異世界転移は終わらない恋のはじまりでした―救世主レオのノロケ話―

一条咲穂

文字の大きさ
27 / 50
第4章 元カレとお世継ぎ問題

第3話*

 人だけでなく、たくさんの不思議な生き物たちとも知り合いになった。ドラゴン、妖精、人魚、ペガサスにユニコーン、グリフォン、ヴィーヴル……地球では空想の生き物とされているけど、ここでは当たり前に存在している。人間は、彼らの邪魔をしないように細心の注意を払って共存しているんだ。
 鉄道が敷かれていないのも、それが大きな理由だと思う。移動手段は主に馬、馬車、船。大きな川が多いから、少しばかりの遠出なら、船と馬車を利用するのが早い。地球と比べて、技術力が下回っているわけでもない。風力、太陽光、水力、地熱を活用する設備は完璧に整っている。電気自動車の実用化も楽しみだ。

 スリルを味わいたければ、ドラゴンやペガサスと友達になって、機嫌のいい時に乗せてもらうという手もある。けっこう怖そうだから、僕はまだ試していない。友達になるところまでは、いい線いっていると思う。みんなやんちゃで、跳ね回りすぎてけがをする子が少なくない。しゅんとしてうずくまっているのを、「またかい? しょうがないなぁ」って、何度か手当しているうちに心が通った。中でも常連は、銀の毛並みが見事な牡のペガサスだ。
「次は気を付けるんだよ」
 パタパタと翼を動かすのは僕へのお誘い。背中へ乗れと言っている。
「ありがとう、そのうちにね。今はけがを治すことの方が先だよ」
 できればいつか、ラトゥリオ様と一緒に乗って空を飛びたい。

 僕がここへ来てから、もうじき二か月になる。一日の日照時間は、随分と長くなった。暦は日本と同じだから、今は七月。向こうじゃ真夏日に悩まされる頃なのに、ここは日差しも気温も、過ごしやすく保たれている。風の力を持つ人や火の力を持つ人が、エネルギーを無意識に発電所に誘導しているのだと聞いた。人口構成によっては気候が微妙に変化する、何とも不思議なシステムだ。魔力と科学の融合。普段は、こんなにもうまくいっている。
 この一か月、十五年前のことを何度も考えた。アントス様の存在が、頭から離れない。嫉妬……というのとは違う。アントス様はアントス様、僕は僕だ。その上で、思ってしまう。二人はあれから一度も顔を合わせていないそうだけど、そこまで徹底しないといけないものなんだろうか。恋人である前に、誰よりも親しい友人だったのに……。

「レオ、どうした」
「あ、いえ……何でも」
 僕はごまかすのが下手だ。ラトゥリオ様に嘘をつきたくないというのもある。ぼんやりして、見抜かれて、抱きすくめられる。
「アントスのことか」
 返事をしないのは、この場合、肯定と同じだ。どう言えばいいんだろう。僕たちの恋を、絆を、これっぽっちも疑ってはいない。それとは別の問題なんだ。説明できないまま、彼の情熱に溺れていく。執着と言い換えてもいい。僕の方は、彼を不安にさせるのは本意ではないし、独り占めしたい、されたいという欲が強くなっている。お互いの想いを信じていても、深まるからこそ感情に混ざってくるいろんなものがあって、隙間なく触れ合うことで乗り越えようと……執拗に、相手を求める。
「愛している。俺を生かすのはお前だ。お前しかいない……」
 その言葉は、嬉しくて切ない。世界を統べる手が、縋るように、許しを請うように僕の体をなぞる。一人になってから十五年間、必死で抑え込んできたものを、全部僕にぶつけてくる。情が深いのに、愛し愛される芽を摘み取られてしまった人。世界に突き付けられた現実。
 大丈夫だよ、ラトゥリオ様。大丈夫。僕が受け止めるから。行き場のなかった愛情。興奮すると少しだけ流れ出す魔力。怖がらないで、解放して……僕の中に、注ぎ込んで。
「ラトゥリオ様っ……あ、あっ――」
「レオッ……」
 熱いものが迸る。僕のお腹を満たし、じんわりと、指先、足の爪先まで幸福を行き渡らせる。
「はぁ、はぁ……」
 収縮する体が彼を締め付ける。つかまえていたい、離したくない。あなたと永遠に繋がっていたい。
「僕も、あなただけ」
 吐息に乗せて囁くと、とろんとした目で抱きしめてくれる。その様は、かわいらしくさえある。十四歳も年上なのに、変なの……。
 好き、ラトゥリオ様。
感想 0

あなたにおすすめの小説

即席異世界転移して薬草師になった

黒密
ファンタジー
ある日、学校から帰ってきて机を見たら即席異世界転移と書かれたカップ麺みたいな容器が置いてある事に気がついた普通の高校生、華崎 秦(かざき しん) 秦は興味本位でその容器にお湯と中に入っていた粉を入れて三分待ち、封を開けたら異世界に転移した。 そして気がつくと異世界の大半を管理している存在、ユーリ・ストラスに秦は元の世界に帰れない事を知った。 色々考えた結果、秦は異世界で生きることを決めてユーリから六枚のカードからスキルを選んだ。 秦はその選んだスキル、薬草師で異世界を生きる事になる。

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。 となります。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!

くすのき
BL
最初に謝っておきます! 漬物業界の方、マジすまぬ。 &本編完結、番外編も! この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。