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11 寡黙な冒険者のお供
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慧吾はギルドに来ている。ここにいるうちにせめてぺーぺーのEランクから脱却して、Dランクになってみたかった。それに街の様子も気になっていた。
依頼ボードを上から順番に吟味する。重大な事件は起きていないようだ。地下道清掃もまたやりたいが、ほかのもやってみたい。その日は商家の荷物運びをすることにした。
現場に着いてみると、ここに来た日に荷台にタダ乗りした大きな商家だった。収納は知られているのでフルに活用して慧吾は一生懸命働いた。ちょっとは恩返しになった気がする。
それからも暇を見つけては依頼をこなした。地下道清掃にももう一度行った。三日間の日程なので王宮を三日空けることになってしまい、制覇できそうもないのがとても残念だ。
あと一回でランクが上がるというとき、スヴェンに声をかけられた。
「ケイ、ちょうど良かった。少しいいか」
「スヴェンさんこんにちは。どうしたんですか」
呼ばれた先にいた男性がちらりとこちらを見た。印象的なアイスブルーの瞳をしたヒョウみたいな美しさを持った男性だ。グレイの短い髪がバラバラに顔にかかっている。
「こいつはAランクのロウだ」
「初めまして、Eランクのケイです」
ロウは無言で立ったままだ。スヴェンがそれを横目で見て、慧吾に説明する。
「今日はロウに王立学園の仕事が入っている。Aランク冒険者の実力を見せる、まあイベントだ。騎士や魔術師が行くときもあるんだが、今回は冒険者が呼ばれているんだ」
「おもしろそうですね。それでどうして俺が呼ばれたんですか?」
慧吾は目を輝かせた。
「このとおりロウは愛想がなくてな。今回は五年生、十六歳の子どもが相手だ。お前と同じ年ごろだろう」
「……成人は何歳なんですか」
慧吾の目の輝きは消えた。
「十七だな」
「……だったら俺は成人してますね。もうすぐ十九です」
スヴェンは視線をそらし、何もなかったことにした。
「それでだな、とにかくロウにつき添って学園に行ってほしいんだ」
「……わかりました。ロウさん、よろしくお願いします」
「…………」
慧吾はロウとともに馬車に乗り、ギルドのある西区から、南区にある王立学園までやってきた。門のところに職員が待っていて、応接室に案内される。
「本日はお越しいただきありがとうございます。このあと演習場に向かい、質疑応答、演習見学と指導の予定になっております」
「わかりました」
「…………」
職員は不安そうに視線をロウと慧吾の間で行ったり来たりさせた。しかし慧吾もさっき初めて会ったばかりである。あまり期待しないでほしい。
演習場では、確かに慧吾と同じ年ごろに見える生徒たちが地面に座って待っていた。期待で興奮している生徒もいれば、クールな態度の生徒もいる。
生徒のほとんどは王都に住む貴族、騎士、魔術師、商家の子弟だ。身分に関係なく、十二歳になって試験に通れば十七歳までの六年間通うことができるのだ。
不合格者の受け皿になる学校や、王立学園に合格するための学校までこの南区に集中して建っている。南区は学園地区なのだ。
「こちらはAランクのロウさん、Eランクのケイさんだ」
職員の紹介に、Aランクだ、なんだEかよとこそこそ言っているのが聞こえる。
「ケイです。今日はロウさんの助手で来ました。よろしくお願いします」
ロウは気持ち首肯した。
次は質疑応答だ。生徒たちは事前に話しあって決めていたようで順番に質問してきた。
「どのくらい稼げますか」
「一番危なかったことは」
「Sランクになれそうですか」
「ドラゴンを見たことありますか」
「聖獣様を見たことありますか」
「モテますか」
などなど。ロウがモソモソ答えるので慧吾が通訳した。と言っても上から、
「たくさん」
「レッドドラゴン」
「たぶん」
「ああ」
「ああ」
「いや」
だった。意外にもシスイを見たことがあるらしい。さらに質問は続く。
「聖獣様はどんな方ですか」
「白い」
「大きなドラゴンでしたか」
「ああ」
ここでこのあやふやな質疑応答が終わり、生徒が向かい合わせで打ち合うのを見ながら指導することになった。慧吾はお役御免だ。危ないので少し離れたところから見学となった。
ロウは急にイキイキとなってあちこち指導していたが、生徒の顔には『?』と書いてある。申し訳ないけれど慧吾にもわからない。
そうこうしているうちに無事終了となった。
応接室でお昼を頂いている間に馬車を用意してもらう。
「今日はどうもありがとうございました。生徒たちも勉強になったと思います。またご指導お願いします」
「お世話になりました。こちらこそ楽しかったです」
職員と挨拶を交わし、用意してくれた馬車に乗った。ロウは窓を少し開け、微動だにせず外を見ている。静かだ。
「ロウさんは何度か来たことがあったんですか?」
「ああ」
「そうなんですか。俺は初めてここの学校が見れて興味深かったです。来て良かった」
ロウはなびく髪の隙間から慧吾を一瞬だけ見て、また外に目を向けた。
いっぽうの慧吾は気になっていたことを聞きたくてそわそわしていた。
「あの、……ロウさんは聖獣を見たことあるんですよね……? イーダンから来られたんですか?」
「そうだ」
「この国の騎士団には入らなかったんですか?」
「入った。だが辞めた」
慧吾はええーと声をあげたが、理由を聞くのははばかられたので話題を変えた。
「Aランクなんてすごいですよね」
「いや……もっと強ければな……」
ロウは珍しく感情の乗った声色でそうつぶやいた。
「えっ、ロウさんでもそう思うんですか」
「ドラゴンには歯が立たなかった」
「でもっ、亡くなった方はいないと聞きましたけど」
ユークリッドに死者はいないと聞いていた慧吾は呆然とする。
「二度と騎士に戻れないヤツも大勢いる」
慧吾ははっと息を飲み、下を向いて唇を噛んだ。
「そうでしたか……俺、……」
「悔恨の念にとらわれることもあったがしかし――――」
慧吾がパッと顔をあげると、ロウはいつの間にかこちらに向きなおって慧吾の顔を見ていた。その表情は凪いでおり、柔らかく見える。
「思うのだ。みな全力を尽くし民を守ったと」
「……はい」
ロウの言葉を肯定はしたが、慧吾は『ユークリッドを救ったことで褒められていい気になっていたのではないか』と沈んでいた。
ギルドに戻るとスヴェンが待っていた。スヴェンは慧吾の肩をぽんぽんと叩いて労ってくれた。
「ロウ、ケイ。お疲れさん。無事に終わったようだな。ケイはこれでDランクだ。カードを更新しておいたぞ」
「ありがとうございます。学園はなかなか興味深かったです」
「通ってみたくなったか」
スヴェンはガハハと笑った。
「あはは、俺も入ったばかりなんで。……こんなに開いたら忘れちゃうな」
「え。学生……?」
スヴェンは混乱したようにつぶやき、ロウは黙って目を瞬いた。
慧吾は卒業しているはずの十九歳だと今朝言ったばかりである。スヴェンに至っては王宮で慧吾がシスイになったことで、聖獣が人間に化けていたと勘違いしている。
二人を混沌の中に置きざりにして、レベリングで頭がいっぱいの慧吾はすいっと依頼ボードを見に行ってしまった。よくわからないがロウまでついてきている。
「うーん、どうしようかな。薬草がいいかな」
慧吾は先ほどのやり取りのあと、浄化のレベリングをしようと決めていた。しかし浄化魔法を使うと魔物は全部消えてしまう。討伐系は受けられないのだ。
『ヤマイナオリ草 一袋大銅貨一枚』の依頼用紙を持っていつものエルのところに並ぶ。
「薬草採取ですか? Dランクの方はもう少し上の依頼を受けていただきたいのですが」
エルのしぶい声に、え、いやうーんと慧吾はおでこに手を当てて考えている。
すると上にあがろうとしていたスヴェンが揉めているのに気がつき、戻ってきてひとこえで解決してくれた。
「ソイツに危ないことはさせるな」
「え、でも……わかりました」
エルは反論しかけたが諦めて依頼用紙を受け取る。
スヴェンはよし、というように頷いたあと、慧吾の後ろに話しかけた。
「それでお前が?」
えっ、と慧吾が振りむく。と、男の胸が目の前にあった。そのままずーっと視線をあげると――――ロウが慧吾の真後ろ、至近距離に立って慧吾を見おろしていたのだ。
慧吾はギャッと叫びそうになった。
「!? ロウさんどうしました」
「……ついでだ」
わけがわからない慧吾に、スヴェンがため息をつきつつ教えてくれた。
「薬草クエストにつき合ってくれるらしいぞ」
「そうなんですか!? で、でもひとりで大丈夫ですよ」
ロウについて来られるとちょっと都合が悪い。慧吾は焦って断ろうとした。
「いや、ロウがついて行ってくれるなら今日はそうしてもらえ。普通なら誰かとパーティを組むことを勧めるんだがお前はな」
「い、いいえ、パーティは……」
「パーティって誰とよ!」
今度こそ慧吾はギャッと叫んだ。赤いツインテールのうるさい美少女がうるさい。慧吾はヒーッとロウの影に隠れた。
「アナタ! この子とパーティ組むの!? 私が狙ってたのに!」
狙わないでほしい。と慧吾は切実に思った。
「アリィさん、うるさいですよ」
エルに冷たく叱られてもかわいらしい唇をムッと突きだして怒っている。
「だって、Dランクの私と組んでくれる人いないんだもん!」
「もんて言われても。俺はパーティは組まないよ。俺ここにいつまでいれるかわかんないし」
言い終わらないうちにロウに腕を強く掴まれ、その痛みに慧吾は呻いた。
ロウは我に返ったらしく、不思議そうに自分の手を見てからゆっくり掌を開いた。
「すまん」
「大丈夫です。びっくりしましたけど」
慧吾はそう言うが、ロウは後悔に顔を歪ませた。
「消えそうな気がして……すまなかった」
「まだいますよ……たぶん、まだ」
それにはスヴェンがすぐに反応した。
「お前の保護者からも聞いている。心配するな」
スヴェンの心強い言葉が慧吾はうれしかった。
「保護者って、アナタいいところの子なの?」
若干弱気な声でアリィが聞いてくる。ツインテも垂れてかわいらしい。
「いや、平民だよ」
「平民」
「うん、だけどごめんね。パーティは組めないんだ。じゃ、遅くなるといけないからちょっと行ってくるね」
依頼ボードを上から順番に吟味する。重大な事件は起きていないようだ。地下道清掃もまたやりたいが、ほかのもやってみたい。その日は商家の荷物運びをすることにした。
現場に着いてみると、ここに来た日に荷台にタダ乗りした大きな商家だった。収納は知られているのでフルに活用して慧吾は一生懸命働いた。ちょっとは恩返しになった気がする。
それからも暇を見つけては依頼をこなした。地下道清掃にももう一度行った。三日間の日程なので王宮を三日空けることになってしまい、制覇できそうもないのがとても残念だ。
あと一回でランクが上がるというとき、スヴェンに声をかけられた。
「ケイ、ちょうど良かった。少しいいか」
「スヴェンさんこんにちは。どうしたんですか」
呼ばれた先にいた男性がちらりとこちらを見た。印象的なアイスブルーの瞳をしたヒョウみたいな美しさを持った男性だ。グレイの短い髪がバラバラに顔にかかっている。
「こいつはAランクのロウだ」
「初めまして、Eランクのケイです」
ロウは無言で立ったままだ。スヴェンがそれを横目で見て、慧吾に説明する。
「今日はロウに王立学園の仕事が入っている。Aランク冒険者の実力を見せる、まあイベントだ。騎士や魔術師が行くときもあるんだが、今回は冒険者が呼ばれているんだ」
「おもしろそうですね。それでどうして俺が呼ばれたんですか?」
慧吾は目を輝かせた。
「このとおりロウは愛想がなくてな。今回は五年生、十六歳の子どもが相手だ。お前と同じ年ごろだろう」
「……成人は何歳なんですか」
慧吾の目の輝きは消えた。
「十七だな」
「……だったら俺は成人してますね。もうすぐ十九です」
スヴェンは視線をそらし、何もなかったことにした。
「それでだな、とにかくロウにつき添って学園に行ってほしいんだ」
「……わかりました。ロウさん、よろしくお願いします」
「…………」
慧吾はロウとともに馬車に乗り、ギルドのある西区から、南区にある王立学園までやってきた。門のところに職員が待っていて、応接室に案内される。
「本日はお越しいただきありがとうございます。このあと演習場に向かい、質疑応答、演習見学と指導の予定になっております」
「わかりました」
「…………」
職員は不安そうに視線をロウと慧吾の間で行ったり来たりさせた。しかし慧吾もさっき初めて会ったばかりである。あまり期待しないでほしい。
演習場では、確かに慧吾と同じ年ごろに見える生徒たちが地面に座って待っていた。期待で興奮している生徒もいれば、クールな態度の生徒もいる。
生徒のほとんどは王都に住む貴族、騎士、魔術師、商家の子弟だ。身分に関係なく、十二歳になって試験に通れば十七歳までの六年間通うことができるのだ。
不合格者の受け皿になる学校や、王立学園に合格するための学校までこの南区に集中して建っている。南区は学園地区なのだ。
「こちらはAランクのロウさん、Eランクのケイさんだ」
職員の紹介に、Aランクだ、なんだEかよとこそこそ言っているのが聞こえる。
「ケイです。今日はロウさんの助手で来ました。よろしくお願いします」
ロウは気持ち首肯した。
次は質疑応答だ。生徒たちは事前に話しあって決めていたようで順番に質問してきた。
「どのくらい稼げますか」
「一番危なかったことは」
「Sランクになれそうですか」
「ドラゴンを見たことありますか」
「聖獣様を見たことありますか」
「モテますか」
などなど。ロウがモソモソ答えるので慧吾が通訳した。と言っても上から、
「たくさん」
「レッドドラゴン」
「たぶん」
「ああ」
「ああ」
「いや」
だった。意外にもシスイを見たことがあるらしい。さらに質問は続く。
「聖獣様はどんな方ですか」
「白い」
「大きなドラゴンでしたか」
「ああ」
ここでこのあやふやな質疑応答が終わり、生徒が向かい合わせで打ち合うのを見ながら指導することになった。慧吾はお役御免だ。危ないので少し離れたところから見学となった。
ロウは急にイキイキとなってあちこち指導していたが、生徒の顔には『?』と書いてある。申し訳ないけれど慧吾にもわからない。
そうこうしているうちに無事終了となった。
応接室でお昼を頂いている間に馬車を用意してもらう。
「今日はどうもありがとうございました。生徒たちも勉強になったと思います。またご指導お願いします」
「お世話になりました。こちらこそ楽しかったです」
職員と挨拶を交わし、用意してくれた馬車に乗った。ロウは窓を少し開け、微動だにせず外を見ている。静かだ。
「ロウさんは何度か来たことがあったんですか?」
「ああ」
「そうなんですか。俺は初めてここの学校が見れて興味深かったです。来て良かった」
ロウはなびく髪の隙間から慧吾を一瞬だけ見て、また外に目を向けた。
いっぽうの慧吾は気になっていたことを聞きたくてそわそわしていた。
「あの、……ロウさんは聖獣を見たことあるんですよね……? イーダンから来られたんですか?」
「そうだ」
「この国の騎士団には入らなかったんですか?」
「入った。だが辞めた」
慧吾はええーと声をあげたが、理由を聞くのははばかられたので話題を変えた。
「Aランクなんてすごいですよね」
「いや……もっと強ければな……」
ロウは珍しく感情の乗った声色でそうつぶやいた。
「えっ、ロウさんでもそう思うんですか」
「ドラゴンには歯が立たなかった」
「でもっ、亡くなった方はいないと聞きましたけど」
ユークリッドに死者はいないと聞いていた慧吾は呆然とする。
「二度と騎士に戻れないヤツも大勢いる」
慧吾ははっと息を飲み、下を向いて唇を噛んだ。
「そうでしたか……俺、……」
「悔恨の念にとらわれることもあったがしかし――――」
慧吾がパッと顔をあげると、ロウはいつの間にかこちらに向きなおって慧吾の顔を見ていた。その表情は凪いでおり、柔らかく見える。
「思うのだ。みな全力を尽くし民を守ったと」
「……はい」
ロウの言葉を肯定はしたが、慧吾は『ユークリッドを救ったことで褒められていい気になっていたのではないか』と沈んでいた。
ギルドに戻るとスヴェンが待っていた。スヴェンは慧吾の肩をぽんぽんと叩いて労ってくれた。
「ロウ、ケイ。お疲れさん。無事に終わったようだな。ケイはこれでDランクだ。カードを更新しておいたぞ」
「ありがとうございます。学園はなかなか興味深かったです」
「通ってみたくなったか」
スヴェンはガハハと笑った。
「あはは、俺も入ったばかりなんで。……こんなに開いたら忘れちゃうな」
「え。学生……?」
スヴェンは混乱したようにつぶやき、ロウは黙って目を瞬いた。
慧吾は卒業しているはずの十九歳だと今朝言ったばかりである。スヴェンに至っては王宮で慧吾がシスイになったことで、聖獣が人間に化けていたと勘違いしている。
二人を混沌の中に置きざりにして、レベリングで頭がいっぱいの慧吾はすいっと依頼ボードを見に行ってしまった。よくわからないがロウまでついてきている。
「うーん、どうしようかな。薬草がいいかな」
慧吾は先ほどのやり取りのあと、浄化のレベリングをしようと決めていた。しかし浄化魔法を使うと魔物は全部消えてしまう。討伐系は受けられないのだ。
『ヤマイナオリ草 一袋大銅貨一枚』の依頼用紙を持っていつものエルのところに並ぶ。
「薬草採取ですか? Dランクの方はもう少し上の依頼を受けていただきたいのですが」
エルのしぶい声に、え、いやうーんと慧吾はおでこに手を当てて考えている。
すると上にあがろうとしていたスヴェンが揉めているのに気がつき、戻ってきてひとこえで解決してくれた。
「ソイツに危ないことはさせるな」
「え、でも……わかりました」
エルは反論しかけたが諦めて依頼用紙を受け取る。
スヴェンはよし、というように頷いたあと、慧吾の後ろに話しかけた。
「それでお前が?」
えっ、と慧吾が振りむく。と、男の胸が目の前にあった。そのままずーっと視線をあげると――――ロウが慧吾の真後ろ、至近距離に立って慧吾を見おろしていたのだ。
慧吾はギャッと叫びそうになった。
「!? ロウさんどうしました」
「……ついでだ」
わけがわからない慧吾に、スヴェンがため息をつきつつ教えてくれた。
「薬草クエストにつき合ってくれるらしいぞ」
「そうなんですか!? で、でもひとりで大丈夫ですよ」
ロウについて来られるとちょっと都合が悪い。慧吾は焦って断ろうとした。
「いや、ロウがついて行ってくれるなら今日はそうしてもらえ。普通なら誰かとパーティを組むことを勧めるんだがお前はな」
「い、いいえ、パーティは……」
「パーティって誰とよ!」
今度こそ慧吾はギャッと叫んだ。赤いツインテールのうるさい美少女がうるさい。慧吾はヒーッとロウの影に隠れた。
「アナタ! この子とパーティ組むの!? 私が狙ってたのに!」
狙わないでほしい。と慧吾は切実に思った。
「アリィさん、うるさいですよ」
エルに冷たく叱られてもかわいらしい唇をムッと突きだして怒っている。
「だって、Dランクの私と組んでくれる人いないんだもん!」
「もんて言われても。俺はパーティは組まないよ。俺ここにいつまでいれるかわかんないし」
言い終わらないうちにロウに腕を強く掴まれ、その痛みに慧吾は呻いた。
ロウは我に返ったらしく、不思議そうに自分の手を見てからゆっくり掌を開いた。
「すまん」
「大丈夫です。びっくりしましたけど」
慧吾はそう言うが、ロウは後悔に顔を歪ませた。
「消えそうな気がして……すまなかった」
「まだいますよ……たぶん、まだ」
それにはスヴェンがすぐに反応した。
「お前の保護者からも聞いている。心配するな」
スヴェンの心強い言葉が慧吾はうれしかった。
「保護者って、アナタいいところの子なの?」
若干弱気な声でアリィが聞いてくる。ツインテも垂れてかわいらしい。
「いや、平民だよ」
「平民」
「うん、だけどごめんね。パーティは組めないんだ。じゃ、遅くなるといけないからちょっと行ってくるね」
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