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凍てつく心【脱出編】
西の助け舟
しおりを挟む「おい!ユーリテスト様に近づきすぎだ!!」
ヤンはリラの手を引いて、後ろに下げた。
「え、うるさっ。なに急に、ヤンって声の大きさ調整できない人…?」
「お前…殺されたいのか?」
ヤンとリラは仲が悪い気がする。
宿を出てからしょっちゅう睨み合っていて、ほんとうにこれから大変だなぁ。
「お…落ち着けよお前ら、ほら、協力してかないといけないんだから。」
こうやってなだめるの、5回目くらいだ。
「とは言っても、ヤンの奴ぜんっぜん俺に感謝してないし!あのまま西門行ったら死んでたんだぜ~!」
「…お前に言われなくても死なないから平気だ。…それより、ユーリテスト様に危害を加えそうなお前を、縛ってやりたい所だがな。」
また、いがみ合い。
もういっか…。
僕らは今、東の大国。モンドールという国に向かっている。
母や父がいると思っていた西のカラバンには、既にガルドザルクの軍が攻め込んでいたらしい。
母も父も、今はモンドールで身を潜めているのだ。
リラはそれを伝えに、カラバンとガルドザルクの戦争状態の地をくぐり抜け、僕らのところまで来てくれたようだった。
「だいたい、こいつの言っている事は、本当に信じてもよろしいのですか?」
ヤンが嫌味混じりに聞く。
「…ほぼ間違いなく信じてもいいと思う。リラはカラバンの第2皇子…なんだしな。」
「まぁ~、ユーリくんが小さい時は、『リラちゃん!やめてよぉー!』って、俺の事完全に女の子だと思ってたもんね~!」
「そっ、それはお前がドレスなんか着てるからだろ!!!」
「あーごめんごめん」と、リラは僕の頭をポンポンと叩いた。
こいつ、なんかすごい腹立つ。
「それにしても、なぜガルドザルクは西のカラバンと、我が国ミューフォリアを敵に回したんだ。」
そうだ。
ヤンが聞いた事は、僕が一番知りたかった事だった。
「…それは、俺にも分からない。と言うより聞かされてない。ヤンやユーリくんが知らないなら、俺なんかもっと知らないよ。」
リラは憂鬱そうにそう言った。
僕らはまだ、なにも掴めてないんだな…。
「………ところで1つ気になる事があるんだけど…。」
「ん、なんだよリラ。」
「…ユーリくんってΩなの…?」
そういえば、もう時期薬の効果が切れる時間だ!!
僕はヤンと顔を見合わせる。
「あ!やっぱり~!…頼むよぉ、俺はαの抑制剤全然飲んでないんだから~!!」
リラは突然しゃがみ込んだ。
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