僕は運命から逃れたい

先々ノアル

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凍てつく心【脱出編】

匂い

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「あの、ユーリテスト様。もしかしてテーブルに置いてあった抑制剤。飲んで無いんですか。」

リザルトの手から逃れた僕らはとにかく西へ西へと向かっていた。

「…え、ああ。そんな時間なかったしな。体は少し熱いけど、今はそんな場合じゃ無いし、我慢する。」


とは言っても疲労も限界だ。

逃げてからひたすら走っていたせいか、喉も乾く。

するとヤンに知り合いがいるという宿屋に泊まると提案され、僕たちは少しの間休むことにした。










「…なあ、なぜそんなに遠くで寝るんだ。出来れば一緒に寝て欲しいんだけど。」


ベッドはあいにく1つしかない。「私は床で十分です。」とか言ってたが、扉ギリギリまで遠くの床で寝る必要はないはず。



「…ユーリテスト様はいくつですか?もう1人で眠れるお年でしょう。今日はゆっくり体を休めて下さい。」


言っていることは最もらしいが。
そんなに離れることは無いじゃないか…。






「…やっぱりお前も、Ωだからと…差別してるのか…。僕の事嫌いか…?」





あ。聞くつもりは無かったのに。



すると、遠くでそっぽを向いていたはずのヤンが、勢いよく振り返る。



 
「…っ。そんなわけないでしょう。バカですかあなたは。嫌いとか無いんですよ。私はあなたの護衛です。たとえαでもΩでもβでも、必ずあなたの側に居ます。」


「…なっ、なんだよ。いきなり…。」


僕は今、顔が真っ赤だろうな。

すごくドキドキしてしまった。
僕は耐えられない静寂をかき消すように、揚げ足をとることにした。


「じゃあ側にいてくれよ。ほら、ベッドに来い。」

照れているのが悟られないように俯く。





…あれ、全然来てくれない。




「……おいっ!はやく、っ…!?!」



気づくとヤンは僕のすぐ近くまで来ていた。

「あ、はは…う。分かればいいんだよ。分かれば…」

「……。」


そんな真面目な顔して、なんだよ。


「ユーリテスト様。私は、αでございます。あなたの匂いに耐えられない、愚かしい私を、どうかお許し下さい。」

そう言うとヤンは、ベッドに入り、僕の体をまさぐる。
驚きと恥ずかしさで心臓がバクバクと動いていた。

「…え、お、お前αなのか…んっ、今は、体が敏感だから…っあっ、んあっ!」
 

切なさと嬉しさが入り混じる。

あれ、僕はヤンの事…好きだったのか。

どうしようもなく、溺れたい。


「ガルドザルクの皇子にされた事なんか、忘れて下さい。…私があなたを、守ってみせます。」







ヤン…お前には言ってないことがある。

でも僕は言えそうに無いよ。




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