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第2話 運命の出逢い15
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「ひとまず彼を城に連れ帰りましょう」
僕は「ミロ」を連れてオイレンベルク卿の居城に戻った。明け方から捜索に出ていた第一陣も戻ってきていたが、手掛かりすら見つからず肩を落としていた。
「……あれだけの怪我をしていて、そう遠くには行けないはずです。森のどこかで動けなくなっているのかもしれません」
僕の従者に語るようにして、男爵の家臣達に意図的に聞こえるように話した。
「しかし、一小姓のためにここまでなさるとは……余程大切に思っていたのでしょうね……」
空気が張り詰めるのが分かった。オイレンベルク卿の寵愛を一身に受けていたミロに嫉妬していたのは一人や二人ではあるまい。
その上、浮浪者の身の上で主人に救われたにも関わらず、身体を開かなかっただけでなく逃げ出したのだ。主人の命が危険に晒されることとなった原因は彼にあると過半数の感情が動くのに、これ以上の言葉は要らないだろう。オイレンベルク卿に仕えていた忠誠心の厚い者なら、なおのこと、だ。
「ああ、着替えを済ませてきたのですね。怪我はないようでよかった」
ちょうど「ミロ」が皆が集まっているロビーにやってくると、オイレンベルク卿の家臣の視線が一斉に彼に注がれた。
「お前、よくのこのこ自分だけ戻って来れたな!?」
唐突に豪奢な貴族風の服装に身を包んだ若い男が、彼に掴み掛った。周囲は全く止める素振りを見せずに傍観するのみで、僕は偽善者ぶって間に入る。
「やめてください! 言い争っている時ではないでしょう!」
「旦那様に拾われて散々良い思いしたくせに、一ヶ月も渋りやがって! お前みたいな人間以下の家畜は自ら悦んでペニス咥えてケツ振れよ!」
聞くに堪えないほど卑俗な暴言だな、と思わず苦笑しそうなのを我慢する。僕の従者が男を押さえ、僕は「ミロ」を守るように引き寄せた。あの腐臭はもう感じない。
「こうなったのは全部お前のせいだ! もし旦那様に何かあったら、ここにいる全員でレイプして拷問して、最後は犬の餌にしてやるぞ!」
この男も美と若さを売りにしてオイレンベルク卿に近付き、厚遇を受けてきたのだろう。先の発言から当然肉体関係もあったと思われる。それなのにオイレンベルク卿の誘いをこのひと月躱し続けただけでなく、最後には逃げ出した。貴族の自分が受け入れたというのに、身寄りのない浮浪者が貞操を守ることが許せない。
その上、お優しい男爵を危険な森に一人で行かせてしまった。だのに全ての元凶のミロは自分だけ何食わぬ顔で無傷の生還ときたものだ。これからの男自身の境遇を考えても、殺したいほどの憎しみが湧くというのも容易に考えられることだった。
それは勿論、男以外の家臣もそうだ。もし男爵が亡くなれば子の無い彼の場合、兄弟が跡を継ぐことになる。城主が変わるとなれば、当然人員の入れ替えが起こるし、実力以外の面で厚遇を受けていた者達は大半が放免されることになろう。
そう考えると、今純粋にオイレンベルク卿の身の心配をしている人間は殆どいないのではなかろうか。結局彼の周りにいるのは権力と金に惚れた男達ばかりということだ。まあ、僕の周りも似たようなものだろうけれど。
「この子に責任があると? その咎めとして貴方の仰ったことは余りに常軌を逸している!」
僕は「ミロ」を連れてオイレンベルク卿の居城に戻った。明け方から捜索に出ていた第一陣も戻ってきていたが、手掛かりすら見つからず肩を落としていた。
「……あれだけの怪我をしていて、そう遠くには行けないはずです。森のどこかで動けなくなっているのかもしれません」
僕の従者に語るようにして、男爵の家臣達に意図的に聞こえるように話した。
「しかし、一小姓のためにここまでなさるとは……余程大切に思っていたのでしょうね……」
空気が張り詰めるのが分かった。オイレンベルク卿の寵愛を一身に受けていたミロに嫉妬していたのは一人や二人ではあるまい。
その上、浮浪者の身の上で主人に救われたにも関わらず、身体を開かなかっただけでなく逃げ出したのだ。主人の命が危険に晒されることとなった原因は彼にあると過半数の感情が動くのに、これ以上の言葉は要らないだろう。オイレンベルク卿に仕えていた忠誠心の厚い者なら、なおのこと、だ。
「ああ、着替えを済ませてきたのですね。怪我はないようでよかった」
ちょうど「ミロ」が皆が集まっているロビーにやってくると、オイレンベルク卿の家臣の視線が一斉に彼に注がれた。
「お前、よくのこのこ自分だけ戻って来れたな!?」
唐突に豪奢な貴族風の服装に身を包んだ若い男が、彼に掴み掛った。周囲は全く止める素振りを見せずに傍観するのみで、僕は偽善者ぶって間に入る。
「やめてください! 言い争っている時ではないでしょう!」
「旦那様に拾われて散々良い思いしたくせに、一ヶ月も渋りやがって! お前みたいな人間以下の家畜は自ら悦んでペニス咥えてケツ振れよ!」
聞くに堪えないほど卑俗な暴言だな、と思わず苦笑しそうなのを我慢する。僕の従者が男を押さえ、僕は「ミロ」を守るように引き寄せた。あの腐臭はもう感じない。
「こうなったのは全部お前のせいだ! もし旦那様に何かあったら、ここにいる全員でレイプして拷問して、最後は犬の餌にしてやるぞ!」
この男も美と若さを売りにしてオイレンベルク卿に近付き、厚遇を受けてきたのだろう。先の発言から当然肉体関係もあったと思われる。それなのにオイレンベルク卿の誘いをこのひと月躱し続けただけでなく、最後には逃げ出した。貴族の自分が受け入れたというのに、身寄りのない浮浪者が貞操を守ることが許せない。
その上、お優しい男爵を危険な森に一人で行かせてしまった。だのに全ての元凶のミロは自分だけ何食わぬ顔で無傷の生還ときたものだ。これからの男自身の境遇を考えても、殺したいほどの憎しみが湧くというのも容易に考えられることだった。
それは勿論、男以外の家臣もそうだ。もし男爵が亡くなれば子の無い彼の場合、兄弟が跡を継ぐことになる。城主が変わるとなれば、当然人員の入れ替えが起こるし、実力以外の面で厚遇を受けていた者達は大半が放免されることになろう。
そう考えると、今純粋にオイレンベルク卿の身の心配をしている人間は殆どいないのではなかろうか。結局彼の周りにいるのは権力と金に惚れた男達ばかりということだ。まあ、僕の周りも似たようなものだろうけれど。
「この子に責任があると? その咎めとして貴方の仰ったことは余りに常軌を逸している!」
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