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運命は選べない
認めない
しおりを挟む僕はあの後、気を失ってどこかへ連れて行かれたらしい。
目が覚めるとまた見知らぬ場所だった。
でも今度は足枷だけで手枷は外されている。
「やった!!……っぐあっ!?」
立って前へ出ようとすると、首が思い切り締まった。
…これは、首輪だ。鎖に繋がれてる。
でも独房とは全く違う。暖かい部屋に、テーブルには…食事?と、Ωの抑制剤が置いてある。
本当に僕はΩだったんだ。…しかもリザルトが、運命の番。
…そんなもの知るか。
僕は幸いまだ首を噛まれて無い。僕はここから出てヤンと合流し、生き延びるんだ。
どんなに体が、心がリザルトを欲しても、僕の運命は僕が決める。
絶対に逃げてやる。
「目覚めたようだな。ユーリテスト。」
この声は!
僕の起きる時を待ちわびていたかのように向かってくる。ガルドザルクの皇子リザルトだ。
忘れてはいけない。こいつとは運命の番だ、心だけは奪われちゃいけない。相思相愛になってはいけない…!
「ああ、待っていたぞ。お前を陵辱するのが楽しみで楽しみで。はっはっはっは!!…お前のフェロモンを感じた時、本能がお前を求めた。お前はもう俺から逃げようともしないだろうな。…お前の体が、俺を、覚えてしまっているからだ!」
はっはっはっ!!と、下品な笑い声に僕は怒りが限界を達した。
ミューフォリアの地を汚して、その王族たる僕をここまでに侮辱するなんて。
…ぶっ殺してやる!!!!
「…お前なんかに。お前なんかに、僕が心を許すと…?馬鹿馬鹿しい妄想はやめてくれないか。本当に不愉快だ!…僕はお前なんかに屈しないし、愛しいなんて微塵も思わない。独りよがりの愛を押し付けるとか気持ち悪いんだよ!」
…あれ。
なぜ心が…締め付けられるんだ。これが運命の力なのか。
分かりやすくリザルトは眉を歪ませて不服そうな顔をする。
「ほ、ほう?…貴様はとっくに俺に惚れ込んでいると思っていたが、まだ素直になって無いとはな、そんな口を叩けるのも今のうちだぞ!絶対に俺とお前は結ばれる運命なんだ!!わかったか!」
すると扉を思い切り閉めてリザルトは去っていった。
なんだなんだあいつ本当に僕の事好きになってないか。あり得ないぞ。
僕は早くヤンと合流して、父と母に会わないといけないのに!
僕は辺りを見渡す、すると割れば逃げられそうな小窓を見つけた。
だが問題は、足枷とこの首輪だ。
扉の外には護衛が2人。僕の方は見えてない。
せめて首輪さえなければな。
はぁくそ、それにしてもどうして。
ミューフォリアはなぜ、攻め込ませてしまったんだろう。ガルドザルクとは一切交流してないし、恨まれる理由なんてあったか?おかしいだろ本当に。あの野郎に聞いても答えるわけないし…。
やっぱり脱出したい。
唯一の逃げ道。あの小窓を見つめる。
するとさっきまで無かったはずの…あれ、なんだか紙が挟まってて…
手を伸ばしてそれを取る。
『扉に向かって、叫べ』
…どういうことだ?
誰がこんな事を。
でもやるしか…ない!!
「…おい!!!漏れそうなんだ!!そこにいるんだろ!僕を手洗いに連れていけ!」
2人の護衛が扉を開き入ってくる。
「うるさいぞ!大人しくそこの壺にっ…ぐはぁっ!」
___ドサッ
護衛の1人が倒れた?
なんだ!?仲間割れか…?
…ああいや、こいつは
「申し訳ありません。お待たせいたしました。…ユーリテスト様。」
その声の主は鎧の兜を外した。
間違いない!!
「…ヤン。ヤン!!!お前!!生きてて!!」
涙が頬を伝う。僕はヤンに飛び付こうとするが首輪が邪魔でガチャガチャと音を立てて動く。
「あーああ、落ち着いてくださいよ。今外しますから。」
ヤンは首輪の鍵を外すと、僕が考えてた小窓ではなく。天井の通気口のような場所をガチャっと開いた。
「ほら、時間ないんですよ。」
「ああ、いっ行こう!」
そうか、ここがあったか。僕とヤンはこうして脱出することに成功した。
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