それは、キラキラ光る宝箱

花町 シュガー

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友人Aの独白

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「……で、結局どうなったの?」

「休憩だったからさ、そのまま時間来て終了……
ホテル前で別れた」

「その後は? 会ってねぇのか?」

「あぁ。俺は普通に会社入社して、そいつは海外行ったんだ。
貧しい国の手助けする団体のやつ。その試験に受かって、今もどっかの国にいるはず」

「へぇ、そうなんだ」

 カラン…と音を立てて氷が溶ける。
 水っぽくなってしまった酒を煽って、空のグラスをカウンターへ置いた。


「俺、さ。ずっとずっと、今も忘れられねぇんだ……」


 これまでの人生、あんなに自分を愛してくれた人はいただろうか?
 歴代の彼女より……どんな女よりも、ずっと俺を見て、愛してくれていた。
 それがあのたった数時間の間で…一度抱いただけで痛いほど伝わってきて……今も、胸が苦しくなる。

「そいつ、本当にこれまで付き合ったことがなかったんだ」

 きっと、やりたいことがたくさんあった。
 一緒に出かけたり、2人だけで飯食ったり、家でのんびりしたり、手を繋いだり……
 そんな、当たり前のことを望んでいたはず。

「あの日も会ってすぐにホテルだったし、全然何処にも行ってねぇ。帰りも…なんにも声かけれなかった。
そいつの雰囲気というか…なんかもう、吹っ切れたように笑ってたんだ。それがほんと、消えそうで……けど、どうすればいいか…わかんなくて……

俺、俺は──」


 (嗚呼、それは多分……そいつの〝優しさ〟だ)


 告白してしまった以上変に意識されるだろうし、そんな自分と一緒に街なんて歩きたくないだろうと踏んでのこと。

 (ほんと……優しい奴だったんだな)

 そんなに一途に想っていて、でも相手を思って気持ちを押さえつけて、後ぐされなく笑ってふわりと消えて。

 会ったことはないけれど……なんとなく、今もどこかの国で人のため一生懸命動いてるそいつが想像できる。

 (なぁ、お前は前に進んだんだな)

 自分とはって。
 自分と一緒にいても子どもは望めないし、こいつは普通の奴だから、自分の処に引きずっちゃ駄目だって。
 今もきっと、こいつの幸せを…未来を、願ってんだろ?

 ──だったら、俺はそれに賛同するよ。


「ね、奥さんはどんな人なんだ?」


「ぇ、ぁ…あいつ、は……
会社の奴に合コン誘われて、そこにいて……俺の2個下で、おっとりしてよく笑ってて…話してみたら結構話あったんだ。それで仲良くなって……料理はちょっとだけ得意で、あと──」


 ビクリと肩を震わせながら、ポツリポツリ思い出すように話し始める。

 (なぁ? もしお前が本当にそいつを忘れられねぇんなら、きっと海外まで追いかけてるよな?)

 日本の会社なんか入らず、そいつが所属してる協力隊なり青年団なり調べて、意地でも会いにいってんだろ?


 ──この決断には、〝勇気〟がいる。


 世間体を捨てる覚悟と、これまで描いてた未来を捨てる覚悟。
 親の反対や白い目で見てくる友人・社会全てを押し切ってまで、この世界のから外れて生きていく勇気があるならば きっと──

 (それをしなかった。選べなかった、そして他に愛する人を見つけた…… それだけだ)

 だから だから



「なぁ、おい」



 バシッ!と項垂れるように丸まったままの背中を叩いて、シャンとさせる。




「結婚、おめでとう」




 (お前も、もう 前向けよ)




「────っ、


あ、りがとう……っ、」





 目は潤み、声は掠れ、唇は震え、顔は泣いているかのように歪んでいて




 それでもあいつは、クシャリと笑った。



















 (そのときの あいつの顔を)

 (俺は、今でも忘れられずにいる。)




fin.




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