9 / 14
凍てつく心【脱出編】
目論見
しおりを挟む「ほら、早く飲め。」
ヤンが近くの薬屋で買ってきたαの抑制剤を、リラへ渡す。
それにしても僕は、自分が発情期になるのに気づけない体質なのかな…。
勢いよく水を飲むリラを、ヤンはぶっきらぼうに見つめる。
ヤンは平気みたいだった。
「…ふぅ。助かったよ。まさかとは思ったけど、ユーリくんがΩだとはねぇ~!…すごいフェロモンが充満してたけど、てっきり2人ともαだと思ってたからさ。あれでも結構我慢してたんだよ?ほんっと、故意に勃たせるなんて、俺の事狙ってんの?」
リラはしたり顔でからかうように言う。
「ばっ、違う!そんな訳ないだろ…!僕はそんな変態じゃない!」
煽られるがままに動揺してしまったので、
パタパタを顔を仰ぐ。
さっきまでリラは僕に欲情していた。
そしてヤンがそれに気づくと、咄嗟に「お前そこで待っていろ。!薬買ってくるから!」と、僕を抱えリラから離れたのだ。
今は収まったとはいえ、人が自慰しているところを見るのは、やっぱりドキドキする。
「なにその反応~~!…図星?」
さっき僕が分かりやすく照れてしまったせいか、リラがしつこく迫ってくる。
「それよりさぁ~。ユーリくんのフェロモンちょっと強すぎない…?よくヤンは耐えられたよね~。俺なんか2人が行ってる間3回くらい抜いちゃったよ~」
「…うえ、はぁ、知らないよ。僕、自分じゃ分かんないし…」
くそ…この話題は恥ずかしい。
すると、イライラしてるヤンがリラに釘をさした。
「ユーリテスト様がヒート状態だからって、お前まで発情するな。鍛え方がなってないんだよアホ。後、今後一切ユーリテスト様を気持ち悪い目で見るんじゃないぞ。分かったか?」
リラは小さく舌打ちして、「へいへい」と答える。
ヤンとは小さい頃からずっと一緒にいたけど、いつから僕の事好きでいてくれたんだろ。
いや、好きとは言われてないか。
護衛として守ってくれてるだけ。昨日も僕のフェロモンのせいで、ヤンの意思じゃない。のかも知れない…。
そんな事を考えていると、リラが突然立ち止まった。
神妙な顔をして、耳を澄ましている。
どうしたんだ?
「…やっぱり。
後ろからなんか来てる!!!」
「…ええ!?」
リラは地獄耳で、かなり視力も良い。
僕とヤンは後ろを振り向いたが何も見えなかった。
「ホントだよ、馬が走る音…しかもかなり訓練されてる。もしかしたら、ガルドザルクがまたユーリくんを狙いに来たのかもしれない!!」
___嘘だろ!
もう居場所が知られたのか!
すると素早くヤンがリラと僕の手を引く。
「今モンドールの東門へ向かったら追いつかれる!…ここはあの森林を通ってやり過ごしましょう!」
「あ、ああ!行こう!」
僕は、森林へ向かって走りながら、後ろを振り返る。
あれ、なんでだろう…。
…リザルトが、来てるような
そんな気がした。
0
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
愛させてよΩ様
ななな
BL
帝国の王子[α]×公爵家の長男[Ω]
この国の貴族は大体がαかΩ。
商人上がりの貴族はβもいるけど。
でも、αばかりじゃ優秀なαが産まれることはない。
だから、Ωだけの一族が一定数いる。
僕はαの両親の元に生まれ、αだと信じてやまなかったのにΩだった。
長男なのに家を継げないから婿入りしないといけないんだけど、公爵家にΩが生まれること自体滅多にない。
しかも、僕の一家はこの国の三大公爵家。
王族は現在αしかいないため、身分が一番高いΩは僕ということになる。
つまり、自動的に王族の王太子殿下の婚約者になってしまうのだ...。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる