうのは王城なのだから、こちらまで来るのはただの手間なのに。こういうことをさらっとするから、私は……。
***
パーティーでは国王陛下、王妃陛下に続いて私とアルクフレッド殿下がダンスをする。周りの視線を一身に集めるこの時間、本当に嫌い。失敗したらどうしよう、そんな思いがいつも頭をよぎる。
「ほら、私だけを見ていてよ」
ぎゅっと、抱き寄せられる。こ、ここにはそんな動きないわよね⁉ きゃーと小さく声が上がる。恥ずかしさに顔に熱が集まっていく感覚がするけれど、何とか笑みを崩さずに最後まで踊り切った。
またやられたわ……。恨みがまし気に殿下を見上げても全くダメージを受けていないし。全くもう。
そこからはほかの参加者も入ってきてダンスをする。アルクフレッド殿下とは婚約者だから、そのまま3回連続で踊ると、ようやく解放された。ああ、本当に疲れたわ。
今度、王宮が主催される夜会ではカルシベラ殿下も参加されるのですよね?」
「ええ、参加されると聞いているわ」
「まあ、お珍しい。
リンジベルア様もアルクフレッド殿下と参加されるとお聞きしたのですけれど」
「ええ、その予定よ」
「まあ、またお二人のダンスを見ることができるなんて幸運ですわね。
本当にお二人はぴったりですわ」
今日は私の取り巻き、気取りの令嬢とのお茶会。カルシベラ殿下、つまりカルラのこと、全然さりげなさを装えていないけれど、ここにいる皆さん気になっているようで誰も咎めない。むしろよく聞いた、と内心思っているのでしょうね。ばさりと扇を広げて顔半分を隠す。これは本当に便利品よね。今もひきつりそうになる顔を隠してくれている。
「まあ、ありがとう。
私、ダンスは不得手なのですけれど、殿下のリードは本当にお上手でいつも助けられていますの」
まあ、と笑うご令嬢方。よし、これでうまく誘導できたわね。正直カルラのことを聞かれるのは面倒なのよね。私に聞かないでご自分でどうにかしていただきたい。カルラはアルクフレッド殿下の2歳年下の弟で、私と同い年の第二王子。幼いころはアルクフレッド殿下よりも一緒にいたわね。それこそ、お互いに愛称で呼び合うぐらいには仲が良かった。それでも数年前、私が正式にアルクフレッド殿下の婚約者になってからはめっきり会わなくなった。会ってもそっけない。意味が分からない。
そして令嬢たちがそんなカルラを気にするのは、彼の婚約者に収まりたいからに他ならない。なぜだか彼は未だに婚約者がいないのだ。候補はいくつも上がっているのに、決まらない。正確には本人が拒む。こっちも意味が分からない。というわけで、今、若い令嬢たちの関心はどちらかと言えばアルクフレッド殿下よりもカルラに集まっているのが現状だった。
令嬢たちはさすがにアルクフレッド殿下にカルラのことを聞きに行く勇気はない様で、こうして世間話を装って私から情報を集めようと必死なのだ。なんて迷惑な。これは今度会ったら文句の一つでも言ってやらないと気が済まない。次の夜会では出ると聞いたし、その時かしら。
そんなことを考えながらもそつなく茶会をこなす。ごくごく一部。私がアルクフレッド殿下にふさわしくない、と言ったことを遠回しに伝えてくる人もいるけれど、そんな人にはぜひ! アルクフレッド殿下の婚約者になってみてもらいたいものだわ……。
***
「まあ、お嬢様!
とてもお似合いですわ」
キラキラとした目をこちらに向けてそうほめてくれるのはカナ。鏡で見たときから自分自身で想像以上の出来に驚いていたくらい、今日の私は素晴らしかった。
「カナのおかげよ。
それにしても、こういう気遣いだけは本当に立派だわ」
今日のドレス含む装飾品はすべてアルクフレッド殿下から贈られてきたもの。サイズがぴったりなのはもちろん、殿下の髪色や目の色、それらの私自身の色と反発しないように丁寧に取り入れたドレスは、私だけのためにデザインされたものだろう。それに、今日の夜会の目的もきちんと意識して、いつもよりもレースは控えめ。ふんわりと甘さを押し出したデザインではなく、きっちりと着こむような背筋が伸びるようなデザインになっていた。
装飾品もそのデザインの良さを最大限生かしていた。こちらも派手ではなく、小ぶりな宝石を使用している。けれど、地味でもない。ドレスと合わせることで、一種の芸術が完成したかのように美しい。
これを贈ってきたのがあの殿下だってことはなんだか気に入らないけれど。そんなことを考えていると、わざわざ殿下のお迎えがやってきた。これから向かうのは王城なのだから、こちらまで来るのはただの手間なのに。こういうことをさらっとするから、私は……。
***
パーティーでは国王陛下、王妃陛下に続いて私とアルクフレッド殿下がダンスをする。周りの視線を一身に集めるこの時間、本当に嫌い。失敗したらどうしよう、そんな思いがいつも頭をよぎる。
「ほら、私だけを見ていてよ」
ぎゅっと、抱き寄せられる。こ、ここにはそんな動きないわよね⁉ きゃーと小さく声が上がる。恥ずかしさに顔に熱が集まっていく感覚がするけれど、何とか笑みを崩さずに最後まで踊り切った。
またやられたわ……。恨みがまし気に殿下を見上げても全くダメージを受けていないし。全くもう。
そこからはほかの参加者も入ってきてダンスをする。アルクフレッド殿下とは婚約者だから、そのまま3回連続で踊ると、ようやく解放された。ああ、本当に疲れたわ。
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