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第3章 桜が散る時
第5話
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「葉桜君。これを見てくれるかね」
取り出したのは、大崎のスマートフォンだ。証拠物件のひとつだが、慎重に操作してメール履歴を表示させた。最後の送信先は「東雲警部」で、死の直前に送信されている。葉桜は目を見張り、「ああ……」とだけ言って頻りに頷いた。見る見るうちに、感情が溢れ出してくる。それを観察しながら、隣に自分のスマートフォンを置いた。
「私の着信履歴はこれだ。届いたのは夜中だが、気付いたのは夜明けでね。いやな予感がして現場に急行した。文面は……こうだ」
自分の端末に届いたものを表示させると、葉桜は嗚咽の声に近いものを漏らした。
『僕に何かあったら杉下恵麻さんをお願いします。絶対守ってください。僕からの伝言を伝えてください。好きです!って。あと警部の部下だったあの人の真実を解明してあげてください。僕たちの恩人なんです。琴絵さんは』
そこで途切れていた。
頭を抱えたかつての部下は、涙も堰き止められるほどの苦痛に喘いでいる。一度は刑事にまでなった男だ、自制心は強い。彼が話をする気になるのを、辛抱強く待った。
「君は……大崎君とは親しかったようだね」
頃合いを見て話しかけると、途切れ途切れに話しながら呼吸を整えた。
「このひと月……あいつと一緒にいました。俺が……憑りついていたんです」
「ひと月というと……K県の」
「はい。俺はあそこで本当に死ぬはずだったのが……大崎の中に入ってしまった。杉下恵麻は、俺の事務所に依頼に来た子です」
「ベンチにいた、あの女性かね」
「はい。彼女は……?」
「意識不明だが、病院には運ばれているから安心していい。外傷は見当たらないと聞いている」
葉桜は、だいぶ落ち着いてきた。恵麻の安否がよほど気にかかっていたようだ。彼女と、葉桜、大崎はどのような関わり方をしてきたのか。大崎が撃った弾は、どこへ消えたのか。そもそもなぜあの公園にいたのか。恵麻は何に守られていたのか。何より聞きたいのは、葉桜康平の謎に包まれた五年間だが――。
期待を込めた視線を受けて、彼はすまなそうに言った。
「警部が一番知りたいことは、俺自身、まだよくわかっていないんです。それ以外のことを……まずはあの日のことから、お話しします」
続く言葉に仰天した。
「琴絵の息の根を止めたのは、俺なんです」
取り出したのは、大崎のスマートフォンだ。証拠物件のひとつだが、慎重に操作してメール履歴を表示させた。最後の送信先は「東雲警部」で、死の直前に送信されている。葉桜は目を見張り、「ああ……」とだけ言って頻りに頷いた。見る見るうちに、感情が溢れ出してくる。それを観察しながら、隣に自分のスマートフォンを置いた。
「私の着信履歴はこれだ。届いたのは夜中だが、気付いたのは夜明けでね。いやな予感がして現場に急行した。文面は……こうだ」
自分の端末に届いたものを表示させると、葉桜は嗚咽の声に近いものを漏らした。
『僕に何かあったら杉下恵麻さんをお願いします。絶対守ってください。僕からの伝言を伝えてください。好きです!って。あと警部の部下だったあの人の真実を解明してあげてください。僕たちの恩人なんです。琴絵さんは』
そこで途切れていた。
頭を抱えたかつての部下は、涙も堰き止められるほどの苦痛に喘いでいる。一度は刑事にまでなった男だ、自制心は強い。彼が話をする気になるのを、辛抱強く待った。
「君は……大崎君とは親しかったようだね」
頃合いを見て話しかけると、途切れ途切れに話しながら呼吸を整えた。
「このひと月……あいつと一緒にいました。俺が……憑りついていたんです」
「ひと月というと……K県の」
「はい。俺はあそこで本当に死ぬはずだったのが……大崎の中に入ってしまった。杉下恵麻は、俺の事務所に依頼に来た子です」
「ベンチにいた、あの女性かね」
「はい。彼女は……?」
「意識不明だが、病院には運ばれているから安心していい。外傷は見当たらないと聞いている」
葉桜は、だいぶ落ち着いてきた。恵麻の安否がよほど気にかかっていたようだ。彼女と、葉桜、大崎はどのような関わり方をしてきたのか。大崎が撃った弾は、どこへ消えたのか。そもそもなぜあの公園にいたのか。恵麻は何に守られていたのか。何より聞きたいのは、葉桜康平の謎に包まれた五年間だが――。
期待を込めた視線を受けて、彼はすまなそうに言った。
「警部が一番知りたいことは、俺自身、まだよくわかっていないんです。それ以外のことを……まずはあの日のことから、お話しします」
続く言葉に仰天した。
「琴絵の息の根を止めたのは、俺なんです」
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