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第4章 四つ目の恋
第3話
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光る湖。会社でのダークなスーツとは正反対で、明るい印象でまとめた今日のファッション。景色も榊さんも眩しい。少女漫画の中に入り込んだみたい。
「僕は君のことを、一人の女性として見ている。いつからか、はっきりとは言えない。十五も離れているし、上司という立場でこんなことを言うべきじゃないのは分かっている。返事は急がない。ただ、こうやって、仕事以外での僕を少しずつ知ってもらえたら嬉しい」
どこを取ってもドラマや映画でしか聞かないようなかっこいいセリフで、なかなか実感できない。憧れてた。入社する前から。その人が、真正面から告白してくれるなんて。
「あの、何だか、あまりにも素敵で、現実とは思えなくて。でも……嬉しいです」
「前向きに検討してもらえそうかな」
「はい」
夢じゃないって確信できたら、ちゃんと返事をしたい。
「よかった……」
相好を崩して、くしゃっと笑った。会社では見せない顔にときめく。
「緊張したよ。仕事ではまずこんなことはないんだけどね」
「プライベートって、難しいこといっぱいありますよ。だから……伝えてくださって嬉しいです」
「そう言ってもらえると救われるなあ。やっぱり思った通りの女性だ」
それが具体的にどういうことなのかは分からなかったけど、ちょっと冷めたランチプレートもコーヒーも、そのあと園内を散策したりジェットコースターに乗ったりした時間も、心のアルバムに大事に貼り付けた。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
家の近く、駅前のロータリーまで車で送ってもらった。
「私も楽しかったです。ありがとうございました」
「正直に返事をしてくれていいからね。それによって会社での関係が変わることはないと約束する。……おっと。前のめりになってしまったな」
「いいえ。じゃあ……おやすみなさい」
「おやすみ。気を付けて」
車を降りて見送った。かわいい人だな、って思った。私のことを、デートだって言えずに誘って、私が楽しめる場所を考えてくれて。子供みたいに笑う面もあるんだ。家まで歩きながら、心がぽかぽかして、答えはもう出ていた。
榊さんと、お付き合いしてみたい。
「ただいまー」
お帰り、という声は、今日はない。家が広く感じられる。
私がいつも寝る頃になって、メッセージが届いた。先生からだ。
『テーブルのところで寝るなよ。風呂場も駄目だ』
「ふふっ、信用ないなあ」
もうお布団入ってるよ、と返信すると、すぐにまた着信音。
『おやすみ、よい夢を。俺のお姫様』
お姫様。それは私たちの間では、「あの時」だけの――。
「もー、反則っ」
おやすみ、と返してから、頭まで布団に潜った。ドキドキしてる。
駄目だよ、先生にときめいちゃ。パパとしての範囲にとどめておかなきゃ。
榊さんの夢を見よう、と決めて眠りについた。夢の中では、先生と榊さんがジェットコースターに乗って悲鳴を上げていた。
日曜の夕方に、先生が帰ってきた。私は思わず、玄関まで走って出迎えた。「おとうさん」が帰ってきた!って。考える間もなかった。
「熱烈な出迎えだな。いい子にしてたか?」
ただいま、って私の頭を撫でながら靴を脱ぎ、わざとそんなことを言う。
「うん、そのつもり」
「ほんとかー? ま、お前はいつもいい子だけどな。あー、帰ってきた、って気がする……」
二人で食事をするテーブルの前に腰を下ろして、私を優しく見た。
「家族っていいもんだな」
「うん」
照れて近付けなくて、お茶を淹れてごまかして。アメリカのドラマなんかだと、パパとお帰りのハグは普通だけど、ここは日本だしなあ。パパだけど元カレだしなあ……。胸に飛び込んで歓迎って、子供じゃないんだから。
そんなことを思っていたら、お茶が濃く出てしまったけど、「うまい。天才」って言ってくれた。
「お腹空いてない? 何か食べる?」
「先に風呂入ってくる。何か甘いものあるか?」
「今日焼いたケーキがあるよ? え、と、昔よく作ったやつ」
「おー、あれか! じゃあ、さっさと入ってくる」
また私の頭を撫でて、それだけならまだしも、チュッとほっぺたにキスしてから部屋を出ていった。私は、へなへなとその場に座り込んでしまった。いやいやいや、これはあれでしょ、先生も海外ドラマ好きだからその影響で!
「ほっぺたならセーフだよね……天城恭一郎って、ほんっと……」
変わってない。
ん?
変わってないってことは……私のこと今も――だったりする?
「いやいやいや。自惚れもいいとこ……」
もしそうなら、ほかの人と結婚するなんてあり得ない。それもよりによって、お母さんと。
「気のせい。うん、気のせい」
自分に言い聞かせて、冷蔵庫のパウンドケーキを取り出した。
「僕は君のことを、一人の女性として見ている。いつからか、はっきりとは言えない。十五も離れているし、上司という立場でこんなことを言うべきじゃないのは分かっている。返事は急がない。ただ、こうやって、仕事以外での僕を少しずつ知ってもらえたら嬉しい」
どこを取ってもドラマや映画でしか聞かないようなかっこいいセリフで、なかなか実感できない。憧れてた。入社する前から。その人が、真正面から告白してくれるなんて。
「あの、何だか、あまりにも素敵で、現実とは思えなくて。でも……嬉しいです」
「前向きに検討してもらえそうかな」
「はい」
夢じゃないって確信できたら、ちゃんと返事をしたい。
「よかった……」
相好を崩して、くしゃっと笑った。会社では見せない顔にときめく。
「緊張したよ。仕事ではまずこんなことはないんだけどね」
「プライベートって、難しいこといっぱいありますよ。だから……伝えてくださって嬉しいです」
「そう言ってもらえると救われるなあ。やっぱり思った通りの女性だ」
それが具体的にどういうことなのかは分からなかったけど、ちょっと冷めたランチプレートもコーヒーも、そのあと園内を散策したりジェットコースターに乗ったりした時間も、心のアルバムに大事に貼り付けた。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
家の近く、駅前のロータリーまで車で送ってもらった。
「私も楽しかったです。ありがとうございました」
「正直に返事をしてくれていいからね。それによって会社での関係が変わることはないと約束する。……おっと。前のめりになってしまったな」
「いいえ。じゃあ……おやすみなさい」
「おやすみ。気を付けて」
車を降りて見送った。かわいい人だな、って思った。私のことを、デートだって言えずに誘って、私が楽しめる場所を考えてくれて。子供みたいに笑う面もあるんだ。家まで歩きながら、心がぽかぽかして、答えはもう出ていた。
榊さんと、お付き合いしてみたい。
「ただいまー」
お帰り、という声は、今日はない。家が広く感じられる。
私がいつも寝る頃になって、メッセージが届いた。先生からだ。
『テーブルのところで寝るなよ。風呂場も駄目だ』
「ふふっ、信用ないなあ」
もうお布団入ってるよ、と返信すると、すぐにまた着信音。
『おやすみ、よい夢を。俺のお姫様』
お姫様。それは私たちの間では、「あの時」だけの――。
「もー、反則っ」
おやすみ、と返してから、頭まで布団に潜った。ドキドキしてる。
駄目だよ、先生にときめいちゃ。パパとしての範囲にとどめておかなきゃ。
榊さんの夢を見よう、と決めて眠りについた。夢の中では、先生と榊さんがジェットコースターに乗って悲鳴を上げていた。
日曜の夕方に、先生が帰ってきた。私は思わず、玄関まで走って出迎えた。「おとうさん」が帰ってきた!って。考える間もなかった。
「熱烈な出迎えだな。いい子にしてたか?」
ただいま、って私の頭を撫でながら靴を脱ぎ、わざとそんなことを言う。
「うん、そのつもり」
「ほんとかー? ま、お前はいつもいい子だけどな。あー、帰ってきた、って気がする……」
二人で食事をするテーブルの前に腰を下ろして、私を優しく見た。
「家族っていいもんだな」
「うん」
照れて近付けなくて、お茶を淹れてごまかして。アメリカのドラマなんかだと、パパとお帰りのハグは普通だけど、ここは日本だしなあ。パパだけど元カレだしなあ……。胸に飛び込んで歓迎って、子供じゃないんだから。
そんなことを思っていたら、お茶が濃く出てしまったけど、「うまい。天才」って言ってくれた。
「お腹空いてない? 何か食べる?」
「先に風呂入ってくる。何か甘いものあるか?」
「今日焼いたケーキがあるよ? え、と、昔よく作ったやつ」
「おー、あれか! じゃあ、さっさと入ってくる」
また私の頭を撫でて、それだけならまだしも、チュッとほっぺたにキスしてから部屋を出ていった。私は、へなへなとその場に座り込んでしまった。いやいやいや、これはあれでしょ、先生も海外ドラマ好きだからその影響で!
「ほっぺたならセーフだよね……天城恭一郎って、ほんっと……」
変わってない。
ん?
変わってないってことは……私のこと今も――だったりする?
「いやいやいや。自惚れもいいとこ……」
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