三角関係が巻き起こす愛のトラジェディーについて

花町 シュガー

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「あぁーくそっ」

城の離れにある建物の庭で、大の字になって寝転がる。

今から3ヶ月前、俺は皇帝の〝婚約者〟としてこの国に来た。
何故か。簡単に言えば「戦争しない道を選んだ」のが原因。

俺の出身は、それはそれは小さな島国だ。
他国との交渉が少ない為独特の文化が育っていて、民芸品や特産品がよく珍しがられる。人口も少なく、王族貴族平民の身分はあれど関係なしに皆支え合って暮らしていた。
そんな平和な国を我が領地にしたいと、ここ最近勢力を広げている国が侵略に来て。

『軍で固められている相手とほぼほぼ丸腰のこちら。はっきり言って勝てるはずがない』

『だが、我らには守りたい伝統がある』

初めから降参の白旗を振っておきながら、恐れ多くも『そちらの当たり前を押し付けるな』と要求したこちらに、相手の皇帝はこう言い放ったそうだ。

『ならば、王族を1人寄越せ。年は私と変わらぬ程で、民から最も愛されている者。それを人質とする。
お前たちの文化や伝統は確かに金になる。それを絶やさぬよう必要以上の介入は控えるが、少しでもその文化を他国へ伝えてみろ。すぐに人質の首を跳ね死体を返してやる。
……そうだな。それと、その者は私の側から離れぬよう〝婚約者〟としてもてなしてやろう。どうだ、悪い申し出ではないだろう?

ーーこの私、フェガロスの隣に並べるのだから』


この世界に〝フェガロス〟の名を知らない者はいない。
今最も勢いのある大国の指揮を取る、若い皇帝。
にこりともしない整った顔に高い身長からくる威圧感。
そして何より、その切れる頭は酷く合理的な考え方をする。

きっと年齢が年齢で求婚の申し出が多かったんだろう。
それに辟易していたところ丁度うちの国のことが耳に入って、その国にどれだけの利用価値があるかを計算し婚約者に押し込んだんだ。

(あのフェガロスの婚約者って事で世界中がそいつのことを調べるし、出身国の文化や伝統を知って民芸品とかにも興味を持つだろうし)

その結果、経済は回るというわけだ。
戦争には金が必要だからな、うちの国を出しに更に侵略を進めるんだろう。
なんて無駄のない計画。流石合理的な脳を持ってる。

ーーただ、


「そこに来たのが〝俺〟みたいな奴だったってのが、誤算ってとこ?」


〝年は皇帝と変わらぬ程で、民から最も愛されている者〟

……多分「民から最も愛されている=美人・可愛い女性」って方程式が皇帝の頭の中にあったんだと思う。
わかる、俺もそう思う。

だが、相手は自国の「当たり前」が通じない島国。
皆の距離感が近い分外見より内面を見る人の方が多くて、そんな中で最も愛されてる俺が選ばれた。

年は皇帝のひとつ下。
民から愛される俺の性別は、男。しかもなんの変哲もない平凡顔だ。

(いや、正直選ばれたとき「俺それ行かないほうがいいやつ」って思ったんだよな。
でも要件には確かに合ってるし、姉貴や妹弟たちよりかはマシだろうし……)

王族の誰よりも1番近い距離で民と触れ合ってきた俺。
それは、俺が酷く現実主義者的な思考をしているからだ。

『生き抜くためにはこれをしないといけない』
『もっとこうした方が仕事の効率がいいと思う』

人口の少ないこの国では、己の力でどうにか生きていかなくちゃならない。
幼いながらにそれに気づいてから、俺は夢や希望なんて一切持たずただただ現実を受け入れ打破する方法を案じてきた。
いやぁ我ながら可愛げのない子どもだったとは思うけど、でもそれで多くの人たちを助けてこれたのは事実。
結果、気がつけば周りを様々な人で囲まれるほど俺は愛されていたというわけだ。

合理的な皇帝と、現実主義者の俺。

はっきり言って頭ん中お花畑の姉貴たちよりは俺が来た方がいいだろうと思ったんだ。考え方も似てるし、性別はあれど皇帝とも何とかやっていけるだろうって。


(だが現実は甘くはなかった、ってやつ?

あーぁまじで最悪だ)


何だよあのパレードは。
誰だよその隣の奴は。

『私はこの者と〝婚約〟するのではなく〝結婚〟する』

多くの人集りの前で告知された、その言葉。
隣の奴は嬉しそうに皇帝の腕へ抱きついていた。

〝婚約じゃなく結婚〟

そうか、確かに俺はただの婚約者だ。
いくら約束しても結婚するかはわからない。
けどさ、いくら何でも一言くらいはあってよくないか?
どんだけ現実思考でも、流石に驚きすぎて頭真っ白だっつの。

「あーもー本当やってらんねぇ」

早々に城から追い出され、今は離れの建物で生活。

俺の国のことはもういいのか?
それとももっと良い利用価値が隣の奴にあった?
わからない。まじでどんだけ考えてもわからない。

はぁぁ…もう、なんなんだよ本当に……


「ね、そんなに溜め息吐いたら幸せが逃げちゃうよ?」


「いいんだよ別に、そんな迷信信じてねぇし」

「うーんそっかぁ。でもよく言うじゃん?
それで、その溜め息を誰かが吸い込んだら幸せが逃げなくなるって」

「はぁ? 何だそれ意味わかんねぇ。溜め息を吸うってまずそんなこと出来ないから。
大体、何で溜め息だけで幸せが逃げんだよ。そもそも幸せとか目に見えないものどうやったら逃げるなんて分かるんdーー」


(………は?)






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