21 / 50
第四話 流星
第四話 流星④
しおりを挟む
高校を卒業してからもチームの奴等は俺を慕ってくれていて、俺がライブやイベントでステージに立つ時は、怜から毎回連絡があるのか見に来てくれる。
俺の歌を聴きたいと言ってくれる客は正直多くは無いが、チームの奴等がチケットを捌いてくれるおかげで毎公演半分以上は埋まっているので、赤字にならずに済んでいた。
今俺にとってプロになる夢は、兄ちゃんが俺が歌で頑張っているのを喜んでくれるから、その終着点だからという理由以上のものはない。
十代の頃は勘違いしたこともあったけれど、二十三にもなれば自分にプロになる実力があるかどうかくらい分かる。
インディーズでCDを売ってライブをやって、ぎりぎり食べて行けるくらいの収入を得るくらいがいいところだろう。今と大して変わらないことをやっていくのかもしれない。
兄ちゃんに歌を聴いてもらったのはどれくらい前だったか分からないが、今聴かせて失望させるのが怖くて、来ないでと言い続けている。たまに聞きに来る兄ちゃんの知り合いの「藤本さん」は毎回大金を渡して去っていく。
勿論俺の歌が好きだからじゃない。藤本さんは兄ちゃんの「同業」で、きっと俺の親に何か恩義があるのだと思う。しかしクラブのオーナーには、俺があの人の愛人かなんかだと思われていて、否定しようにも説明のしようがないし、その噂が立ってから変な誘いがなくなったので、そのままにしている。
「いってらっしゃい」
「ああ、またな」
微笑を浮かべ去っていく背に、何度追い縋りたいと思ったか知れない。兄ちゃんと過ごす数時間は天国に昇るような喜びをくれるけれど、その終わりと同時に地獄に突き落とされるような苦しみを与えた。
次はいつ会えるだろう。毎日数分でもいいから会いたいと思っているけど、そんなことを言って兄ちゃんを困らせたくはなかった。兄ちゃんにとって理想的な、素直で可愛い弟で居続けなければ。
リビングに戻り、ベッド脇の間接照明を点けてリビングの電気を消した。その時ハンガーラックに掛かった兄ちゃんのコートが目につき、おもむろに手に取った。
襟の辺りに顔を埋めて鼻腔いっぱいに匂いを吸い込む。グリーン系とムスクの香りの愛用の香水の匂いに混じって、ほのかに煙草の匂いがした。兄ちゃんは俺に悪影響だと思っているのか、煙草を吸っていることを隠しているけど、俺と話している時、度々唇に指を当てる癖からもバレバレだ。
ずっと側に居て欲しい。側に居たい――。願っても願っても、叶わない甘い夢を想い続けるのは、遅効性の毒のようにゆっくりと俺を蝕んで、気づいた時には手遅れだった。今では有り得ない妄想に没入することでしか、忘れさせてはくれない。
くらくらするほどの匂いに兄ちゃんに抱き締められているような気分になって身体が熱を持ち始める。
熱い息を吐き出しながら妄想の中の兄ちゃんを見上げると、発情した弟を「悪い子だ」と言ってTシャツに浮き出るほど勃起した乳首を指先で摘んだ。実際は興奮してきて、コートの匂いを嗅ぎながら自分で乳首を捏ね回しているだけなのだが。
俺の歌を聴きたいと言ってくれる客は正直多くは無いが、チームの奴等がチケットを捌いてくれるおかげで毎公演半分以上は埋まっているので、赤字にならずに済んでいた。
今俺にとってプロになる夢は、兄ちゃんが俺が歌で頑張っているのを喜んでくれるから、その終着点だからという理由以上のものはない。
十代の頃は勘違いしたこともあったけれど、二十三にもなれば自分にプロになる実力があるかどうかくらい分かる。
インディーズでCDを売ってライブをやって、ぎりぎり食べて行けるくらいの収入を得るくらいがいいところだろう。今と大して変わらないことをやっていくのかもしれない。
兄ちゃんに歌を聴いてもらったのはどれくらい前だったか分からないが、今聴かせて失望させるのが怖くて、来ないでと言い続けている。たまに聞きに来る兄ちゃんの知り合いの「藤本さん」は毎回大金を渡して去っていく。
勿論俺の歌が好きだからじゃない。藤本さんは兄ちゃんの「同業」で、きっと俺の親に何か恩義があるのだと思う。しかしクラブのオーナーには、俺があの人の愛人かなんかだと思われていて、否定しようにも説明のしようがないし、その噂が立ってから変な誘いがなくなったので、そのままにしている。
「いってらっしゃい」
「ああ、またな」
微笑を浮かべ去っていく背に、何度追い縋りたいと思ったか知れない。兄ちゃんと過ごす数時間は天国に昇るような喜びをくれるけれど、その終わりと同時に地獄に突き落とされるような苦しみを与えた。
次はいつ会えるだろう。毎日数分でもいいから会いたいと思っているけど、そんなことを言って兄ちゃんを困らせたくはなかった。兄ちゃんにとって理想的な、素直で可愛い弟で居続けなければ。
リビングに戻り、ベッド脇の間接照明を点けてリビングの電気を消した。その時ハンガーラックに掛かった兄ちゃんのコートが目につき、おもむろに手に取った。
襟の辺りに顔を埋めて鼻腔いっぱいに匂いを吸い込む。グリーン系とムスクの香りの愛用の香水の匂いに混じって、ほのかに煙草の匂いがした。兄ちゃんは俺に悪影響だと思っているのか、煙草を吸っていることを隠しているけど、俺と話している時、度々唇に指を当てる癖からもバレバレだ。
ずっと側に居て欲しい。側に居たい――。願っても願っても、叶わない甘い夢を想い続けるのは、遅効性の毒のようにゆっくりと俺を蝕んで、気づいた時には手遅れだった。今では有り得ない妄想に没入することでしか、忘れさせてはくれない。
くらくらするほどの匂いに兄ちゃんに抱き締められているような気分になって身体が熱を持ち始める。
熱い息を吐き出しながら妄想の中の兄ちゃんを見上げると、発情した弟を「悪い子だ」と言ってTシャツに浮き出るほど勃起した乳首を指先で摘んだ。実際は興奮してきて、コートの匂いを嗅ぎながら自分で乳首を捏ね回しているだけなのだが。
31
あなたにおすすめの小説
インテリヤクザは子守りができない
タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。
冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。
なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
Take On Me 2
マン太
BL
大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。
そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。
岳は仕方なく会うことにするが…。
※絡みの表現は控え目です。
※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
十六夜の月
むらさきおいも
BL
あらすじ
家出を余儀なくされた斗亜は昔の知り合いを尋ねて一人、あるアパートへ向かった。 しかし、その部屋に住んでいた住人は斗亜が頼りたかった人とは似ても似つかぬ別人だった!?
偶然の出会いから、闇の世界へどっぷりと足を突っ込んでしまう事になる斗亜と、そんな世界に引き込みたくないと思いながらも想いを寄せてしまう龍士。
二人の恋の行方と神原組の物語を是非楽しんだくださいませ♡
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる