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愚かな君
【前編】忘れよ
しおりを挟む谷本 雪。
俺は家もなければ仕事もしてない。
あー、仕事は昨日やめたばっかりだけどね。
まずは、今日泊まらせてくれる奴探すしかない。
繁華街の裏路地は、結構ヤらせてあげれば泊まらしてくれるやついるんだけど
ん…。あれ
お!あいつ!!
俺は、路地裏前に座る好青年に声をかける。
「なあなあ!君、晴人くんでしょー!!確か一人暮らしだったよね!お願いだから今日だけ泊めて!!」
黒いフード被ってたけど、よく家に来てたから覚えてる。弟の友達だった晴人くんだ!
知り合いなんてラッキー!
…でもさっきからちょっと暗いような。
「…あ、もしかして裕司の兄ちゃんですか。…えっと、別にいいですよ…。」
「いやー!悪いね~それにしてもイケメンになっちゃって、本当、めっちゃモテんだろ!!」
黒髪で色白な、でもガタイ良くて背も高い。整った顔に低いかすれた声。
うーん。ノンケなんだろうなあ…残念!
「そんな事ないですよ。僕なんか、キモいですし。…あ、着きましたよ。どうぞ。」
「お、…おう!」
あれ、こんな暗いやつだっけなあ。なんか笑顔が可愛いイメージだったけど、あんまり顔上げないし…。
そうこうしてると、晴人くんは料理を作って俺に振舞ってくれた。それがめっちゃ上手くて、酒も進むしもうベロベロ。
お互い色々あったみたいなのが伝わったけど、強引な俺の頼みも結構聞いてくれるしいい奴なんだろな!
「……ふぅ。……ん?なんそれ、飲み薬?風邪引いてんのー?」
晴人くんは3つくらいの錠剤を飲み込む。
「…ああ、これですか。まあそんなところですかね。」
その錠剤が入っていたビンを棚へしまうと、晴人くんはベッドの方へ向かった。すると足を止めて俺の方に振り返る。
「…あ。そうだ、風呂入って来た方がいいと思いますよ。僕はもう入ったので大丈夫ですけど、雪さんって、ネコ役でしょ?」
一瞬何をいってんのか分からなかった。
「…………。…っええっ!」
驚きを隠せないんだけど!!晴人くん!
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