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決まっていた運命の
嫉妬
しおりを挟む「…それは。………本当ですか?」
ひどく冷静なこの問いかけは、僕に向けられたものだ。
辛さで動悸がおさまらない。
ヤンだけには、離れないで欲しい。
「ヤン、僕は確かに…ミューフォリアの、リラの仇であるこいつと、運命の番だ。………でも僕が愛してるのは、お前なんだ。ヤン。」
僕は振り返る事も出来ずに、震える声でそう言った。
今ヤンがどんな表情で、呆れているのか怒っているのか悲しんでいるのか分からない。
それでも溢れる涙は止まらなかった。
「…ヤン。お前は、ガルドザルクに戻るのだ。兄としての命令だ。」
黙っているヤンに、リザルトは真剣に言葉を発する。
ヤンは口を開かず、黙っている。
何秒間の沈黙にしびれを切らせたリザルトはまた大声を上げる。
「…おいっ!!…ええと、リラ、とか言ったな。…おい護衛軍!そこに転がってる奴を治療しろ!大至急だ!!……幸い急所は狙っていないはず。時間もそこまで経っていないし…大丈夫であろう。」
リザルトは引き寄せていた僕の頭にポンポンと手を置いた。
「なっ、リラは助かるのかっ!!!…そうか、そうか…ほんとに…良かった。」
僕は全身の力が一気に抜ける。
フラッと倒れそうになると、すかさずヤンが抱きとめた。
「…あ、…ヤン………」
間近で顔を見つめる。
ヤンは微笑んでいた。
「あなたはバカですか。…運命なんか逃れられないものだと言うのに…」
その微笑みはどこが寂しそうで、僕は胸が苦しくなった。
____
目を覚ますと、どこか分からない場所にいた。
あれ、この感じは_
「お目覚めですか。ユーリテスト様。」
目の前にはガルドザルクの、いかにも民族衣装のような服を着たヤンがいた。
「……あ、ああ。…………そうだ!リラは!!?!」
僕は飛び起きてヤンに尋ねる。
ヤンは優しく僕を抱き寄せて言った。
「大丈夫です。今はまだ寝ていますが、怪我の治療は終わりました。もう時期目がさめるでしょう。」
「…そうか。」
僕がホッと息を吐くと、扉の方からものすごい足音がして、勢いよく開いた。
「おお、ユーリテスト!起きたのか。貴様は俺の運命なんだから、すぐに倒れられては困るぞ。」
あまりにも自己中心的な発言に、ヤンと僕は絶句する。
僕の平穏を奪い去った奴なのに。
僕がどう言い返してやろうかと考えている間に、ヤンは僕に言った。
「あの、ユーリテスト様。私はここであなたの護衛として一緒に居られる事ができます。…でもあなたはリザルトの番として、ここに居ます。…あなたの心は、どこにありますか。」
いつになく真剣に、ヤンは問う。
僕は即答したいのを堪えて、時間を置いて言った。
「ヤンが好きだ。ヤンじゃないと嫌だ。…僕は運命から逃れたい。」
後ろにいるリザルトに悪びれもせず、ハッキリとそう言った。
「やっぱりバカですね。…残酷なほどに。」
すると被せるようにリザルトは怒鳴った。
「おい!!貴様はΩの分際で、ヤンを愛してるのだと…?しかもこの俺を差し置いて、身の程を知れ!!」
続けてリザルトは叫ぶ
「俺は!何年ぶりかの最愛の弟に出会えたと言うのに!!…意味がわからんぞヤン!!どうしてそんな奴に仕えるなどと言い出すのだ!」
最初は、敵ながらもなんて恐ろしく貫禄のある奴なんだと思っていたが、
今は地団駄を踏む子供のようにキレている。
そんか兄に幻滅するような顔でヤンは言った。
「…兄貴には一生分かんねえよ。」
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