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決まっていた運命の
無慈悲に告げる
しおりを挟む微かに残っていた精液の匂い。
Ωの濃いフェロモン。
色っぽい顔は艶々していて…すごく美しい。
うん、やっぱり。
あの頃からずっと好きだった。
きっとこれは運命だ…。
俺は、君のためなら。
「…はぁっ、はぁっ、くそっ。もう近くまで来てる!!」
リラは振り返らずにそう言うが、間違いなく来てるんだろう。
僕らは森林の奥へ奥へと向かって行っている。
このまま3人で逃げ切れるか…。
とたんに目頭が熱くなる。
もう、こんなのは嫌だ…。
「…なぁに、ユーリくん不安なの?…大丈夫。俺らが守るからね。」
リラは優しく微笑むと、また前を向いて走り始めた。
この森林の地形なんて分からないし、僕らミューフォリアやカラバンは戦争とは無縁の国だった。
こんな風に必死に追いかけられた事もない。
そんな僕らがうまく切り抜けるはずがなかった。
「…っ!……くそ!!岩壁…。」
「行き止まりだとっ………急いで戻って右の方へ行きましょう!」
……何だって、今から戻るのか!
そんなの、捕まるに決まってる。
「…なんでこんなことに。」
僕は絶望で膝から崩れ落ちた。
もう、無理だ。
どこに逃げたって捕まってしまう。
諦めるべきなんだ。
放心している僕を、気にせずヤンは抱き抱えてまた走って行く。
兵が……2人……いや4人か。
とうとう敵の人影が見えて、僕は最悪の事態を予想した。
___僕のせいで2人が死ぬ。
それだけは絶対にだめだ!
一番嫌なのは、ここで僕だけ逃げて2人が殺されてしまう事。
…敵がもし、僕だけが狙いなら。
どうにかなるかも知れない!
僕はリザルトの運命の番。それは消えない事実だ。それがある限り僕が殺されることは無いだろう。
ヤンが死ぬくらいなら、僕はあいつのモノになったっていい…。
人影がこちらに気づくのは時間の問題。もはや戦うのは必然!
僕は意を決して
木陰から飛び出した。
敵の正面に出__
…え
「……っユーリ!!!!!……危ないっ!!」
………待って、違う。
すごい速さで飛んできた矢は、僕の方へ向かって…
それをかばってリラが__
___グチャッ
「ああ…。
あああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああ!!!!!」
「……っうう、あああ!!!リラ!!!リラ!!!おい、なんで!!!」
なんてことを…してしまったんだ!
僕は…馬鹿だ…。
殺されないとたかをくくって、僕が捉えられてる間に、2人を逃がそうなんて、甘かった!!!
なんでこうなるんだ!!
「リラ!!…ねえ、嫌だ!待ってくれよ!…お願いだから…」
泣きながら僕はリラの傷口を抑える。
「うう、…ううううう。」
「……っ。ぐぅ…はぁ、ユーリ…くん。に…げて。いいから、はやくっ…!」
血が止まらない。これじゃ死んでしまう!!
どうすればいい。
「……っ。くそ、………ユーリテスト様!!ここは…逃げるしかありません。」
泣きじゃくる僕を抱き上げて、ヤンはモンドールの方向へ駆け抜ける。
「…おいっ!!ヤン!!離せ!!リラがっ、リラが死んじゃう!」
そうだ。だってあんなに血が出てて、
「…あれじゃあ、
無理なんです。リラは、もう助かりません…。」
くそっ、そんなの!!!!
「……ああ。…………ああああああああああああ!!」
僕はなんてことを
後悔の渦に飲み込まれ、僕の頭の中はリラの死に際ばかりが、輪廻のように連鎖していた。
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