150年後の敵国に転生した大将軍

mio

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5章 視察(下)

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 ん、んんんん……。なんか、揺れている? いつの間に馬車に乗ったんだっけ? だけど、いつものよりもすごく乗り心地が悪い。なんでだっけ?

 うっすらと目を開ける。真っ暗だ。あれ、縛られて、いる? ……そうだ! シントが消えて、それでサイガに部屋に戻ろう、と手を引かれたんだ。その時に横から誰かに引っ張られたんだ。

 つまり今は縛られてどこかに移動させられている途中、ということかな。起きたことを気が付かれないように気を付けながら周りを見る。あ、よかった。シントも一緒だ。

「シント、シント」

 できるだけ小さな声でシントに呼びかける。お願い、起きて。さすがにこれ以上大きな声は出せない。

「しっかし存外楽な仕事だったな」

「だな。
 国の第二王子と上位貴族を攫えっていわれたときは、何を言っているんだって思ってたのにな。
 楽な仕事なわりには報酬たんまりもらえるし」

「あとは目的地までこいつら運ぶだけだな」

 まずいな、目的地がどこかはわからないけれど、つまりこいつらを雇ったやつがいるということだ。どうしよう。まずは拘束を解かないといけないけれど、ナイフ……は取れないか。というか、拘束する前になんで武器の確認しなかったんだ? もしかして、男子だし使うなら剣しかないと思っていたとか? ……助かったのは確かだし、ここは深く考えないでおこう。

 仕方ない。なら魔法で切るしかないか。たぶん大丈夫だけど、加減間違えるといろいろまずい。でも、やるしかない。

「シント、お願い起きて」
 
「あ、らん……?」

「よかった、大丈夫?」

「んん、ん、ここ、どこ?」

「わからない。
 誰かに連れ去られたみたいで」

「……あー、なんだか思い出したかも。
 で、この状態なんだね」

「うん。 
 ちょっとまって、今縄切るから。
 そしたら、一気に走ろう」

 ただ、一緒の方向に走るのがいいのか、別々のほうがいいのか……。

「一緒の方向に走ろう」

「シント?」
 
 理由はわからないけれど、そうきっぱりと言われるとそれが正しく思える。よし、とにかく行動を起こさないと。はっ、と一度息を吐き出す。そして集中するとまずは自分の縄を切る。よし、うまくいった。こんなぎりぎりな使い方久しぶりすぎて緊張した……。

 次はシント。こちらが子供だからと油断してくれているのか、全然こちらの様子を見るそぶりがない。ものすごく助かるけれど、それでいいのか。とにかくシントの縄を切って、と。

 お互いに顔を見合わせてうなずく。今いる場所は荷台だ。音をたてないように気を張りつつも幕を上げる。そして魔法で風を起こして補助しつつ、なんとか地面に降りた。そして先に走り出したシントの後を追った。

「ん? 
 ちょっと待て、いったん馬車止めろ」

「え、でもそれだと約束の時間に……」

「いいから!」

 なんか察しがいい人いるな。子供の足だと大人よりもだいぶ遅い。とにかくここから離れるのが一番だ。

「おい! 
 あいつらいなくなってんぞ!」

「はぁ!?
 だが、ちゃんと縛ってたし、走っている馬車からどうやって」

「知らねえよ!
 だが縄は切られている。
 それにいない、これがすべてだ」

 シント、どんどん山の方に入っていく。迷いがないけれど、何か目的地あるのか?

「おい、あっちの方から音がする!」

 とにかく走らないと。


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