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凍てつく心【脱出編】
再会
しおりを挟む「起きて下さい。ユーリテスト様。…起きろおい。」
ヤンが僕の鼻をつまむので、僕は「フゴッ」と、情けない声を出して起きる。
「…!ヤン!お前、最悪の目覚めだそ。全く。」
苛立ちながらも、嬉しい。
こんな朝は久しぶりだ。
ヤンは朝食を作っていたようで、すぐに調理をしに戻っていった。
テーブルにはΩ抑制剤が置いてある。きっと買ってきてくれたのだろう。
僕もベッドから体を起こし、料理中のヤンの方へ行く。
「ふーん、オムレツか。お前料理できなさそうな顔してるのに、意外と器用だな。」
フライパンにあるふわふわとしたオムレツは、キレイに形が整っていた。
「お褒めに預かり光栄です。…暇なら皿とフォーク出して座っていて下さい。」
ヤンは少しそっけない態度で、僕をぐるりと反対方向へ向かせる。
僕は素直に食器を並べて、出来上がるのを待っていた。
呑気に朝食なんか食べていいのだろうかと思っていたけど、西門は昼ごろからしか開かないのだ。
それまではこうしてヤンとゆったり出来る。
「ほら、出来ましたよ。熱いので気をつけて下さいね。」
ヤンがオムレツとパンとチーズのスライスを盛り付ける。
これは…
「おお、すごい美味しい!なんだこれ!お前にこんな才能があったとは!!」
「ほんと、すごい美味しいです~!これ、癖になっちゃいます~!!」
「いえいえ、ありがとうございま___」
「「!?!?」」
は?!今誰か!
すると僕の皿からオムレツが半分くらい無くなっていた。
「あっはっはっは!!そんなに驚く事無いじゃん。ヤってる最中に現れたってわけでも無いのに~」
その声の主は、血色のいい肌に、赤い目で黒髪の青年だった。
「…っ何者だ。なぜここにいる。名を名乗れ」
ヤンは素早く僕の前へ出ると、バターナイフを手にとって、青年の首に向ける。この目は、本気だ!
「おいよせ、まだ若いだろ!…こいつが、ガルドザルクの使いだとは思わないし…な?」
「そうですよ~!俺はユーリくんより全然年上だけど、ガルドザルクの使いなんかじゃ無いし!」
ん、こいつ今。
ユーリくんって言ったか?
「…はぁ。どういう事だ。お前はユーリテスト様の何を知ってる。」
「うーん。………何を知ってると思う?…って、冗談!!」
殺気に満ちてるヤンを気にせず、ヘラヘラと笑って青年は僕の方を見つめた。
「覚えてない?リライム・モルザーナ。リラってよんでくれてたのに!」
僕は昔の古い記憶を思い返す。
あ、そうだ思い出した。
「君……もしかして、僕に女装させて遊んでた…リラ?でも、女の子じゃなかったのか。」
「ごめんね~!訳あって女の子って事にしないといけなくて。」
僕はリラを知っていた。
でもこいつは、こんな性格じゃなかったぞ。それになぜここに。
一体なにを企んでいるんだ。
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