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3章 王都での暮らし
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しおりを挟む「さあ、準備ができましたよ」
アベルに言われて改めて自分の服を見下ろしてみる。うん、いい感じ。シントといったときみたいな平民に寄せたシンプルな服。着心地は悪いけれど落ち着きます。
「準備はできたかい?」
その時ちょうどいいタイミングで兄上が部屋にやってきた。
「はい!
楽しみです」
「はあ……。
大丈夫、アランは僕が守るよ」
何を言っているのかはわからないけれど、ひとまずありがとうございますといっておきました。
さてさて、先ほどからいったい何の準備をしているかというと、なんと今日はお祭りの日なのだ! 無事に体調を崩すことなくこの日を迎えることができました。よかったよかった。説明を聞いてみると、この祭りは無月、金月という厳しい季節を超えて新たな命が芽吹いてくることを祝うお祭りらしい。そのため、食べ物の屋台がメインらしい。
「いいかい、誰かに一度食べてもらってから口にするんだよ?」
剣術や体術に優れている兄上がそばにいること、何より向かう先がお祭りであることを考慮して護衛は一人らしい。結構自由に回れそうでより楽しみになってきた。
そして近くまではと、馬車に乗り込みさっそく出発だ! 市井に溶け込まれるようにと用意された馬車は家紋も入っていないし、乗り心地も悪い。でもそれにも楽しさがあがっていくから結構まずいかも。
「アラン、そろそろ落ち着かないと。
熱が出てくるよ」
う、やっぱりそうだよね。スーハ―、と深呼吸をする。そんな僕の頭をなぜか兄上が撫でてきた。そうこうしているうちに馬車が止まった。ここまで来ると人のざわめきが聞こえてきている。
「さあ、回ってみようか」
「はい!」
うわぁ! 兄上が言っていたように、確かにところせましと屋台が並んでいる。銀月はそんなことはないらしいけれど、無月と金月では新しい年を祝うくらいで平民は娯楽が少ないらしい。貴族はまあお披露目があったり夜会があったりと忙しくしているけれど、明かりすら満足に用意できないと夜は寝るしかないものね。久しぶりのお祭りということで余計に楽しんでいるんだろう。
「何か気になるものがあったら、すぐに教えてね。
さすがにふらふらと動かれたら見失ってしまうから」
ぎゅっと手をにぎってそんなことをいう兄上は本当に過保護だと思う。まあ、もちろん素直に従うけれど。
あれは何、これは何? と初めて見る食べ物を片っ端から聞いていく。本当にいろいろとあって、見ているだけでも飽きなんて来ない。本当はもっとゆっくり見たいんだけれど、動きを止めるとそれはそれで面倒そうなんだよ。
それでもどうしても気になるものはかってらうと、いつの間にか広場へと到着していた。
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